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これからの国語科の授業とは?②(2018年9月3日)

 先月の4日(土)と5日(日)は、日本国語教育学会主催の「国語教育全国大会」でした。
 残念ながら初日は仕事の都合で午前中のみの参加でしたが、充実した二日間となりました。
 今年で第81回の全国大会ですが、学会の長年の取り組みである「国語単元学習」を軸としながらも、新指導要領を受けて「豊かな言語生活を拓く国語教育の創造―「主体的・対話的で深い学び」を実現する単元学習―」というテーマで実施されました。
 1日目は文教シビックホールにおける一斉形式での授業公開ですが、2日目は小中一貫校・品川学園を会場にしての授業実践研究発表です。「校種別分科会 研究発表と協議」「テーマ別分科会(模擬授業型分科会/ワークショップ/大学部会シンポジウム)」「単元学習実践研究発表」の3プログラムで一日が展開しますので、どの会場に行こうか迷ってしまいます。

 ブログでも何回かにわたって今回の大会の報告をしたいと考えていますが、2回目の今回は、校種別分科会「高校3 読むこと(現代文)」から「『建設的な批評者』を育てる評論文・論説文の授業―筆者の論理の妥当性を批評する―」(岡山県立津山東高等学校/難波健悟先生)を紹介したいと思います。

 高校1年生を対象としたて批評文「マルジャーナの智恵」(岩崎克人)を扱った、単元名「具体例を批評する」の実践報告でした。
 「本校の学習者は文学的文章は好きだが説明的文章には関心が持てないという意識を持っている」という問題意識をもって、発表者は単元を作成しています。そこで第1次では、「『マルジャーナの智恵』は面白かったですか。理由も書きましょう」という問いに対して自分なりの評価を記述するところから始め、マルジャーナの具体例は面白いが、「差異が利潤を生む」という命題とのつながりが分かりにくいと多くの学習者が感じていることを確認します。
 評価者の先生方からも、問いの共有によって生徒たちが自分たちの目指す方向性がわかること、生徒自らが問い(課題)を作り上げる授業であるという評価を受けていました。

 その後第2次では、毎日新聞社のコラム記事【The・経営者】:密着 カルビー・伊藤秀二社長上(その1)」を比べ読みさせています。これが生徒の思考を広げたという評価を発表者自身がされていましたが、評価者の先生からも高校の評論文での比べ読みはおおいに奨励されるという評価がありました。ただここで、〈もっと良い具体例はないか〉という投げかけをして学習者から具体例を出していった際に、「地域限定商品」といった妥当な例もあれば、「TwitterとLineの違い」のようにやや見当違いかと思われるような例もあったが、一様に取り扱ったということでした。これについては、どの例が良いのかを学習者間で吟味すればさらに深まりがあったのではないかという意見も出されました。

 最終的に第3次では、これまでの活動を経て、「昔から資本主義の原理は変わらない」という主張を述べたかった筆者の意図を推論させています。そして、学習者自身が資本主義の世界に生きていることにも気づかせた上で、批評文を書かせています。
 批評文では、以下の三つの課題を提示しています。
  ①筆者の言いたいことを簡潔に要約
  ②それに対する自分なりの評価
  ③この文章が主張する「資本主義社会」をこれからも生きていくことを   
  楽しみだと思うか

発表者自身がこの単元について有効であったとしたのは、
 1、学習者の評価(判断)を問いとして授業を始めたこと
 2、学習者の読み(評価)を検証(メタ認知)していくことを授業課程の
 中心としたこと
 3、「具体例」を学習内容としてとり上げたこと
 4、筆者の論理(意図)を推論したうえで、論理の飛躍を埋めていくため 
 の解決策を提案したこと
の四点でした。
 学習者の中には「ボロカス言って終わり」とした意見もあり、発表者としては反省点としていたのですが、評価者の先生からは「批評をすることへの新鮮な気づき」という視点も示されました。一方で、発表者が「メタ認知」とした用語の捉え方に難があり、学習者個々のの評価の深まりや自覚化(どのような過程を経て理解していくのかを授業者が把握すること)をどのように授業者が確認するのかといった点を再考していくことが必要だともされました。

 批評をしながら読解もできているという点で、社会に出てから必要な力をつけさせたいという国語科の目指す授業の示唆にも富んだ発表でした。


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