真っ黒なその目を

「やぁ、おかえりなさい。今回は随分と遅かったね。」
真っ黒な目をした君が言う。
その顔はいつもニヤケヅラ
ぼくの失敗をいつも笑いながら
聞いてくれるんだ

「君はいつも愚かだねー。期待ばっかして
最後には泣いて帰ってくるんだ。」
ひどいな。そんな事はないよ。
それに涙なんてとうに枯れ果て
もう枯れた砂しか出てこないんだから

「だからいってるじゃないか。傷つくのはいつも君だってそれ以上傷が入る場所なんてないくせに。」
期待のない人生なんてつまらないじゃないか。楽しく生きていたいしぼくはあの子が好きだったんだ。

「そんなことばっか言うから私が生まれたんでしょう?」
君は笑う。真っ黒なその目を光らせて

「0になろう。」
そうすれば傷つくことなく平穏な世界が得られるでしょう。
「これで大丈夫。」
あなたがいうのならばそれで。あともう少しだけ。

「やぁ。いつも死んだような顔をしているね。」
ほっといてくれ。好きでこんな顔で生まれた訳じゃないんだ。
ずっとこれで生きてきたんだ。

「別にそういう意味じゃないんだけど。まぁ君が死ななければそれでいいけどね。」
明日にはもう死んでるかもしれないけど。
僕を見てる人なんて誰もいないから。

「たまにはぼくにも笑顔を見せてくれたっていいんだよ。」
君はその為に生まれたのではないだろう?
出しゃばらないでくれ。

「僕だって傷つくんだよ。」
そうやって少し悲しげな顔を見せても
僕にはお見通しさ。
君はそういう風にできていないし嘘だらけ。
少し黙っててくれ。

「期待しよう」
永遠と不幸せな君の人生を。
歩いてはつまづき、カサブタだらけの日々を
「笑顔になって。」
作り物の笑顔でもそうすれば
生きていけるから。

「あーいえばこういうし。なんでそんな風になってしまったんだい?最初はそんな風ではなかっただろうに」
いや多分最初からこうだったんだよ。これは生まれついてのことだったんだ。

「それは言い訳だよ。」
そんなの知ってる。人生がいい訳だ。

「なんでこんな事になってしまったのだろうか。嫌なことがあったら言い訳をして、自分が傷つかない口実を作って。手先が痺れる感覚だけが生きてる証。そんな壊れた人間なんて誰も好きになっちゃくれない。いい加減全て壊れておくれ。」

「0になろう。」
染まりきった暗闇が僕のことを癒してくれるでしょう。
自分が傷ついたときだけ呼び出して
利用するだけして幸せになったらぽいっとしてただの都合のいい女
流石にあの子も呆れ顔。
「それでもいいよ。」
本当にごめんね。あともう少しだけ。

「そろそろいいかい?」
ありがとう、いつも迷惑ばかりかけて。
もう君を呼ばないように心がけるから
精一杯強く生きていくから
先には未来なんて見えないけど
限りなく僕の手で色付けるから
「笑っていいよ」
いつか君と三人で手をつないで歩けるその時まで

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