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【「芸術激流」通信_19】 「芸術激流」と篠田太郎さんについて。

【「芸術激流」通信_19】


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「芸術激流」と篠田太郎さんについて。

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今回の企画を進めている中で、

作家として参加してくださっていた

篠田太郎さんの急逝の知らせをうけました。

今回の展覧会についてと、

僕からの篠田さんへの思いなどを以下のような文章にして

「芸術激流」の当日、奥多摩美術館に掲示しました。

篠田さん、今回「芸術激流」に参加してくださり

本当にありがとうございました!

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篠田太郎さんが、2022年8月13日にお亡くなりになりました。本当に突然の事で驚き信じられない気持ちでいっぱいです。まだ全然信じられないのですが、篠田さんとの今回の事、僕からみた篠田さんの事など少し書いてみます。

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【芸術激流]通信_19】 篠田太郎さんについて。

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「篠田さん大好きです!」なんて言ったら、笑いながら「うっとおしいよ!」と言われてしまうだろう。そう、2022年7月29日の、篠田さんに最後に会ったこの「芸術激流」の下見の時も。下見ラフティングに付き合ってくれたガイドの太田さんに、篠田さんの魅力を伝えたくて、本人が横にいながらいろいろ説明していたら、そう言われてしまった。この日の下見は、とても気持ちよかった。篠田さんもとても気持ちよさそうにボートを漕いで、川で泳いで、岩から飛び込んでいた。そして、漕ぎながら、泳ぎながら、飛び込みながら、今回の展覧会でどんな事をしようか考えていた。大きな岩を見て、この岩を鮮やかな色で塗ろうかな、とか。川に色を流して、ボートに乗った観客と共に流れていくようにしようか。その時の色は、何か環境に悪くないモノにしよう、そうだ、川の中に生えている藻が鮮やかな緑色だから、それを集めて流したら良いのではないか。そういいながら、水中に生えた藻を抜いて、食べられるかな?と、口に入れてモグモグして食感はザラザラするけど、海苔の風味があって案外おいしいとか。ボートでの川下りを楽しみながら、四方に意識を張り巡らせていた。そんな中で、特徴的な大きく窪んだ岩があった。太田さんに聞くと、『姫岩』という愛称を持つ岩だという。その窪みにボートを入れて、対岸を見てみると、篠田さんが「これいいかも」と呟いた。その対岸には、岩がリズミカルにゴロゴロと並んでいた。造園を学んだ篠田さんにとって、その並び方に、石庭の理想的なリズムを感じたようだった。その日の下見は、川の中の藻を少し採取してペットボトルに入れて終わった。その帰り、奥多摩美術館に立ち寄って、ひさしぶりに篠田さんと色々話した。篠田さんは、僕が武蔵野美術大学在学中に、非常勤講師だった。その時、篠田さんは予約制の個人面談というのをやっていた。研究室に予約票があって、そこに名前と希望日時を書いておくと、篠田さんがアトリエにきてくれて、色々話を聞いてくれるのだ。そんな面談を2回くらいしてもらった。その時の内容で特に覚えているのは、「女性と映画館に行って、映画をみながらその女性の手を握らないのは失礼だよ」という、なんの話の流れで出てきたのかわからない言葉だ。なぜだかいまだに、確信めいてそう話す篠田さんを時々思い出す。その言葉は全然わからなかったが、自分のイメージの届かないくらい違う所から、この世界を眺めている、こういう大人がいるのかと、なぜか世界が少し広がった気がした。篠田さんと話をしていると、篠田さんの中に『確かさ』があって、それが常識とか法律とか尺度とか、集団が集団を維持するために作った『仮の確かさ』よりも、なんだか真実味を帯びて感じてしまうのだ。そしてその個人的な『確かさ』が美術作家としての核になるものだとも感じさせてくれた。絵を描く事や、物を作る事だけが美術ではない。この世界をどう見るのかという、その態度や、あり様が美術なんだ、という考え方に今の僕がなっているのも、篠田さんの存在は大きいと思う。卒業後も、篠田さんとアトリエを一緒に借りている吉田さんの手伝いで、そのアトリエに行くと、たまに会えて、いろいろ話をしてくれた。僕にとって篠田さんは、モノの見方をグラグラと揺さぶってくれる大好きな先輩の1人だ。僕らが国立奥多摩美術館という企画をはじめると、篠田さんは毎回見に来てくれた。そして、毎回、ここにどんな可能性があるのか、これがどんなに素敵な試みなのか、いつも僕が思う以上の確かさを持って面白おかしく話してくた。そして「ぜひ今度は参加させてくれ、もうプランも決めてあるから!」と言ってくれていた。そんな風に篠田さんに言ってもらえると、いつも本当に嬉しくて、この国立奥多摩美術館という活動に意味があるような気がして、勇気づけられてきた。そして、今回「芸術激流」をやろうという話になり、ぜひ篠田さんにも参加して頂きたいと連絡すると、快く二つ返事で参加してくれる事になった。とってもうれしかった。下見の帰り道で、篠田さんが、「この国立奥多摩美術館や芸術激流というのは佐塚の作品だよね。」と言ってくれた。もちろん、僕だけで作っている、僕だけの作品ではないが、こういう作品の作り方は、これからの新しい作品作りの1つの形になっていくという事を話してくれた。その日が篠田さんと話す最後になるなんて全く思わなかった。この下見の後はメッセンジャーでやり取りしていた。僕は篠田さんの指示で、川から採取してペットボトルに入れた藻を3つの状態にした。ミキサーにかけて薄く伸ばして乾燥させる。ミキサーにかけて瓶に詰めて冷凍させる。そのまま瓶に詰めて経過観察。数日後、けっきょく鮮やかな緑色の状態が維持できなくて、篠田さんにそれを報告した。藻を大量に採取して川に緑色を流すプランは断念した。そして、窪んだ岩にボートを停め、そこから対岸を見せるプランにしようという話になった。そのプランについては、ボートの動きや、停泊した時のボートの向き、対岸のどこからどこの岩を見てもらうのか、どんなコンセプトなのかなど。ほぼ下見の時に、篠田さんから内容を聞いていた。そして、その見てもらう場所の写真を撮って、ゴールの奥多摩美術館に展示して、ラフティングが終わった方々が、あれが篠田さんの作品だったのか、と思ってもらえるようにしようという事で、その写真をいつ一緒に撮影に行こうか、日程調整をしていた。それが、篠田さんとの最後のやりとりになってしまった。送ったメッセージに既読が付かなくて、気になっていた。数日後、篠田さんが急逝したという連絡をもらった。全然信じられなかった。全く実感がわかない。篠田さんのあの笑顔は、いつでも思い出せる。思い出すと、なんだか悲しい気持ちにもならない。ただただもう話が聞けない事が寂しい。とっても寂しい。そんな中、この「芸術激流」に作家として参加している篠田さんについて、どのようにしたら良いのかという話になった。そして、僕が篠田さんから聞いていたプランを、この「芸術激流」を一緒つくっている小川さん和田さんに話して、どのようにするか話し合った。僕にはなんとなく「佐塚やっといて!」って笑って言っている篠田さんがすぐ思い浮かんだ。篠田さんが所属しているギャラリーの方とも話し合い実現させる事になった。ただこのプランにおいて、篠田さんと一緒に撮影しようと話していた写真だけが足りないピースだった。それを和田さんと一緒に撮影しに行った。アトリエの仲間の三熊くんが額装してくれた。「篠田さんこれでよかったですか?」篠田さんの手伝いを何度かさせてもらった事がある。まさか、こんな形で最後の手伝いをするなんて思ってもみなかった。OKを言ってもらえない手伝いなんて難易度が高すぎます、篠田さん。僕は何か考え事をする時に、この人だったら、どう考えるかな、どうするかなという、指標にしている人が何人かいる。その中にはもちろん篠田さんもいて、これからもそんな篠田さんに色々助けてもらうと思う。(佐塚真啓)20221014_21:20

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■タイトル:『芸術激流 ラフティング+アート』

https://moao.jp/

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■日時:2022年10月15日(土)

〇ラフティング開始時間:午前の部10時〜 /午後の部13時〜

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■当日集合場所:

みたけレースラフティングクラブ(JR御嶽駅から徒歩2分) 

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■参加作家:

・村田峰紀(パフォーマンスアーティスト)

・柴田祐輔(アーティスト)

・大石将紀(サクソフォン奏者)

・和田昌宏(アーティスト)

・黄金世代[永畑智大・有賀慎吾・酒井貴史](アーティストグループ)

・キンマキ(画家)

・赤池奈津希(画家)

・篠田太郎(アーティスト)

・青木野枝(彫刻家)

・新人Hソケリッサ!(ダンスグループ)

・吉増剛造(詩人)

・川合玉堂(画家)

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■場所:多摩川(御岳園-軍畑大橋)・国立奥多摩美術館

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■観覧:

○ラフテティング参加観覧チケット(限定・午前30人/午後30人):9,999円

○御岳渓谷遊歩道からの観覧:無料

※ラフテティング参加観覧チケットは完売しました!

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■「芸術激流」

ボートで川を下る。岸には芸術が点在している。ボートから芸術を目撃する。けっして立ち止まってゆっくり鑑賞する事は出来ない。鑑賞ではなく目撃。川は留まる事なく流れている。その流れに身をゆだねる。自分の思い通りにはコントロールできない芸術との出会いかた。自然の中に点在する芸術を見逃すまい。意識を四方に行きわたらせる。人間が芸術を探すうちもザワザワと自然は蠢いている。芸術と自然は分かち難く溶け合っている。川は芸術で満ちている。(佐塚)

主催:国立奥多摩美術館・一般社団法人Ongoing

連携:OKUTAMA ART FESTIVAL 2022

協力:みたけレースラフティングクラブ・ぼちぼちアドベンチャーすその・玉堂美術館・小澤酒造株式会社

広報協力:株式会社西の風新聞社

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