見出し画像

小滝橋異聞その2 ・・・の前に

小話。

ある日の昼過ぎ。
部屋で仕事をしていると、外から何やら雅な音が聴こえてくる。
神楽で聴くような篠笛の音。

画像1

季節になれば町内会の祭りの一団が楽を奏でながら練り歩く道だ。
ただし太鼓以外は録音した音を流すのだが、この笛は明らかに生の演奏だ。

はて、今は祭りの時期だったろうか、にしても笛一本の音とは珍しい。
ひょうひょうと美しい音色だが、妙に長い時間近くに留まって鳴り響く。
少し不思議な気がした。

ウチは窓際に荷物を積んでいるため、窓から確認することはできない。
なので買い物ついでに外へ出て見てやることにした。

笛はあちらから聴こえる。
音の方に道を進んでみる。
祭りらしき一団はいない。
だが別のモノを見つけた。

道路工事。

アスファルトカッターというものがある。
それが道路を刻んでいた。
金属歯がアスファルトを刻むたび、ちゅいーーーんと音を出す。
それが反響して風に乗って、ウチに届く頃には雅な篠笛の音に変わるのだ。

この世に不思議は無いんだよ

そんな台詞が頭をよぎった日。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?