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交換日記2(8)宝石の世界

今回の実習でわたしは精神疾患を抱えておられる患者様と出会いました。

その方は周囲の人間に対しとても敏感にストレスを感じられる方でした。でも何かあったときすぐに言われる「私が悪い」。被害妄想だと看護師さんは言われる。でも悪いと感じる事は悪い事じゃない、妄想だと思われるのは理由があって、まず妄想とは訂正不能で強固な自信をもっていること。そしてそれが事実とは異なるから問題視される。

彼女はわたしに「わたしは統合失調症なんです」と言われた。精神疾患の方の大抵は自身が精神疾患であることを認めない。でも彼女はまっすぐどこかを見てはっきり言ったの。
患者様は自身の事をあまりお話になられない方で初めは私の話を聞いてくださる程度だった。でも日にちが経つにつれて少しづつ私に話をしてくださるようになって沢山笑ってくださるようになった。でもどこか考え込んでしまわれる様子もあったの、

そして最終日の前日に患者様は私に相談をされた。「私の友達に死にたいと言う人がいるの。私はね、がんばってって言うんだけどやっぱり死にたいみたい」って。
わたしは彼女自身のことを言ってるのかなって思ったの自殺したいのかな、って
だから私の昔話をした。

「私の友達もね、自殺を考えてた子がいて、その子はね真面目で一生懸命で常に笑顔な子でした。でも疲れちゃったって高いところから飛び降り自殺をしようも思う。って相談に来たから私はその子と一緒に死のうと思ったの、とても好きな子だった。ずっと一緒にいた子だった。
あの子はとても驚いた顔で泣いた、ずっと寂しかったって。でも死にたい気持ちは変わらないんだって言うけど
私も本気だったから「いいよ、」って言ったんです。
あの日の私は17歳で多分やっぱりどこか疲れてたんだと思うんですけど、先の未来が一切分からない不安に潰されて正直死んでもいいって本気で思っていました。そして約束をしました。彼女と。8月19日、一緒に死のうって。
でもお昼くらいから一緒にいて、夕方から夜に変わって私たちは色んな未練がある事に気付きました。
あの日は空が本当に綺麗な日でした。とても長い時間あの場所にいました。忘れられません、。空に1番近いんじゃないかなって思う場所で私たち2人は、沢山話をしましたオレンジ色とグレーが混ざる空も群青色の輝く空も見ました。産まれて初めて流れ星も見たんです。
結論は知っての通り自殺は2人とも出来ませんでした。嘘くさいんですけど世界があまりに綺麗で、死ぬことを思った瞬間自由になれた気がしたんです。どこへでも行ける気がしましたし、なんでも出来てしまう気にもなれました。そこから生まれた未練が「せめて死ぬならこれだけは叶えたい」と思わせてくれたんです。あの日ほど自由を感じた瞬間はなかったです。人間という存在すら奇跡に思えました、笑っちゃいますでしょう?

その時の私は「人間は宝石の中にいるんだ」って思いました、。脆くて強くて、光ってくすんで、無くしやすくて見つけにくい。生きていたい、って思えた。本人次第で見方なんて変えられる。そう本気で思えました。
その友達と「生きててよかったって思えるまで生きよっか」って約束をしました。
死にたいと言っている方がおられるなら頑張っていることを認めてあげてください。そして世界が綺麗であることを教えてあげてください。雨の日の空も道端の花も全部綺麗だから、声掛けをするなら……そうですね。一緒に天体観測しよう!くらいですかね!それだけできっと相手の人は救われる部分があると思います、私はね。そう思います」

看護の道を歩いている人間が話す内容ではなかったけど、まだ学生だし許してほしい。

患者様笑った後に泣いてた。

患者様はこの話を聞いて私に話しをしてくださったの「友達ね、自殺しちゃったの。もういないの。私に(幻聴幻覚妄想の)症状が出てきたのはね、それからだったの」患者様は自分が友達を助けられなかったのがきっかけで心が病んでしまわれたんだって言ってた。救えなかった辛さが押し寄せてくるし私が見殺しにしたんじゃないかって思えてきて、
誰にも言えなくて、ずっとずっと一人で苦しんでたんだ、って私の手を強く握ってお話しをしてくださったの。私は何も言えなかったんだけど手だけは離さなかった

次の日患者様は「わたし生きるね、」って言ってくださった。
「退院しても毎日ちゃんと薬飲んで、再入院しなくていいようになります」って私が受け持たせていただいた日と比べると目が変わってた。目が合うようになったし、きらきらしてるように思えた。なにかを見つけたんだと思う。

見え方次第で捉え方次第で全部変わる
だから私の我儘を言っていいなら生きてほしい
世界が自分が思っている以上に綺麗だと気付いてほしい
死ぬ瞬間幸せだったって思ってほしい

この世界は宝石なんだと思う
私たちは宝石の中にいるの
だから周りのものすべてが綺麗なの
わたしは死なないでよかったって思えた
生きていたいって思えてる
夢をみつけたの
誰にも言えない夢
笑っちゃうくらい単純な夢

「幸せになりたい」