スクリーンショット_2015-07-31_1.33.31

モリジュンヤさんへの31問31答【ライター100人押しかけ問答 #4】

ようこそ、ライターさとゆみの押しかけ問答部屋へ。

ライターさんに伺う1問1答シリーズ第4弾です。

今回お話を伺ったのは、主にウェブメディアを中心に執筆をされているライターのモリジュンヤ(@JUNYAmori) さん。ウェブ媒体「greenz.jp」の編集を経て、現在はライティングだけではなく「THE BRIDGE」「マチノコト」をはじめとする、メディアの運営や編集もされています。

Q1:モリさんとは一度、ferret編集長の飯高さんにご紹介いただいてお食事をご一緒させていただいたことがありますが、ゆっくりお話しするのはそれ以来ですよね。今日はライターになられた経緯からぜひ聞かせていただけますか。

A1:僕、大学4年の就職活動の時期に「自分は何をしたいのか?」「自分は何のために働くのか?」を考えた時期があったんです。今考えるとモラトリアム期間だったな、と思うのですが。

そのとき周りの人のペースに合わせて就活するのを一度やめて、自分の興味のあるものをつまみぐいのようにいろいろ体験したんですよね。


Q2:それはバイトをしたり、インターンをしたり?

A2:そうです。当時始まったばかりの「自由大学」という学びの場に通ったり、NPOで非常勤で働いたり、コピーライターやカウンセリングにも興味があったので、いろいろ調べていました。



Q3:それが、大学4年生のときですよね。

A3:そうです。僕が就職活動していた2009年前後って、いろんな印象的な出来事があったんです。たとえば、リーマンショックがあり、オバマ大統領の初当選があり、iPhone3GSが出て、佐藤尚之さんの「明日の広告」が出て……。



Q4:確かに、時代が大きく動いたときですね

A4:コミュニケーションの変化を感じさせる、そういう時代でした。オバマの選挙キャンペーンは、ソーシャルメディア時代の到来を予感させたし、これからの広告はコミュニケーションをデザインする時代などと言われはじめたころでした。



Q5:それらが就職活動を考える時代と重なったんですね。う、お若いですね。モリさんて、キャリアがすごいから、もっと上の人に見えるんですけれど、そうか、オバマの選挙のときは学生だったんですね……。

A5:そうなんです(笑)。で、最初は広告への興味からいろんな業界を調べていったのですが、そのうち、モバイルテクノロジーやソーシャルコミュニケーションの方向に、興味がシフトしていったんですよね。



Q6:ソーシャルコミュニケーションに惹かれたのはどういう理由だったんでしょうか

A6:リーマンショックの影響もあったと思うのですが、「個」がどうやって自由度高く生きていけるかということに興味が生まれたんです。モバイルテクノロジーも、ソーシャルテクノロジーも、個をエンパワメントするものだな、と。



Q7:では最初は、「これからの時代の生き方」の探求のひとつとして、モバイル業界やコミュニケーション業界に興味をもったんですね。

A7:そうなんです。で、そんなときに、元電通のクリエイターで「サステナ」という環境広告会社を運営していたマエキタミヤコさんの仕事を通して、「ソーシャルクリエイティブ」というものを知りました。クリエイティブを社会課題の解決につなげようというアプローチです。

それまでも広告やクリエイティブに興味があったのですが「どうして発信するのか」「なぜ表現するのか」という部分に、自分が解を持てなかったことが足かせになって、一歩踏み込めませんでした。でも、この「ソーシャルクリエイティブ」という考え方には共感できた。「何のために発信するのか?」が明確になったんです。



Q8:なるほど。「書きたい」や「発信したい」が先にあったわけではなく、「何のために発信するのか」の問いかけが、モリさんの根っこにあるんですね。

A8:そうなんです。ソーシャルクリエイティブという考え方に出会って、自分が発信する意味、つまり「Why」を「社会課題の解決」として、その方法の「How」を「ウェブ+ソーシャルで発信していく」とやっと定めることができたんです。



Q9:だから、その後の「greenz.jp」での執筆につながっていくんですね。

A9:そうなんです。「ソーシャルクリエイティブ」というキーワードで検索すると、ひっかかってきたのが「Whynotnotice」という兼松佳宏さんのブログで、そのポートフォリオ先にあったのがgreenz.jpでした。兼松さんがクリエイティブ・ディレクターを務めていたのがgreenz.jpだったんです。

当時のgreenz.jpもとても面白い活動をしていて、何かしらこの活動に関われないかなと思って訪ねてみたんです。関わるようになってしばらくしてから、Twitterアカウントの運用を手伝うようになって。そのうち「ライターもやってみる?」と言われ、原稿も書きながらgreenz.jpで編集アシスタントをすることになったんです。



Q10:それまでにライティングの経験は?

A10:まったく無いです。でも、人はやらなきゃいけない環境に放り込まれると、やれるもんだなあと思いました(笑)。もちろん、我流なのですが。とにかく読者にわかりやすい文章を、と考えながら本を読んだり、他の記事を参考にしながら練習しました。



Q11:編集アシスタントの仕事は、どんな感じだったんですか?

A11:当時のgreenz.jpではたくさんのライターさんが執筆してくださっていていたので、僕の仕事は、その人達に書いてもらいたくなるような環境を作ることでした。



Q12:具体的にはライターさんたちとどんなやりとりを?

A12:メールやTwitterでのコミュニケーションを通じて、ライターさんの関心のあるテーマで原稿を書いてもらうようにお願いしていました。

自分で原稿を書いた経験ももちろんですが、いろんなスタッフの方に気持よく仕事をしてもらうにはどうすればい いのか? ということを、この時代に考えられたのは良かったと思っています。


Q13:フリーになったのはいつくらいでしたっけ?

A13:2011年の夏です。きっかけはいくつかありました。ひとつは、震災があり、自分自身の社会との関わり方を考えたこと。「自由度高い働き方をしたいから」と選んだ道のわりには、毎日夜遅くまで働いてしまう生活だったりしていて。全然自由度高くないじゃん、って(笑)。

それから、スクーを始めとするスタートアップをした友人たちがどんどん増え、彼らに「取材してほしい」と言ってもらったのもひとつの理由です。ブレイクスルー前のスタートアップに関わる人達と、もう少し丁寧に付き合って、その物語を適切な媒体で書きたいと思って。自分の関心範囲が広がったこともあって、いろいろな取材ネタの相談を自分が受けて、そのネタに合った媒体に書き分けられるようになるといいな、と考えたりもしました。


Q14:独立してからは、ライターの仕事がメインですか?

A14:当時はウェブメディアの編集とライティングが二本柱でした。
ライティングだけではなく、ウェブメディアの運営を続けたのは、興味があったのはもちろんですが、月額でフィーをもらえることも魅力でした。ライティングだけだと一本あたりでのフィーをもらう仕事なので、月によってばらつきが生まれますし、自分の取材時間の限界が収入の限界になってしまいますから。最近では、PRやリサーチの仕事の相談も増えてきています。



Q15:今後はどのボリュームを増やしていこうと考えていらっしゃいますか?

A15:書く仕事には2つパターンがあると思っています。「この人にしか書けない」というものと「ある程度ライティングスキルがあれば対応できる」というものの2つです。最近考えているのは、単純にライティングスキルだけ求められている仕事は、できれば少しずつ減らしていけるといいなと考えています。「この人にしか書けない」とか「このテーマならこの人」といわれるようになっていきたいですね。



Q16:とは言え、ものすごい分量を書いてらっしゃいますよね?

A16:ですね(笑)。最近は、締め切りがない日はないという感じです。ただ、月に100本に届きそうな勢いで書いていると、翌月には自分が書いた原稿なのに思い出せないことがあったりするんです。そういうマシンガンのような書き方は、よくないなと思いました。

数をこなすことで得られる経験もあると思いますが、今必要だと感じているのは数を書いて経験値を上げるのではなくて、そのフィールドに深く入り込み、より付加価値を出せるようなライターになっていくことだ、と考えています。

突き詰めていくと、もしかしたら自分が書かなくても仕事になる、なんて仕事の仕方もあるかもしれないな、と。



Q17:その「自分が書かなくても仕事になる」を、詳しく聞いていいですか?

A17:たとえば、会社のニーズを汲み取って、媒体にとってどのようなコンテンツが必要なのかを考え、その目的を達成するための記事の設計図をつくる、などでしょうか。



Q18:もう少し踏み込んで聞いてもいいですか?

A18:スキルの抽象度を上げていくと、いろいろな可能性が見えてくると思っているんですよね。たとえば、インタビューすることだったり、質問を投げかけることだったり、もやもやと考えていることを言語化してあげることだったり。「問いをデザインする」とでもいうんでしょうか。



Q19:なるほど、アウトプットの形を「書く」ことのみに限定しないことで、新たな可能性が生まれるということですね。

A19:編集者やライターという立場から、テーマを決めて探求していくことによって新たな価値を生んでいくことができると考えています。

その意味では、単に文章を書くライターとしてアサインされるのではなく、リサーチやフィールドワークで定性調査や行動観察をしてインサイトを得るような仕事、エディトリアルリサーチとでも呼ぶような仕事はとても面白く感じています。



Q20:モリさんは、いま積極的にライター同士のつながりを作ったり、複数の人たちで原稿をまとめることにチャレンジしていると聞きました。

A20:そうですね。まだ手探り状態ですし、仕事の内容にもよるのですが、原稿を書いてもらって、それを僕がチェックして原稿にするケースや、文字起こしから構成までの作業をお願いするなど、意識的にチームでライティングするということにトライしています。



Q21:ライターの仕事って、人に手渡していくのは難しい分野だなと、私も悩ましく感じているのですが。

A21:そこは、ひょっとしたら個人格と別の人格を使い分けることで解決できるかもしれないと思っています。たとえば、「モリジュンヤ」という個人格に仕事が発注される場合って、なかなか代わりの人に担当してもらうことは難しいと思います。

でも、たとえば法人格だったり、ユニットだったりと個人格ではない存在として仕事を受けたとしたら、自分が担当しなくても人に手渡していくことができるかもな、と考えています。リソースとクオリティが担保できていれば、ですけれど。



Q22:なるほど。それは確かにいい解決策のように思います。モリさんの元にはこれからライターになりたいという人も大勢集まってくると思うのですがどんなアドバイスをされていますか?

A22:うーん。「はよやったら?」でしょうか(笑)。ライター募集しているところに書いて送ればいいのでは、と言うかもしれないです。

もう一歩踏み込むと、どういうライターになりたいのか? なぜライターになりたいのか? は、意識したほうがいいかもしれません。

先ほど言ったようにこれからの時代は、「ライター」の枠を広げることができる人が強いと思います。編集者であったり、リサーチャーであったり、フィールドワーカーであったり。そこは人によって違うと思いますけど。



Q23:少し話がかわります。モリさんがインタビュアーとして大切にしていることはどんなことですか?

A23:オーダーを受けたときにまず確認するのは、インタビュー目的の理解です。その媒体特性のなかで、対象をどう切り取っていくのか。発注がぼんやりしている場合は、どこまでフリーハンドの領域なのかを確認します。



Q24:実際のインタビュー中に意識していることは?

A24:頷き方や、話し方のペースに気をつけることでしょうか。ミラーリングをしたり、深めにゆっくり頷いたりして、できるだけ速く話しすぎないようにします。

それから、相手の話が抽象度が高い場合は、ボールの投げ返しをします。「それはこういうことを指しているのでしょうか?」と自分の言葉で聞き返してみる。現場でチューニングしていかないと、原稿を出したときに「こんなつもりで話したんじゃない」とすれ違いが生まれることもあるので。



Q25:テープは聞き直しますか?

A25:ケースbyケースですが、僕が記事を書く媒体はファクトベースで書くことも多いので、語尾のニュアンスが必要になることはないんですよね。ですから、事実確認で要所を聞き直すことはありますが、基本的にはあまり聞き直ししません。



Q26:モリさんはイベントレポート取材も多いですよね? そこではどんなことに意識していますか?

A26:イベントでは、テキスト以上に写真の撮り方を大事にしています。会場の全体図がわかる写真は必ず撮るようにしています。
イベントレポートは臨場感を伝えるのが大事なので、できれば速攻であげるのがいいですよね。なかなかできないことも多いんですが(笑)



Q27:原稿は何で書いていますか?

A27:Pagesです。iCloudで自動的にドキュメント共有しやすいので。マシンは家ではiMacの21インチ、外ではMacBook Proの13インチです。外で書くこともあります。気分によってですね。



Q28:モリさん、そういえば最近、ブログも大量に更新されていますよね?

A28:そうなんです。それもやはり、大量に書いた記事がフローになってしまっていると感じたからです。もうちょっとストックされる仕組みを作って自分のバリューにしていかないと、と感じました。自分のおうちをちゃんと成長させなきゃという感覚かな。

それから、自分のブログって、どういう書き方をしたらどういう反応が返ってくるか。どこを変えたらアクセスが変わるかなどの、PDCAをまわしやすいと感じます。



Q29:モリさんは、どんなときに書くことの面白さを感じますか?

A29:うーん、そうですね。相手の伝えたいことを、ちゃんと整理整頓できたとき、かな。部屋を綺麗にできたときのような、気持ちになれます(笑)。

「自分は何を面白がっているのか」を、書くことで整理できるのが、ライティングの醍醐味のひとつだなと思います。



Q30:いずれ、モリさん自身が書籍を書く可能性もありそうですよね?

A30:あるかもしれないですね。ただ、まだ今は、自分のストックが足りないのでは、と感じています。例えば、村上龍さんや真山仁さん。このお二人は、何かしら社会課題へのメッセージをエンターテイメントに昇華した作品を出されていてリスペクトしているのですが、その作品たちは圧倒的な取材量やバックボーンがあるからこそ書けるのだと思います。

海外では『モチベーション3.0』や『ハイ・コンセプト』を書いたダニエル・ピンクや、『テクニウム』を書いたケヴィン・ケリーなど、高度な専門性を持つと、ある種の未来予測に近いビジョンを提示できるのだと感じます。

あの域に到達するには、数と質を兼ね備えた専門性を持たなくてはいけないんだろうなと思っています。



Q31:40歳になったとき、どんな自分になっていたいと思いますか?

A31:もっとフラフラしていたいですね(笑)。自分が居たい場所で書きたいものを書ければいいなと思います。

例えば、糸井重里さんや、家入一真さんって、文章やサービスのすみずみまで、人柄がにじみ出ていると思うんです。この時代、ウェブは個人をエンパワメントするものなのに、単なるインフォメーション的な文章しか出せないのはもったいない。もっと自分の世界観や色、オピニオンを出していくことがネクストステップかなと考えています。

ありがとうございました(完)

【編集後記】
初めてお会いする1年以上前から、モリさんのことをずっとTwitterでフォローしていました。日々(とういうか、毎時)更新される記事の多さに「読むのも追いつかないのに、書いている人はどんなスピードで書いているんだろう」と思っていた、その方です。
笑ったときの顔が別人のようにまた素敵な方なので、まだリアルでお会いされてない人は、どうかオフラインでお会いしてみてください。
たっぷり2時間。ひとつひとつの質問に、とても丁寧に答えてくださいました。現在、「モリジュンヤ」で検索すると「イケメンWeb男子カタログ」が上位にあがってくるのですが、この記事がそれを抜くのがひそがな目標です。モリさん、ありがとうございました(佐藤友美)

モリジュンヤさん
1987年2月生まれ、岐阜県美濃加茂市出身。横浜国立大学経済学部を卒業後「greenz.jp」編集部を経て独立。テクノロジースタートアップを取材する「THE BRIDGE」や、都市と地域などマチの課題を解決するアクションを紹介するウェブマガジン「マチノコト」など複数のメディアの運営に携わり、社会の編集と未来の探求をテーマに、幅広く執筆を行っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?