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古文単語帳Q&A〔廃刊メルマガ記事より〕(2013年3月18日)

【Q】生徒に古文単語の本をすすめてほしいと言われましたがどれがいいのでしょうか。

【A】発行人個人としては、どれでもいいから一冊すべて学習し通してほしいというのが本音です。

 ちなみに、私自身は学校で古文の単語集を持たされた記憶がありません(数十語程度が掲載された簡単なプリントは手渡されましたが…)。

 実は、先日ある生徒から、「模試で古文の現代語訳の答えが、単語集で覚えていた意味と違うものだったので納得いかなかった」ということを言われました。

 私の出身大学の広報紙に受験生向けの入試対策のコメントがありましたが、古文について〝重要古語は基本の200語程度を押さえればよい〟といった記述がありました。これは、英語の〝最低でも3000語は必要〟というのとはえらい違いです。つまり古語は、単にもともと日本語だからというだけではなく、一語がカバーする意味(状況や心情、事物)の範囲が大きいということであり、機械的に単語集に書かれた現代語での意味を置き換えるだけではだめだということも同時に意味していると推測されるのです(このことはしっかり生徒たちに伝え、できれば、文脈に応じた訳し分けについて、適切な辞書を用い、そこに示された用例を紹介して納得させないと古文嫌いになってしまいますね)。

 さて、小西甚一『古文の読解』(ちくま学芸文庫/2010年2月)の中で筆者は、いくつにも区別された用法全てを覚えるのではなく、「基本の意味だけ覚えこむ」ことを徹底し、「基本意味①に何か特別な場面が加わった結果、②③④などの違った訳語に化けるだけの話なのである」(意味①②③④…とは辞書でとり上げられている順番です。「基本意味①」とは、語全体が持つ最も大きな意味のことであると思われます)と述べています。だから、基本の意味を覚えることに引き続いて「用例ぐるみ覚える」ことを推奨し、「いちいちの訳語は忘れても、なんとか解釈できるはずである」としています(「第四章 むかしの言い方」の「――その1 ヴォキャブラリー」156-159頁)。確かに、古語はその意味が視覚的・聴覚的・感覚的イメージで喚起される語が少なくないので、現代文でも小説などを読み込んでおり、語彙力もそこそこある生徒には大変有効であると私も考えます。

 一語がカバーする意味の範囲の広いこと、イメージが重要ということが古語の特色と考えるゆえに、実は私も辞書での古語習得を推進しています。ですが、全ての生徒にとってその方法がベストというわけではなく、むしろ単語帳などを使ってある程度機械的に理解していくことの方がいい生徒もいるのは事実です。よって私は、語呂合わせで単語を覚えるので有名な『ゴロで覚える古文単語565(ゴロゴ)』でも『マドンナ古文単語230』でも何でも構わないとも伝えています。 

 要は、最後まで学習し通すことです。

 今は私が受験生だった二十年以上前の時代とは異なり、よく研究された単語集がたくさん出版されていて、どれがよくてどれがだめだということではないと思います(教員の中には、そういうことを声高に言って、それで大学入試の合否が決まるかのように煽る方がいてやめてほしいと思っています)。

 ただ、いろいろと生徒たちの様子を見てきた中で、これはいいだろうと思うような単語集や参考書はあるので、次回以降順番に紹介していきたいと思います。

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