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#SaveOurVoice - 代官山 晴れたら空に豆まいて(ライブハウス)【前編】「そもそも文化っていうものは一体何なのか」

Speaker : 松崎信太郎(代官山 晴れたら空に豆まいて)
Interview & Text : Nozomi Nobody

※このインタビューは2020年5月6日に収録したものです。

新型コロナウイルス感染拡大の影響

ーーコロナウイルスの影響としてはいつ頃からどんな風に感じてらっしゃいましたか?

時系列でいうと「ちょっと変な風邪が流行りはじめたな」と感じはじめたのが2月の前半です。その後、大阪のライブハウスでクラスターが出たこともあってライブハウスは最初に槍玉に挙げられたというか連日報道が重なって、2月の後半に「3月の営業をどうしようか」っていう雰囲気になっていったんですよね。

晴れたら空に豆まいて(以下晴れ豆)の場合は海外からのお客さんも結構いて、例えばインドネシアに住んでらっしゃる方の結婚式とか、海外のミュージシャンのライブが入っていたりとか。その頃はインドネシアを出て一度日本入っちゃうとしばらく帰れないとか、そういう海外との問題が絡んできて、「これはちょっとやめた方がいい」っていう判断で3月は半分くらいイベントをキャンセルしたんです。

ただ半分営業がないとなると、固定費が高いのでほぼ壊滅的な状態になるんですよね。大企業と違って内部留保なんてどこもないと思うし、アートが好きな人たちがアートが好きなモチベーションのみで繋がっている世界なので、半分営業が止まると純利益はほとんどないのでその分まるごと赤字になってしまう。うちの場合は完全にアナログ機材なのでそのメンテナンスなど設備投資の部分で融資を受けていて、返済は順調に進んでいたんですけど、3月の時点でいきなり収入が50%以下になってしまって、4月の見通しが暗くなってくる。本来だったらその時点でもう廃業なんですよ。

3月の後半になっても政府の方もまだ要請レベルで、営業するかどうかの判断は現場に委ねられていたので、やっているところもあれば閉めるところもあるという状況でしたよね。そういう中で出演者の方達も見に来てくださるお客さんも、出演や来場を迷われている方がとても多かったのを感じていたので、100%ハッピーな状況で(イベントを)演出することができないなと思ったんですよね。それができないと経営どうこうではなく本来やるべきことが本末転倒になってしまうので、「店の判断で休業します」ということにさせていただいて、4月に入ってから丸一ヶ月止まったわけです。

現在「haremamestaffのブログ」ではスタッフが交代でお店の現状などを発信している。また、クラウドファンディングの支援者への報告も兼ね、支援募集期間が終了する7月1日までオーナーブログもほぼ毎日更新している。

資金繰り・国からの助成について

そうすると、資金繰りについてはやっぱり考えなくてはいけない。いろいろなシナリオを全部で7パターンくらいを考えて、それに対して国からの助成や融資の可能性を当てはめて、経営プランをすごくいっぱい立てました。

|借りたお金の利息はもう今月から始まっている|

4月は今後のことを考えるのと並行して、聞いたこともない四字熟語みたいな助成金を調べて勉強して、でも結局一番可能性があったのが融資という名の借金で、日本政策金融公庫とセーフティーネット4号の窓口に行きました。比較的私は早く動けた方だとは思うんですけど、それでもかなり時間がかかって、しかも無利子無担保っていうものを謳ってるんだけど結局そうじゃないんですよね。経産省とか厚生省のHPって一番おいしいところだけ出して、ものすごく小さい字でこっそり条件が書かれてるんです。公庫の融資は3年間は無利子無担保になるって言っているんだけど、融資とはまた別で利子の補給申請をしなくちゃいけないんですよね。でもそれは現時点ではまだ出来ないんですよ。にも関わらず、借りたお金の利息はもう今月から始まっている。

|決まったことをひたすらやっていくしかない|

雇用調整助成金は、そもそも複雑な手続の上にかなりマニアックな助成金なので担当者がいないんですよね。ものすごく少ない。覚えたての人が説明するから間違うんですよ。ハローワーク崩壊なんて言われてますけど、現場の人達はすごく可哀想でもうパニックですよね。結局こちらも繰り返し勉強しなくちゃいけない。雇用調整助成金にしてもやっぱりまだまだ計算式が複雑です。

加えてフリーランスとか個人事業主が抱えているこういう文化事業系の事業者っていうのは守り切れるものがすごく少ない。だから今は遡ってみんなを雇用保険に入れて、社会保障の追加のお金を払うっていうことやってるんですよ。借金して利子を払って、追加で社会保障を払って、でも国からの補助はまだ1円も入っていないというのが今の状態です。

持続化給付金の200万円もまだ申請段階ですけど、そもそも晴れ豆の場合は家賃が高い。収入が減りはじめた2月から数えて3ヶ月分だから、とてもじゃないけど足りないんですよ。とにかく1円も入ってきていない、融資のお金もあっという間になくなっていくんですよね。

ちょっと暗い話ばっかりになっちゃうんですけど、とにかく国とか行政の対応は他の国と比べても尋常じゃない遅さで、ただそこで文句を言ってる時間はなくて、確実に前に進ませるためには決まったことをひたすらやっていくしかないんですよね。

「そもそも文化っていうものは一体何なのか」

一方でこの一ヶ月は「そもそも文化っていうものは一体何なのか」っていうことを考える時間でもあったんですよね。例えばミュージックチャージっていうのは表現に対するチャージではなくて、固定費やミュージシャンのギャランティーの逆算で出した数字でしかなくて、払う側の皆さんは年齢などによって経済状況も違うのに一律で決めているのは何でなんだろうなとか、入り口で取られるワンドリンクって何だろうなとか、そういう自分たちが見落としてきた悪い部分を見直す時間でもあった。

私は晴れ豆が今年の1月のような状態に戻るには少なくとも一年はかかると思っていて、でもそれは決して悪い意味じゃなくて、変革の時なんじゃないかとも思ってるんです。新しい自分たちの在り方を作っていくという意味では場所にもあまり拘らず、早めに手放して何か別の新しい形を作っていくという選択肢もあるのかもしれない。

|ZAIKOを使った配信ライブの試み|

5月2日から大西つねきさんていう方のフェスを4日間オンラインでやらせて頂いたんですけど、とても素晴らしかったんですよね。ZAIKOっていう課金のシステムを使って配信して、並行してYouTubeでアーカイブして、その4日間で配信ライブのひとつの成功例を作れたんですよね。

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オンラインフェスを開催した際の写真。前列右端が大西つねきさん、その隣が松崎さん。

ーーチケット制なんですか?

それはチケット制です。手数料を払えば、あとは普段のライブと同じ流れなんですよ。今回はチケット1000円だったんですけど、オンラインでチケットを購入して、クレジットカードを登録して会員になると視聴用のURLが送られてきて、そこにアクセスするとライブが観られる。そのURLは自分のパソコンからじゃないと見られないっていうセキュリティーがあって、配信後も72時間はアーカイブされるので、チケットを買った人はその時間内だったらもう一回観られるんですね。なおかつYouTubeと同時で配信するとアーカイブはYouTubeの方に残る。すごく使いやすい。

今回、GoProみたいなアクションカメラを4台付けて、リアルタイムで切り替えながら放送したんですけど、今までと違って客席も含めて立体的な演出ができるので、華道家の平間磨理夫さんという方にお願いして花で装飾してもらったんですね。そうするとなんかね、楽しいんですよね(笑)。

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華道家・平間磨理夫さんによる配信ライブのための会場装飾

|ライブはエネルギーの交換の場|

ただ一方で、その場で出ている声とか息遣いとか温度っていうものの伝わり方が放送ではやっぱりどうしても限界があって、ライブっていうもののすごさを感じました。やっぱり人間ってすごいなと思いましたね。ライブってエネルギーの交換の場じゃないですか。それがライブの醍醐味で、それを全身の五感を全部使って感じて興奮していくんだと思うんですよね。

だから改めてライブっていうものの必要性というか、エネルギーの交換をすることでその音楽が人によっては励ましてくれたり叱ってくれたり、一緒に泣いてくれたり笑ってくれたり、そういうことこそマジックというか、だからこそ人間にとって必要なんだっていうことを大袈裟じゃなく思ったんですよね。毎日やっていると麻痺して忘れていた感覚も呼び覚まされたというか。ライブハウスをどうして残さなくちゃいけないのかっていう意義ですよね。

でもそれは家賃にしがみついて、借金背負って結局潰れるみたいなことではなくて、何か本当に重要な目印をみんな再認識しはじめているような気もするし、少なくとも私たちはそういう感覚になっていて、それさえあれば仮に場所を移しても、もしかしたらもっと身軽になって何か新しい別のものを作って還元していけるかもしれないし、そう考えたら悪いことばかりじゃなくて、今ものすごく浄化されてるというか。気付きの連続だから気持ちが全然落ちないんですよ。この瀕死の状態のライブハウスで借金しかしてないんだけど(笑)。

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松崎さんのバンドが店内で動画収録をした際の様子

|ストーリーのあるものを紹介するオンラインショップ|

もうひとつはオンラインショップを作ろうと思ってます。こういう仕事してると全国津々浦々、細かいローカルの情報が入ってくるし、私たちの場合は徳島県の那賀町という限界集落で人形浄瑠璃の取り組みをしていたりもするんですけど、すごく貴重で素敵なものがいっぱいあるんですよね。大きな物流のラインには乗らないから見つけにくいんだけど、オーガニックの在来種であったり、伝統文化であったり、同じように海外のローカルの音楽であったり、暮らしに寄り添うようなストーリーのあるものを低価格でご紹介していきたい。

▶︎後編につづく

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