ジェスカイアルカニスト プレイガイドその2 ~デッキリストを読んでみよう~

今月はもうヴィンテージの大会ないんだって……調布にすら行く気持ちだったというのに……。

という絶望を抱えたので前回の続きを書いてヴィンテ欲を解消していこうと思います。

前回の記事はこちら→https://note.com/satsuki_vintage/n/n7dcbb3f0a2bd

1.サンプルリスト

4 沸騰する小湖
3 溢れかえる岸辺
3 Volcanic Island
3 Tundra
2 島
1 神秘の聖域

1 Black Lotus
1 Mox Sapphire
1 Mox Ruby
1 Mox Pearl

3 戦慄衆の秘儀術師
3 アゾリウスの造反者、ラヴィニア
1 瞬唱の魔道士
1 僧院の導師

1 覆いを割く者、ナーセット
3 ダク・フェイデン

1 Ancestral Recall
1 渦まく知識
1 思案
4 定業
1 ギタクシア派の調査
1 噴出
1 時を越えた探索
1 宝船の巡航
1 商人の巻物

1 精神的つまづき
1 否定の力
4 意志の力
3 紅蓮破

2 稲妻
3 剣を鍬に
1 破壊放題
1 Time Walk

サイドボード
1 紅蓮破
3 破壊放題
3 封じ込める僧侶
3 貪欲な罠
1 トーモッドの墓所
1 真髄の針
1 剣を鍬に
2 石のような静寂

2.リストの意図を読む

ではこのサンプルリストを読んでいきましょう。

2-1.土地+マナアーティファクト

4 沸騰する小湖
3 溢れかえる岸辺
3 Volcanic Island
3 Tundra
2 島
1 神秘の聖域

1 Black Lotus
1 Mox Sapphire
1 Mox Ruby
1 Mox Pearl

これだけ見ても読むには不適格なので、複数のリストを見た際の差異となる点を見つけてその意図を読み解くことが「リストを読む」ことだと思っていますので、興味のある方はぜひ他のリストも見てきてくださいね。

さて、一般的なリストとの差異はTundraが3枚採用されている点です。
ここは露天鉱床や山のスロットであることも多いですが、このサンプルリストでは3枚になっています。
つまり白マナが一般的なリストよりも必要だということで、ラヴィニアがメインから3枚、剣を鍬にが3枚以上は入っていそうです。もしかしたら破壊放題の代わりに断片化を採用しているのかもしれないですね。
なぜ、それをしようとしたのかという極論の部分は想像と個人差でしかないですが、これを繰り返すことで環境の全体感のようなものが少しずつ身につきます。

また、島が2枚となっていることにも注目できます。
基本土地というスロットで見るならば、ここは島+山であったり、青マナという意味では1枚をVolcanic Islandの4枚目にしたリストも存在します。
しかし島2枚ということは島(青マナ)を2つ以上安定的に供給したいという意図が見受けられます。
これは瞬唱の魔道士の採用を示唆している他、ソーサリータイミングの動きを重視しているであろうリストであることが想像できます。
インスタントタイミングの動きを重視するのであれば、より柔軟に動きの幅を確保できるデュアルランドのほうが好都合ですからね。

神秘の聖域が1枚に抑えられていることから、商人の巻物は入っていても神秘の教示者までは取っていない可能性が高そうです。
よって、あくまで追加の瞬唱の魔道士のような役割を持った土地としての運用だということが伺えます。

2-2.クリーチャー+プレインズウォーカー

3 戦慄衆の秘儀術師
3 アゾリウスの造反者、ラヴィニア
1 瞬唱の魔道士
1 僧院の導師

1 覆いを割く者、ナーセット
3 ダク・フェイデン

まずは戦慄衆の秘儀術師が4枚でないが瞬唱の魔道士と合わせて4枚を取っていることから、インスタントタイミングの動きを確保する狙いが見えます。
しかし、ラヴィニアの枚数から見ても、先手で行動の制限をかけたいという意図があることは間違いないでしょう。特にラヴィニア3枚はダブつくリスクを抱えても採用をしたかったということでしょうから、このリストを組んだプレイヤーは逆説をはじめとしたラヴィニアが刺さるマッチアップが多いと判断していることが想像できます。

また、ダク・フェイデンを3枚採用していることから、宝船の巡航を採用していそうです。
時を解す者、テフェリーを1枚採用するリストが出てきていますが、これはそれがないということでダク・フェイデンのプラス能力を見ていること、そして若き紅蓮術士の採用がないことから、カウンターと除去の枚数は多いことが想像されます。

2-3.ドロー+サーチ

1 Ancestral Recall
1 渦まく知識
1 思案
4 定業
1 ギタクシア派の調査
1 噴出
1 時を越えた探索
1 宝船の巡航
1 商人の巻物

特に語るべき点はないですね。
商人の巻物が採用されており、時を越えた探索やAncestral Recallに繋げるアドバンテージ源としての役割を中心にしつつ、最後のシーンでは意志の力などをサーチして蓋をする役割を持ちます。
神秘の教示者と違い、手札の枚数が減らないのが最も良い点で僧院の導師とも高相性です。このカードが上手く使えるようになるとジェスカイアルカニストというデッキの動かし方の幅が広がることでしょう。

宝船の巡航は対同型をはじめとした枚数が勝負を分けるゲームで有効なカードです。戦慄衆の秘儀術師が墓地の枚数を消費しますので、前身のジェスカイメンターよりは使いにくいカードとなりました。
暇なタイミングで適当に打つ感覚のカードですから、つまり大体意志の力のピッチコストになります。唱えられれば強いカードなんですけどね。
以前は覆いを割く者、ナーセットが跳梁跋扈していたため、唱える機会がほぼ無く、本当にメインデッキの青いカードの枚数担保のためだけに採用されていたのではないかと思えるほどの採用率でしたが、制限になったことで使用できるタイミングは増えました。

2-4.カウンター+除去+Time Walk

1 精神的つまづき
1 否定の力
4 意志の力
3 紅蓮破

2 稲妻
3 剣を鍬に
1 破壊放題
1 Time Walk

精神的つまづきはフェアからコンボまで幅広く見られるカードで本当に不要なマッチアップはMUD程度のため、現状入れ得カードとなりました。
意志の力の4枚も固定スロットです。
否定の力と紅蓮破がカウンターの追加枠となるわけですが、宝船の巡航を採用していても否定の力が2枚採用されていないことから、ラヴィニアへの信頼の高さが伺えます。逆に言えば否定の力の2枚目の枠はラヴィニアの3枚目の枠にいっているとも考えられるわけですね。
ソーサリータイミングで動くと手札の枚数は減りやすいため、否定の力がデッキ全体の動きとマッチしていないという不具合を上手く解消しているように思えます。

また、除去が合計5枚で削剥を採用せずにその枠をそのまま剣を鍬ににしていることから、オースや墓荒らしなどの剣を鍬にが強く運用できるマッチアップが想定されていることが分かります。同時に削剥がないことでMUDをメインで見る必要があまりないメタゲームを想像していることも分かります。
しかし、アーティファクト対策をメインに侵入させる構築を行っていることから、サイドボードは結構枠がカツカツになっていそうです。

2-5.サイドボード

1 紅蓮破
3 破壊放題
3 封じ込める僧侶
3 貪欲な罠
1 トーモッドの墓所
1 真髄の針
1 剣を鍬に
2 石のような静寂

まずドレッジに活性の力を抜かせずに墓地対策を通すための真髄の針が目立ちます。これはティムールプレインズウォーカーズなどにもサイドインできる便利なカードで、苦手なレンと六番の対策もできますね。
貪欲な罠とトーモッドの墓所が散らされていることから、ドレッジ以外のデッキにトーモッドの墓所を入れる想定をしているのかもしれません。

また、3枚目のTundraの用意はサイドボードの剣を鍬にによって白を2つ用意したいという意図が見えました。
石のような静寂2枚から逆説にもウェイトを置いていることが伺えます。

破壊放題の枚数が多いのでMUDもそこそこ当たる想定なのでしょうか?
この枠をもう少し絞ってドレッジ対策に当てることが一般的ですから、少し意外なリストになっていますね。
また、TPSなどのストーム対策が薄いため、対TPSは厳しい戦いになりそうです。避けたいのであれば狼狽の嵐や精神壊しの罠などが考えられます。

ジェスカイはサイドで全てのデッキを見ることが現状ではほぼ不可能なので、ある程度のメタゲームの割り切りは必要ですね。

3.プレイ方針の確認

僕はゲーム中のプレイングはデッキ構築と比較して少なくともヴィンテージというフォーマットでは価値が低いと考えています。
特にフェアデッキをプレイするならなおさらで、必ずフェアデッキ側が現状に対処する必要があります。その対処にプレイングはあまり必要なく、それよりもそれに対処できるカードがちゃんと準備されていて探せるかのほうが重要です。
もちろんプレイングの全てが不要と言うつもりはないですが、おおよそ相手をハメる(除去が薄いハンドに見せて相手のエースクリーチャーをプレイさせるとか、カウンター無いハンドに見せてカウンターを投げるとか)ためのプレイが多くなりがちで、成功率、再現性共に低くなりがちですし……。

というわけで、このサンプルリストのプレイ方針を確認しましょう。

①戦慄衆の秘儀術師orアゾリウスの造反者、ラヴィニアから相手へ対処を押し付ける
②①に追加でプレインズウォーカーを展開して対処するカードの幅を狭める(①だけで十分であれば行わないことも多い)
③盤面で対処されそうになる場合は稲妻や剣を鍬にによって排除する、呪文で対処される場合は打ち消す
④カウンターや除去をドロー呪文で集め続けながら攻撃を繰り返す
⑤僧院の導師を引いた→僧院の導師をひたすら守る、引かなかった→アドバンテージ差を広げてそのまま攻撃しきる

簡単にまとめるとこの5工程でデッキ構築が行われていることが分かります。
カウンターというタイプの呪文はとても便利かつ重要で、この工程に含まれないいわゆるコンボや別軸の勝ち筋を持つデッキに対しても、等しく有効であることが多いです。そのため、適当にカウンターを投げるのは止めたほうが良いと言えます。

3-1.正しくカウンターを投げるということ

プレイングと言われる部分は9割9分ここに集約されるかなと思います

除去呪文は打たなければ戦慄衆の秘儀術師で攻撃できない、プレインズウォーカーを落とされるなど、必要に応じ「打たされる」呪文ですが、カウンターはそうではありません。
相手が何を意図して、なぜプレイしたのかが分かれば、必ず正しくカウンターを投げられます(神の視点)。足りないこともあります。

例えば、相手がダブマリから1ターン目にMox Sapphire→定業と動いたとしましょう。これをこのリストで打ち消すかといえば、おそらくしないでしょう。
これは定業でカードを引かせずに色マナを事故らせようという意図で唱えるのがほとんどだと思いますが、このリストではこれを消しても、相手がナチュラルドローで土地を引くより先にゲーム展開を決すことはほとんど不可能です。
精神的つまづきと否定の力に定業2枚とかだったら投げるかもしれませんが。

・先手1ターン目の暗黒の儀式をカウンターするか?
・相手の手札が6枚から唱えられたAncestral Recallに1枚しかないカウンターを投げるか?
・トレストの使者、レオヴォルドに紅蓮破でカウンターするか?
・死儀礼のシャーマンを精神的つまづきでカウンターするか?

カウンターを持っているのであれば全てのカードに対してカウンターを打つか?という選択肢が存在します
しかし、見えたカードに適当にすぐカウンターを打っていては、本当に打ち消しが必要なカードにカウンター出来なかったり、相手に上手く釣られてしまいます。
これは例えばカウンターを持っているフリをするときでも同様です。
コントロールデッキは会話をしないとかカウンターは対話ではないという人がたまにいますが、フェアデッキをプレイするプレイヤーにとってはそうではないタイミングが多く存在します。
そして、コントロールデッキを使っていて時間切れを起こすのは「無駄に考えている」か、「デッキの知識が無い」のどちらかでしか起きえません。

◆無駄に考えている

逆説相手にプレイしたラヴィニアに対して意志の力を唱えられました。あなたは紅蓮破を持っていて唱えられます。
このケース、誰が見たって大体の人は紅蓮破を投げます。
が、ここで悩むプレイヤーがいます。それはゲームの焦点がどこにあるかを分かっていないのです。
例えば「紅蓮破は逆説的な結果に対するキラーカードだから取っておきたい」とか無駄なことを考えていて本質を理解していないのです。

定業で見た2枚が将来的には欲しいカードだったときにそれを拾うか否かなど細かい選択肢が元から多いデッキであるにも関わらず、このように本質とは全く異なる点で選択肢を検討していると本来存在し得ない選択肢が多数出てきます。そうして時間が不足します。
(独楽で3枚見るのに20秒もかけてるんじゃない!というのもこれに含みますね)

ヴィンテージのジェスカイアルカニストは時間切れにはならないデッキです。なぜかというと、アゾリウスの造反者、ラヴィニアというクリーチャーが存在するからで、2点を刻むことがちゃんとできるデッキだからです。瞬唱の魔道士があればそれは加速します。
過去のジェスカイメンターは僧院の導師以外のクロックは瞬唱の魔道士だけでした。そのため、瞬唱の魔道士を十全に使おうとした際には、瞬唱の魔道士のプレイタイミングは遅くなりがちで、クロックを刻むターンは短くなりがちでした。
しかし、アゾリウスの造反者、ラヴィニアは可能な限りはやく置くことで自分の有利を構築しやすくなるカードですから、クロックを刻むターンは長くなります。

なので今ジェスカイアルカニストをプレイして時間切れするパターンは同型以外にはほぼありません

無駄に自分で選択肢を増やしてジェスカイを難しいデッキにしてはなりません。
それをしてしまうのであれば墓荒らしという選択肢を減らせるデッキをプレイしたほうが良いでしょう。
難しいデッキは絶対に人間なのでどこかでミスりますから、勝てないデッキになりがちです。

◆デッキ知識が無い

これがかつての僕です。とは言っても時間切れで引き分けにしたことは過去1度しかないですが(ジェスカイアルカニスト対青白コントロール)。

何が言いたいのかというと、対戦している相手のデッキの本質がどこにあるかを事前に理解していれば、前述の無駄に考えることが減らせるということです。

私ははじめての大会にはコピーデッキをちょっといじって出場しました。
当時デッキリストの読み方も分からず、どんなアーキタイプがあるかもほとんど知らない中での7回戦。
逆説的な結果ストーム、オース、ドレッジ、テゼレッター(Time Vaultコントロール)、カード単体の効果は知っていても、どういうデッキなのかを理解していなかった当時の僕は何を打ち消して何を通して、というセオリーを理解していませんでしたので、想像力をフル回転させるハメになります。
こんなカードがあったらやばいなさっき見たこれを引かれたらやばいな、など、知らないということは怖いということですから、勝ちにいくプレイよりも負けないプレイを選択し続けることになります。
当時選んだデッキはジェスカイメンターでそもそもの勝ち筋が僧院の導師と精神を刻む者、ジェイスしかないデッキでしたから、それで正解を引き続けることができましたが、今のジェスカイアルカニストでこれをやったら絶対勝てないですよね。
ラヴィニアもプレインズウォーカーも強く運用できないということですから、デッキの6~8枚が事実上の無駄牌です。

考える必要があるのはセオリーを逸脱したタイミングだけです。
そして、そのセオリーを逸脱するタイミングは多くないですし、ほとんどのそういうタイミングはセオリーの範囲内のような顔をしています。
(墓地にフェッチが1枚しかない状況でヨーグモスの意志を通して負けたり、Mox Emeraldを通したら予想外の結果されたり、虚空の杯X=3で置いたら母聖樹置かれたり、ラヴィニアの前でチャネル打たれたので通したらエムラクールが出てきたり……)

そしてそういうイレギュラーなシーンは無限にパターンは存在していますが、頻出しませんのでちゃんとそのデッキを勉強しておくことが重要です。
知識があれば、相手は何をされるのが嫌だとか、どういうタイミングでやられるのが嫌とか、そういう細かいことも少しずつ理解できるようになっていきます。
すると、セオリーと呼べる範囲はより広がり、どんどん考えなくてはならないシーンが減っていきます。同時にどうしようもないシーンがどうしようもないと理解できて「〇〇制限しろ!」という考えが生まれていきます。

逆説的な結果とBazaar of BaghdadとMishra's Workshop制限しろ!!
※↑めちゃくちゃ

3-2.メタゲーム知識をつける=デッキ構築が正解しやすくなる=勝ちやすくなる

フェアデッキを使うなら、これを理解しよう!
メタゲーム知識をつけるとデッキの微調整ができるようになり、「あ、これ対処できるカードデッキに入ってないや」がどんどんなくなっていきます。
ジェスカイアルカニストをはじめとするフェアデッキは大体詰まなければまだ勝てるデッキです。そうやって勝てる可能性を少しずつ押し広げていけば勝ち越しへの道も遠くはないでしょう。

とは言ってもその経験値を自分で詰めない地方でプレイされている方もいるでしょう。
そういう方は「経験値を盗」んでください。
プレイレポートを読んだり、構築の意図を考えたり、思考開示してくれるプレイヤーは以前に比べれば、ここ1~2か月で圧倒的に増えました。

Noteのものの多くはタグがつけられていますし、それ以外の記事(DNなど)はまとめてくれている人がいます。
https://note.com/kakikukeko2131/n/nd3051299edce

そして、僕と遊んでください。
よろしくお願いします。

終わり。


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