変わる、変えるとは

   鹿児島市長選挙と日置市市長選挙を経て、「変わる」ことへの期待感が高まっています。変わるためには、充分な説明と準備が必要です。ここで改めて「変わる」「変える」「変わった」「変化」について再考したいと思います。

「変わる」を起こそうと側は1人=首長、「変わった」を感じる側は受ける立場により様々です。有権者の思いである「変える」とはどのようなことを指しているのでしょうか。

 昭和時代の変わるといえば「保守対革新」の対決であり、「革新自治体」になると「変わる」と報道も書きたてました。その当時の対立構造が「開発行政対環境保護行政」が1つの側面でもあったと思います。その代表人物が、東京都政における美濃部知事、京都府政における蜷川知事、横浜市政における飛鳥田市長などが挙げられます。

平成5年の日本新党ブームにおいては、「既成政党対新党」の対決で、新党が「変わる」期待感を受けて、細川政権が誕生したことも思い出します。

平成10年代、マスコミによって「改革派知事」という言われ方をする知事が全国で登場しました。マスコミ受けする積極派の姿、国に対してモノ言う姿などそのなかには本当に国を動かして「法律を変えた」事例も確かにあります。

 古今東西、報道機関は「変わる」期待感は煽るものの、その後何がどのような結果になり、変わったのかを検証する場面は少ないように感じます。また煽った責任を取ることもありません。

有権者はこの「変わる」について、何をどのように感じているのでしょうか。

前任者とは違う、ルックスや発言の時の立ち居振る舞い、例えば、当庁風景の交通手段の変化などや、また非常にキャッチ―な流行りの名前の部署をつけることで表面的な印象をベースにした変化を「変わる」と受け止める方もいるかもしれません。

 また、政策の実現力はさておいて、SNSを始めとしたメディアを使った発信を受けて、仕事の内容がよく伝わる時代が来ています。その姿勢を前任者と比べて、身近さを「変わった」ととらえる方もいるかと思います。

 さらには、役所の職員の皆様はそうでしょうか。首長として接して政策協議をする場面において、説明をします。そしてその内容について、首長からの質問や指示が出されます。その会議の進め方に「変化」を感じる方もいるでしょうし、首長からの質問や指示の内容に、前任者との違いや、前任者と異なる視点や視野の広さを感じることで「変化」を感じるかもしれません。

 また、効果的な職員研修の成果が徐々に広がったことで、役所の窓口対応が改善され、それを「変わった」と受け止める方もいるかと思います。また、非常に気の利いた職員さんによる窓口や電話対応での一言で「役所が変わった」と感じることもあろうかと思います。

 来たるデジタル社会の到来によりマイナンバーカードを組み合わせて、役所に関わる様々な申請や給付金の受け取りなどがより一層便利になり、その便利さを持って「変わった」と感じる方もいるかもしれません。

 前任者のうちに計画を練り上げて、予算化までした後に、首長が交代して、新首長さんが実施責任者になった場面においては、「首長が変わったから、この事業が始まったね。役所も変わったね」と有権者が早とちりする場面もあります。私がそんな場面に遭遇したら、「それは前任者の功績です」と説明するように努めています。

「変えよう」と意識し過ぎて、「変わらなかった理由はそもそものシステムだ」として、政策形成や意思決定のプロセスを根本的にやりかえてしまい、かえってうまくいかなくなり、変えられなかったこともあります。

 民主党政権のときに、当時の小沢幹事長のもとで「党主導」を強力に推し進め、全国からの陳情を党で一元化を取り組みました。これは、陳情の実現と引き換えに、次回の総選挙を意識して、関係性を深めておきたいとの思惑があったと思いますが、「システムを変えた」ために、かえって混乱が生じました。

 また「チェンジ」を掲げて当選した三反園知事の時代に、知事室に入室できるのは課長級以上に変えました。しかし、これによって、最も現場のことを知る係長級が入室できなくなり、政策協議の細かな詰めができなくなりました。しかも、打合せ内容を正確に記録するため録音機の持ち込み禁止などの二重三重の変化もあり、職員の皆様に混乱が生じました。ちなみに、塩田知事になって、伊藤知事時代と同様に、担当係長なども含めて入室し、参加できるように変えて(=戻して)います。

 議会人は、有権者に最も近い存在であり、しかも首長の手腕を間近で知ることもできる存在であります。有権者から聞かれる「最近県庁はどうですか?」の言葉の裏には「変わりましたか?」の期待の意味が含まれているように感じられてなりません。

 以前勤めていたテレビ局が一時期、「殻破り型破り」というキャッチコピーを使っていたことがありました。「変わる」の別の言い方になります。私もこの言葉が好きで、初当選の頃、多くの場面で引用してきました。時がたち、SNS時代に入って、政治参加の形が大きく変わり、政治家に直に意見が届きやすくなりました。

 変化し続ける便利な道具を駆使しつつ、葉書や手紙などの変わらぬ温もりも大事する政治家として、「変えていいもの、変えてはいけないもの」を峻別して、政策判断する政治家でありたいと考えます。

                「BEFORE25、AFTER25」 藤崎 剛

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