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交換日記(8)世界の終りとその先の素敵
去年の夏に出会った患者様の話をしても良いですか
その方はね、目が見えない方だった。
そしてその患者様は素敵なことばかりをいう方だった。
「目が見えないから耳や鼻がよく効くようになった」「不便ではあるけれど、ちっとも不幸じゃないわ」「私は沢山幸せになれた。あの人(旦那様)のおかげでね、」って笑ってくださる方。
ある日に私と患者様で好きなものの話になった時に「春が好き」と答えられた。風が1番気持ちがいいからだそう。私は星が好きだからそう答えると「星は綺麗?」って。
私は一生懸命伝えた。相手が見た事のないものを伝えるのは本当に大変で
この季節にはこんな星があって、それには神話があってね、って沢山話をした。
すると患者様はこう言ったの。
「顔に表情があるように、声にも表情がある」
「だからね、あなたが言う星がそんなに人を笑顔にさせてしまうほど綺麗なんだ、って伝わったわ、ありがとう。」
患者様は高齢の方でとても綺麗な方
「もう早く死にたい」そんなことをポツリポツリ言われる方だった
理由は「主人に会いたい」
遠い空を見ているようにため息混じりで言われる。
わたしはその時思ったの
この方にとって“死ぬ”ことが終わりなんかじゃないんだ、って
彼女にとっての世界の終わりは多分旦那様と再会できる幸せなものなんだと思う。
世界が終わった後に幸せになるの
素敵な彼女が考えそうな事
最後の日に彼女は私にこう言った
「私が死んだら主人と一緒にあなたを見守っておくわね」
少なくとも彼女は目が見えるようになってるんだと思う。
世界の終わりは幸せそのものなんだと思うし、彼女はなんて自由な人なんだろう。