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レッドカーペットへと続く道

私は今、「第31回東京国際映画祭」のレッドカーペットを観ながらこの文章を書いている。

お目当ては、「カメラを止めるな!」の面々。

2018年6月23日に東京のたった2つの映画館で封切りされたこの映画は、映画ファンの口コミを中心に、瞬く間に全国へと広がっていった、という事は、もう皆さんとうにご存知だと思う。10月20日には動員200万人を突破し、まもなく興行収入は30億円に届こうとしている。

私は幸運なことに、昨年11月のプレミア上映の際に松澤茂信(こいつがまたすごいヤツなんだけど、それはまたどこかで)という友人から「友達が映画撮ったんで、観に行きません?」と誘われてこの映画を観ることが出来た。

いやもう、衝撃でしたよ。

こんな面白い映画あんの?って。

「これはとんでもないものを観てしまったのではないか・・・」と思った私は、6月の封切りまでの間、本当にバカみたいに「観ろ!絶対観てくれ!内容は言えないけど観てくれ!(ご存知のように、この映画は内容に触れながら人にオススメするのが非常に難しい)」とTwitterやブログで宣伝しまくっていた。

Twitterのフォロワーは、30人減った。

うん、それはいいんだ、別に。



さて、上映が開始されてからの快進撃は前述の通り。あっという間に日本中を虜にしたこの映画は、4カ月以上たった今でも200館以上の映画館で上映が続いている。

そして、今日、10月25日。

上映、125日目。

彼らは、東京国際映画祭のレッドカーペットを歩いた。

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本当に、本当に、格好良かった。

たった300万円の予算で作品を仕上げた監督が、大部分はワークショップで集まって、映像で演技するのが初めての方もいるという役者達が、こんな大きな舞台で晴れ姿を見せてくれている。

涙が止まらなかった。

この映画が日本中に知れ渡るところをずっと見ていられた幸運に、心から感謝した一日だった。





「カメラを止めるな!」がここまで来るのに、沢山の人の応援や後押しがあった事は間違いない。

でも、この映画が今の状況に至ったのには、もっと明確な一つの理由があると私は思っている。





10月25日、ユジク阿佐ケ谷。

メインキャストたちがレッドカーペットを歩いているまさにその頃、座席数50にも満たないこの映画館で「カメラを止めるな!」の舞台挨拶をしている2人の男がいた。

彼らもまた、この映画に出演した役者達。

失礼な言い方を許して頂きたいのだが、彼らは決して大きな役でこの映画に出演している訳ではない。それでも、たった2館の上映の頃から、これだけ日本中に知れ渡った今に至るまで、彼らを含むキャストは時間があれば都内近郊をメインに全国の映画館を巡り、お客さんの前に立って舞台挨拶を続けてきた。


特に、曽我真臣さん(ツイート向かって左側の方)。

彼は、6月23日の上映開始から今日に至るまで、125日連続で毎日どこかの映画館で舞台挨拶を続けている。

一日も欠かさず、だ。

確かに、インディーズ映画だから出来る事、なのかもしれない。それでも、一つの映画に対して、しかも今や誰もが知る映画に対して、125日連続舞台挨拶に立つ役者がいるなんて、普通に考えたら絶対にありえない事だと思う。


「僕みたいな少しの役の人間が毎日舞台挨拶に立ち続けたら、みんなも背中を押されるんじゃないかと思って」

上田監督に「なんで毎日舞台挨拶に行ってくれてるの?」と聞かれた彼は、そう答えた。実際に東京近郊の映画館では、彼を含め何人ものキャストが今でも舞台挨拶に立ち続けている。


今日、彼はレッドカーペットを歩いてはいない。

けれど、レッドカーペットへと続く道の1つは、間違いなく彼が作ったものだ。


映画の構造も、ストーリーの面白さも、もちろんこの映画の大ヒットの要因なのは間違いない。でも、こうやって来る日も来る日も欠かさず舞台挨拶を続けている彼みたいな人がいる事が、一番底のところでこの映画を支えているんじゃないか、と私は思っている。


明日も、きっと彼はどこかの映画館で舞台挨拶をしている。

上田監督はこう言った。

「奇跡は、勝手に起きてる訳じゃない」と。

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