見出し画像

【新クトゥルフ神話TRPG】年少探索者の創造とプレイ 番外編~成長時の提案~

1.はじめに

 どうも。目玉焼きにはソース派、皐月野鷽です。
 最近、アプリ「クトゥルフ神話TRPG ルールブックPLUS」がリリースされましたね。プレミアムプランでは『新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020』も読むことができますが、その中には私が担当した「年少探索者の創造とプレイ」という選択ルールも収録されています。文字通り、子供の探索者を使って遊ぶためのルールですね。
 良い機会(?)なので、同ルールについて補足・提案をしておこうと思います。年少探索者を大人(高校生以上)に成長させようと思った場合の取り扱いについて触れていますので、興味があればご一読いただければ幸いです。
 なお、本記事の内容については、あくまで皐月野が個人的に考えたものです。1プレイヤーの提案するハウス・ルールとしてとらえていただきますよう、よろしくお願いいたします。

※この記事は『新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020』に掲載されている選択ルール「年少探索者の創造とプレイ」についての解説記事です。同書を所持・あるいはアプリのプレミアムプランにおいて、同ルールに目を通している読者を対象に書かれていることをご了承ください。

2.年少探索者のEDUについて

 さて、まずは前提について整理しておきましょう。創造時点の年少探索者のEDUは「そのキャラクターの年齢(学年)によって固定値が与えられる」という仕組みになっています。この固定値はクラシック版の「探索者の年齢の下限はEDU+6歳」という規定に沿って決定されています。元の記事が『Role & Roll』でクラシック版の頃に公開されたものだった名残でもありますね(とはいえ、なんだかんだで収まりのよい数値だとは思います)。

(例)年齢が10歳(4年生)ならEDU4:『新クトゥルフ神話TRPG』だとEDU20に相当

 年少探索者は14歳(中学2~3年生相当)までの区分ですので、最大のEDUは[(14-6)×5=40]ということになります。また、年少探索者は15歳になるまでの間、年齢を重ねる毎に1年で5ポイントずつEDUを成長させることができます。これにより、15歳になればすべての年少探索者がEDU45を確保できるということになりますね。

 通常の探索者が「年齢を重ねる(『ルールブック』94ページ参照)」によってEDUの上達チェックに成功しても、それに伴って職業技能ポイントが獲得されることはありません。しかし、年少探索者は1年ごとに職業技能に20ポイント割り振ることが許されています。これは増加したEDUの4倍に相当します。つまり、13歳(EDU35)以上の年少探索者は、技能値だけでみれば「通常の探索者とほぼ変わらない値」にまで成長していることになりますね(通常の探索者のEDU最低値は[(2D6:最低値2+6)×5=40]、ここに15~19歳の年齢の修正が加わる場合、最低値は[40-5=35]となる)。

 以上が年少探索者のEDU事情になります。では、「16歳以上になった場合」の値は? 今回の論点はそこになります。

3.年少探索者が大人(高校生以上)になったときは?

 前項のとおり、15歳(中学3年生)まではEDUが自動的に成長していくようになっていますが、16歳以上(高校生以上)ではどうでしょうか?
 結論からいうと、「年少探索者の創造とプレイ」では、16歳以上になった年少探索者(以下、元・年少探索者と呼称)の成長についてはサポートされていません。
 元・年少探索者は「通常の探索者」になり、特性などの要素は消失してしまうことは明記してあります(『クトゥルフ2020』78ページ参照)。しかし、EDUやそのほかの能力値の取り扱いについては触れられておらず、少し困惑してしまった方もいるかもしれません。
 一応、以下にこのような構成になった理由を掲載しておきますが、成長ルールの補足だけ確認したいという方は「4.元・年少探索者の成長(提案)」まで飛ばしてもらっても問題ありません。悪しからず。

 高校生以上になった場合の成長について記載していない理由ですが、これは「年少探索者の創造とプレイ」という選択ルールの範囲を超えていると判断したためです。
 先述のとおり、年少探索者は13歳になった段階で「通常の探索者創造ルールでも作成できる」能力値・技能値を獲得しています。全体的に平均よりは低い値ですが、データの上では「年少探索者の創造とプレイ」を用いなくても再現可能な能力値になっているというのがポイントです。
 とはいえ、通常時の年齢の下限は15歳であるため、15歳になるまでの間(通常のルールではサポートされていない期間)に能力値の成長を盛り込むぶんには、「年少探索者」のルールとして適切な措置だといえるでしょう。
 しかし、「15歳から16歳以上への成長」になると話は変わってきます。元・年少探索者の成長に関するルールは、「すでに(年齢も含めて)通常のルールで作成可能なステータスを持っている探索者」「特例的にさらに強化するルール」になってしまうおそれがあります。「年少探索者」のサポート記事に載せる内容としては不適切ではないかと考えたわけですね。
 めったにないパターンだとは思いますが、成長により能力値を高めた元・年少探索者と、通常どおり作成して低い能力値になってしまった探索者とが一緒にシナリオに挑むとなると、少しアンフェアな状態に見えてしまいます。もちろん、能力値の低い探索者が一概に不遇というわけではないのですが(『ルールブック』29ページ参照)。
 このあたりは『新クトゥルフ神話TRPG』になり、探索者の年齢がEDUに左右されなくなったことも影響しています。高校生・大学生(15歳~20代前半)の探索者は、選択ルールによらず「普通に作ればいい」ということになってしまうので。

 ……とはいえ、それならそれで「元・年少探索者は能力値が低めなので、各自ふさわしいと思う方法での成長を検討してみよう!」というような一文を書き足しておくべきですし、数行程度でも「成長方法の提案」を載せておいたほうがよかったかもしれません。困惑させてしまった方々、すいませんでした……!

 本当は「年少探索者」と「大人探索者(通常の探索者)」の間をつなぐ「学生探索者」のようなルールがあると収まりがよいのかもしれませんが、先述のとおりEDUを制限する必要がなくなった現状、学生のみに絞った創造方法に需要があるのかは微妙なところです。もし要望が多ければ検討してみますが、それはまた別のお話ということで。

4.元・年少探索者の成長(提案)

 前置きが長くなってしまいましたが、ここからは元・年少探索者を成長させる方法をいくつか提案していきましょう。
 もちろん、この中のどれかを必ず採用しなければならないというわけではありません。プレイ・グループ内でよく相談し、ほかにふさわしいと思える方法があれば自由に採用していただいて結構です。

(1)「年少探索者の成長」を続行する(※高校3年生まで)

 元・年少探索者になってからも「年少探索者の成長」(『クトゥルフ2020』78ページ参照)を続行する方法です。こうすると「高校3年生(18歳)」の時点でEDU60となり、「高校卒業程度」という基準とも合致しています(『ルールブック』35ページ参照)。
 EDUが成長したら、忘れずに職業技能ポイントも割り振っておきましょう。このとき、〈信用〉にもポイントが振れることはお忘れなく。
 EDU以外の能力値の成長方法については、「もっと大人の能力値に近づけてもよいはずだ」ということであれば、少し上方修正してもよいでしょう。例えば、「ひとつの能力値につき5ポイント増加」としたり、「成長前にSTRとSIZの組み合わせロールを行い、両方に成功したらどちらの能力値も成長する」ことにしたりですね。このあたりは各々で適切と思う調整を模索してもらえればと思います。
 注意点としては、この方法は基本的に「高校3年生まで」に留めておいたほうがいいです。というのも、このまま大学生まで成長を続けていくと、大学4年生(22歳)の時点でEDU80となり、「大学院卒業程度」の値になってしまうためです。特に大学へ進まないという選択をした元・年少探索者までこの値に高まってしまうのは違和感しかないので、大学生・社会人への成長を検討している場合は、後述する方法を採用したほうがよいでしょう。

(2)EDUだけを振り直す

 もっともシンプルな方法です。EDU以外の成長については、15歳になるまでに増加した値で十分だと判断した場合にはこちらを使用しましょう。
 やることはいたって簡単です。[2D6+6]をロールし5倍して、能力値EDUを再度導き出しましょう。このとき、元のEDU(45)を下回った場合は振り直してかまいません。この値が元・年少探索者の「大人になってからのEDU」ということになります。
 このEDUの増加によって、職業技能ポイントを得ることはできません。ただし、ここで決まったEDUの値をもとに、元・年少探索者の進路や就職先を想像し、プロフィールやバックストーリーを書き換えることはできるでしょう。自分好みに「大人の姿」を演出してあげてください。
 なお、〈信用〉への修正がなく、親の〈信用〉の半分の値のままであるため、その値が選んだ職業の下限を下回ってしまう可能性があります。そのような場合の取り扱いについては、プレイ・グループ内でよく相談しておきましょう(下回っても問題ないことにするのか、技能値を振り直して条件を満たすようにするのか、等)。

(3)「進路」を定めて能力値・技能値を振り直す

 こちらは少し手間がかかりますが、より「大人らしい」ステータスを獲得することができます。少し煩雑になったので、先に手順をまとめておきましょう。

 1)元・年少探索者のEDU再決定
 2)職業(進路あるいは就職先)の決定
 3)職業能力値(成長させたい能力値)を「3回」選ぶ
 4)職業能力値を修正する(年齢による修正含む)
 5)職業技能ポイントを再計算し、割り振る(〈信用〉含む)

1)元・年少探索者のEDU再決定
 まずは(2)と同様の処理を行います。[2D6+6]をロールし5倍して、能力値EDUを再度導き出しましょう。このとき、元のEDU(45)を下回った場合は振り直してかまいません。この値が元・年少探索者の「大人になってからのEDU」ということになります。

2)職業(進路あるいは就職先)の決定
 次に、上昇したEDUの値や成長させたい年齢なども考慮しつつ、元・年少探索者の「進路あるいは就職先」として新たに「職業」を決定し直します。職業は「職業のサンプル(『ルールブック』40ページ参照)」から選んでもよいですし、ほかのソースブックを参照したり、オリジナルの職業を作ったりしてもよいでしょう。
 このとき、必ずしも年少探索者時代の「得意科目」に関連する職業を選ぶ必要はありません。高校生以上になって別のことに興味を持つこともあるでしょうし、子供の頃に得意だったことが大人になってからも活かせるわけでもないですからね、ハハ……(なんかあったんか)。

3)職業能力値(成長させたい能力値)を「3回」選ぶ
 職業を決めたら、続けて能力値を見直します。先に決めた職業に就く(あるいは目指す)にあたって「必要となる能力値」を考えてみましょう。これは基本的に「職業技能ポイントの計算に使われている能力値」ということになりそうです。しかし、職業によっては複数の能力値が書かれていたり、反対にEDUしか参照されていなかったりもするでしょう。そのため、ここではキーパーとプレイヤーが相談し、その職業にふさわしいと思われる能力値を3つまで選ぶことにしてはどうでしょうか。あまり厳密に指定しても面白くないですからね。以後、ここで決めた能力値を仮に「職業能力値」と呼称します。
 なお、ひとつの能力値に絞って成長させたい場合などは、「同じ能力値を複数回選ぶ」ことも可能としましょう。例えば、「STRを2回、CONを1回」というような選び方もできるということです。こうすれば、低すぎる能力値を補ったり、長所をより伸ばしたりできるというわけですね。

4)職業能力値を修正する(年齢による修正含む)
 職業能力値を決めたら、能力値に対する「修正」を検討します。下記はあくまで一例ですので、その探索者の年齢や状況を考慮しつつ、ふさわしいと思われる成長を検討してみてください。

●元・年少探索者が16~19歳の場合:職業能力値をそれぞれ5ポイント増加させる。複数回選んだ職業能力値は、[選んだ回数×5ポイント]増加させる。

●元・年少探索者が20~39歳の場合:16~19歳時の修正を行った後、EDUの上達チェックを1回行なう。
※以降の年齢では、同様に16~19歳時の修正に各年齢毎の修正を重ねて適用する(『ルールブック』30ページ参照)。

 なお、ここで能力値を修正した元・年少探索者が、別の冒険を経て年齢を重ねても、以後は通常の年齢の修正しか受けられないことに注意してください。上の修正は「10歳毎に職業能力値を増加させられる」という意味ではなく、あくまで「年少探索者⇒元・年少探索者」への成長時(最初のコンバート時)の1回のみ適用されるということですね。

5)職業技能ポイントを再計算し、割り振る(〈信用〉含む)
 最後に、修正後の能力値を用いて「職業技能ポイント」を再計算してみましょう。[再計算した職業技能ポイント-既に割り振っている職業技能ポイント]の値を導き、その値だけ職業で決められた技能と〈信用〉に割り振っていきましょう。特に〈信用〉の値は低くなっている場合が多いため、積極的に割り振っておきたいところですね。
 場合によっては年少探索者時代に割り振った技能ポイントを振り直してもよいのですが、そうすると本格的に「通常の創造方法で作り直したほうが早い」という話にもなりますので、技能が少々「つぎはぎ」のような形になっても、「少年の日の思い出」だと思って愛でて(?)いただければと思います。

 以上のような手順で、元・年少探索者を立派な学生あるいは社会人に育ててあげましょう! もちろん(2)と同様に新たなプロフィールやバックストーリーを添えてあげることもお忘れなく!

5.おわりに

 いかがだったでしょうか? 急な思いつきでの提案であるため、いろいろと足りない部分もあるかと思います。ツッコミどころや改善案などありましたら、ぜひ遠慮なくお申し付けください。都度、記載内容のアップデートを図りますゆえ。
 選択ルールの採用は手間もかかるかと思いますが、これまでとは一風変わったプレイを楽しむことができます。この機会に年少探索者、ひいては各種ソースブックにて定義された「特別な探索者」でのプレイに興味を持っていただければ幸いです。
 それでは、よきTRPGライフを!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?