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2024/05/18 Googleマップに助けられた日

今日は、眼科と、内科と、歯科に母を連れてゆく。

朝食は、コンビニでおにぎりとサラダチキンロールを買ってきて済ませた。

今日はやらなくてはいけないことが多いので、食事を作ることにエネルギーを使うことはできそうもなかった。

食事を済ませたあと、外出する準備をする。

朝、母と一緒に外出するときのコツが、この日なんとなく掴めた。

母は、外出する前に、自分のカバンの中身のチェックをする。

そのチェック作業を母にさせてはいけないのだ、ということがわかった。

私が代理でカバンの中身をチェックして、必要なものが入っていることが確認できたら、そのままそのカバンを私が持って、「はい!行きますよ〜!」と玄関まで出てしまえばいいのだった。

母は認知症の影響で5分前の記憶がなくなってしまうので、カバンの中身のチェックをし始めて5分経過すると、最初にチェックした内容を忘れてしまう。何度も何度も、また最初からチェックをするようになってしまうので準備が進まないのだった。

私が代理でカバンの中身をチェックする方式で、これからはやってみようと思った。

家を出てから、Googleマップのアプリに目的地の医院の名前を入れて、経路を確認してゆく。

眼科は、歩いて十五分くらいのところにある。

ここは一度来たことがある。それでも、Googleマップの地図があると安心だった。

母が目の検査を受けている間に、次に行く内科への経路をGoogleマップに教えてもらう。

少し離れた場所にあるので、タクシーでないと行けないかと思ったけれど、よく探してみたらバスで行くことが可能だとわかった。

お天気アプリでは、最高気温が三十度と予報が出ていた。無理をして外を歩くと母が体調を崩してしまうかもしれない。今日は出来る限りバスで移動したほうが良い、と思った。

ドラッグストアの二階が眼科になっているので、お会計をして処方箋をもらったら、一階に降りればすぐ薬局がある。三種類の目薬を二個ずつ処方してもらった。

ドラッグストアの前に、バス停があった。しばらく待って、バスに二人で乗ってゆく。十分くらいの距離だった。バスを降りて、内科まで歩く。

ゆっくり歩いてゆくのだけれど、母はけっこう大変そうだった。

いつも自転車に乗って移動するから、歩くのはしんどいのだ、と言っていた。

着いてしばらくしたら、母だけ検査のために呼び出された。十五分くらいで母は戻ってきた。そのあと待合室で、診察の順番が回ってくるのを待つ。

待っている間、私は雑誌を読んでいた。

クロワッサンの5月25日号だった。買ってきた野菜を冷蔵庫に入れるとき、どのように下ごしらえをすると良いか、写真入りで説明した記事が載っていた。

半分くらい読んだところで、受付の看護婦さんが母の名前を呼んだ。

診察室には、私も入って構わないと言ってもらえた。

内科の先生は、穏やかな感じの人だった。机の上に置かれた、何枚もページを貼り足してページ数を増やしたカルテはすごく分厚くなっていて、厚さが十センチくらいあった。

先生は、血液検査の用紙が貼り付けられてミルフィーユのようにふっくらと膨らんだカルテのページを、何かを確かめるように、前のほうのページを見たり、後ろのほうのページを見たりしていた。

そのあと、現在の母の状態をゆっくりと説明してくれた。

糖尿病の症状が出ていること。認知症の症状が出ている場合は、あまり血糖値を低くすることができないこと。一日一回だけ飲む薬を処方していること。

母を気遣って、差し障りのない表現で説明をして下さったのがわかった。

ここでも、お会計のときに処方箋を頂いた。

あとで薬局に行けばよいと思っていたので、私と母は、すぐ近くにあったサガミに入って食事をしようとした。母は、桜海老の乗ったざるそばを頼んだ。私は、暖かいうどんと、まぐろの二色丼のセットにした。

注文したものが運ばれてきて、食べ始めたところで、内科の看護婦さんから母の携帯に電話があった。いつも内科の薬を処方してもらう薬局は十二時半までしか営業していないことを教えてもらった。

食事が終わってから寄って下さい、という話になって、電話は終わった。

やれやれ、と食事に戻ろうとしたら、こんどは薬局の薬剤師さんから、母の携帯にでんわがあった。

母から携帯を受け取って、少し話してみて、どうもこれは今すぐ処方箋を持って行ったほうが良さそうだとわかった。

母には、そのままざるそばを食べていてもらうことにした。私は処方箋と自分の荷物を持って、内科の医院の近くにある薬局に行った。

三週間ほどの期間の薬を、一日分ずつ分包にして下さっていた。処方箋を渡して、お会計をし、薬の袋を受け取って、またサガミに戻る。

母は、一人でざるそばを食べて、待っていてくれた。私も、途中まで食べていたまぐろ二色丼を食べた。食事を済ませて、暖かい玄米茶を飲んで、ひと息ついた。

午後は、十五時から歯科医院に予約をしてある。妹が、予約を入れてくれたのだった。

iPhoneを操作して、再びGoogleマップに歯科医院へ行く経路を教えてもらう。

お会計をしてサガミを出て、バス停に向かった。

Googleマップでは、交差点の真ん中にバス停の表示が出ていた。これでは、どこにバス停があるかわからない。

たまたま、母がバス停の場所を知っていた。

日が高くなって、かなり暑くなってきていた。日陰のあるところを選んで歩いて、バス停まで行った。

バスに乗って、こんどは二十分ぐらいかかった。バスを降りてから、歯科医院に向かって歩く。

けっこう遠かった。ふだん、我慢強い母が、疲れた、今日は行きたくない、と言い出した。もうちょっと、もうちょっと、と言って、なんとか歩いてもらう。

Googleマップだとすぐ近くに見えるのだけれど、初めて来る場所は距離感がつかめなくて、けっこう辛かった。

歯科医院では、一時間くらい待合室で待った。

待っている間に、Newton別冊の人体の本を読んだ。読み終わってもまだ、母の歯の治療は続いていた。他にもストレッチの本や脳科学の本があったので、拾い読みしながら待った。

母が、治療を終えて待合室に戻ってきた。

なんと、歯医者さんも一緒にやってきて、母に口を開けてもらって、今日、仮のかぶせものをした歯を見せてもらった。

通常なら、四回ぐらい通院してもらうところを、今日はいっぺんに作業してもらったらしかった。母の奥歯は、柔らかなミルク色をしたかぶせものをしてもらっていた。

お会計をして、次回の予約をした。次回は、妹がつきそうか、この歯科に通っている友人と一緒に来るか、どちらかになると思う。

そのあと、近くのショッピングモールまで歩いた。

サイゼリヤでゆっくり食事をしたあと、明日の朝ごはんの材料を買うために併設されているスーパーに行く。

この、買い物をするときに大変なことになってしまった。

母には休憩所で待っていてもらったのだけれど、三十分ぐらいして休憩所に戻ると母の姿がなかった。

そう、今日の昼間、薬を取りに行く間サガミで待っていてもらったときは全然大丈夫だったので、つい油断してしまったのだ。

母は、休憩所で待っている間に、私を待っていることを忘れてしまって、どこかに歩いていってしまったのかもしれない。

どうやって探したらいいんだろう?

ショッピングモールの一角にあるスーパーはとても広かった。端から端まで歩くのに、十五分くらいかかるほどの規模だった。

やみくもに歩いても見つからないことに、すぐ気がついた。

母に電話をしようとリュックからiPhoneを取り出すと、電源が切れていた。朝から充電できる場所がなかったので、充電が切れてしまったのだった。

休憩所にはスマートフォンを充電するコンセントがあったので、慌ててiPhoneを充電する。

充電している間、気が気ではなかった。しばらくして、画面に白くアップルのマークが浮かび上がる。iPhoneを起動すると、妹から何度も着信が入っていた。

妹に、急いで電話をする。

母は、ここへ誰と来たのかを忘れてしまって、妹に電話をかけていた。

やはり、待っている間に5分も経つと、誰を待っているのか忘れてしまうのだそうだ。

いつも一緒にいないと駄目なんだよ、と妹から教えてもらった。

妹との電話を切ったあと、母に電話をかける。

ショッピングモールのどのあたりにいるのかを、教えてもらった。

母は、ショッピングモールの一階にある休憩用のソファに座っていた。

思ったよりも、明るい表情だったのでほっとした。

母を見失ってしまったことは、私にとってとても辛いことだったので、その時、私は言葉を失ってしまった。

大丈夫?としか、尋ねられなかった。

朝の9時頃からずっと、歩いたりバスに乗ったりして移動し続けていて、私も母も疲れていた。もう、夜の20時になっていた。

帰りは、タクシーで帰った。

疲れ切って家に着いて、母はすぐに眠ってしまった。

私は一人でシャワーを浴びて、noteの日記を書いて、アップする作業をした。

途中で母が起きてきて、まだ眠らないのか、と尋ねてきた。私はあいまいに、うん、とだけ返事をした。

そのとき、久しぶりに違和感を感じた。

本当のところ、母がどう感じているのかはわからない。

けれど、そのとき、目には見えない独特の力で、思ったよりもずっと強く干渉されたように感じた。

ここ二十年くらいの間、誰かにそのような、柔らかいけれども逃げ出すことがむずかしい、強引な干渉をされたことが全くなかったことにも、気がついた。

ああ、やっぱりこの干渉のされ方は、嫌だな、と思った。

どうなんだろう、私の側に、何か大げさに感じてしまうところがあるんだろうか……。

わからない。

その日は、なんとかごまかして、その後もしばらく起きていた。

5月17日分の日記を、noteにアップしてから眠った。

昼間、紅茶やコーヒーを飲んでいたのであまりよく眠れず、何度も起きてしまった。






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