瀬川シロ

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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン/ 罪悪感と良心の限界

罪悪感は持てても、自分自身を断罪することは人間には不可能だ。そこに人間の良心の限界がある。 *今回はどちらかと言えば組織犯罪の一つとしてのヘイトクライムという視点で書いていこうと思う。    *また、ネイティブ・アメリカン(アメリカ・インディアン)のカルチャーや、保留地の問題については問題が山積みであり、またどの視点から論じるのか、という問題もあるのでまた別の機会にしようと思う。 アーネストは道を間違った? ウィリアム・ヘイル(デニーロ)のビジネスモデルは、明確に契約を

    • 『バビロン』「黒人の真似をするな!」について考える/反体制的な芸術の意義

      〈目次〉・本編から読み解く人種差別 ・カウンターカルチャーとしての芸術の存在意義本編から読み解く人種差別本作で一番印象に残ったシーンは、サウンド・システムを白人に破壊され、怒ったビーフィが「黒人の真似をするな!」と白人青年ロニーに頭突きをするシーンだった。 その後、主人公ブルーがロニーが一度止めた白人への攻撃を追行する事も、本作では大きな意味を持つだろう。 ロニーはずっと行動をして来た仲間であり、同じ労働者階級でもある。 しかし、同じ労働者階級であり、貧困に苦しんでいた

      • くそったれ!少年時代

        ピチピチと暑いアスファルトの上をのたうち回る金魚、壁に叩きつけられて潰されたウサギ。 夏になるとなぜだかそんなことばかり思い出してしまう。 私と妹、母が出て行くとき、怒った父は、太陽に焦がされて鉄板の様になった地面に、水槽の中身を全てぶちまけた。 車に乗っていた私達にはどうする事も出来なかった。 タイヤが金魚を踏み潰す、嫌な音を聞きながら、私は目を瞑り、唇を噛み締めるしかなかった。 正直言って、私はこのときの出来事をつい最近まで忘れていた。 私は本気で辛かった事は

        • スカム/アラン・クラーク

          DVDの説明欄によればイギリスの『気がめいる陰鬱な映画トップ30』の第19位らしい。 理不尽なストーリーだけど映画自体はよくある自己満胸糞系じゃなくてカウンターカルチャーって感じで良かった。 暴力描写で有名らしく、トリアーとかアリ・アスターみたいな美的実存絶望系が好きな層にしか届いてないから、そういう意味でガッカリみたいな評価が多いけど私はそこらへんはどうでも良い。 以下ネタバレです この閉鎖空間では問題解決という意味で生き延びる術を学ぶ事は出来ない。 その中で主人

        キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン/ 罪悪感と良心の限界

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        • 歌詞&和訳
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          私のお父さん

          「老人とは労働の為に畸形になったものの事だ」  というのはサルトルの有名な一節だが、ならば父は何の為に畸形になったのだろうか。  父は仕事に高尚な意味を見出さない土方だが、労働者という響きは美し過ぎて過ぎて似合わない、気楽な放蕩者だ。  久しぶりに会った父には、驚くほど迫力がなかった。声は記憶にあるままだが、見た目は私の記憶の中から縮小コピーした様で、なんだか現実味がない。「よお久しぶり」と言って笑うと、前歯はほぼ金歯だった。そして息が臭い。  異様な顔をしているな、と

          私のお父さん

          映画とは何か?について考える

          2020年7月31日の記事を移動したものです。 「映画とは何か?」と聞かれたら何と答えるだろうか。バカみたいな質問のようにに感じる人も少なくは無いだろう。「映画」ときけばほとんどの人が、わざわざ説明する必要もないくらい当たり前のもののように思い、この質問に対する答えとして「物語がある一時間〜二時間前後の映像」と言われても大した違和感は持たないのでは無いだろうか。  2020年のアカデミー賞前に興味深い事があった。映画監督のマーティンスコセッシが「マーベルは映画では無い」と

          映画とは何か?について考える

          アイリッシュマン

           2020 1/16に、ブログに書いた記事を移動しただけです。 アップリンク渋谷さんでアイリッシュマンを観てきました。 アカデミーにもノミネートされてるけど何がそんなに評価されてるのかっていう人もいるだろうし、過大評価!みたいな意見も見かけたので勝手に面白さを語りたいと思う。 派手なシーンは本当に全然ない。 メインテーマとなるのは死生観。 めっちゃ泣いた。横のおじいちゃん寝てたけど。 帰り道でもずっと泣いてた。 映画の感想は作家の意見あんまり関係ないと思うけど、ス

          アイリッシュマン