マガジンのカバー画像

装丁コレクション

12
所有している本の中から、気になった装丁を写真で紹介。
運営しているクリエイター

#小説

古本をめぐる冒険 宮沢賢治「風の又三郎」

本棚の中から、装丁が魅力的な書籍を紹介。今回は「宮沢賢治 風の又三郎」の復刻版です。装丁と挿絵を手がけたのは、小穴隆一氏。 函つきの豪華な装丁です。「柿色」と「朱色」の中間といえばよいのでしょうか。昭和という時代をそのまま取り込んだかのような、繊細で力強い色合いです。 裏側。表紙では白馬だけでしたが、こちらでは二頭の馬が「顔をならべて」駆けています。姿勢や脚の位置などから疾走感が伝わってきますね。 背と挿絵。佐太郎が妹かよの鉛筆をふところの中に入れ、机の上にうつぶせにな

古本をめぐる冒険 太宰治「パンドラの匣」

太宰治といえば「人間失格」や「斜陽」を思い浮かべる人も多いかと思います。自分の場合は以上の作品に加えて「パンドラの匣」が頭に浮かびます。その理由は、本作品が地元の河北新報で連載されていた作品ということで、それとなく身近に感じるからでしょう。 そんなわけで「パンドラの匣」は河北新報版で読みたいもの。装丁も美しくモダンで所有する楽しみも感じる一冊です。 今回紹介している「パンドラの函(河北新報版)」は復刻版なのですが、奥付けもちゃんと再現されています。「太宰」の判子が、いい感

古本をめぐる冒険「吾輩は猫である 夏目漱石」

多くの日本人が知っている小説のひとつといえば「我輩は猫である」であろう。書き出しの「我輩は猫である。名前はまだ無い。」も、空で言える人も多いと思う。そんなにも著名な作品であるにも関わらず「読んだことがない」「あらすじさえ、わからない」という人も多いのではないだろうか。 いや、別に責めているわけでも上から眺めているわけでもない。このようなことを書いている私自身「我輩は猫である」を完読できたのは、社会人になってからだった。それまでに何度も挑戦しては、途中で挫折してしまっていた。

古本をめぐる冒険「性に目覚める頃 室生犀星」

最初に「性に目覚める頃」という題名を目にした時「性教育に関する内容なのか。それとも性欲に悩む主人公の葛藤を描いた作品なのだろうか」と。そして、機会があれば読んでみたい、と感じたことを覚えている。 今年の春に金沢へ旅した時、雨宝院で「この作品は、編集者のアドバイスで変更したそうです」と教えていただいたのだが、編集者の方は良い仕事をされたと思う。この題名だけでも(もちろん、すばらしい作品であることはいうまでもない)魅力が大幅にアップしていると感じる。実際に私も、こうして紹介