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巨人と小人の戦い方(ボランティア編)前編

ボランティアについてです。最初は週末起業くらいの気持ちで、チームメンバーを集めました。スタートは早かったと思います。だけど、僕ら小人がいくらザワザワしても、巨人の足音は大きく、ズドンズドンと僕らの気持ちに少しずつ変化をもたらしました。世の中を動かせないなと思いながらも前に進んでいます。

今、僕たちの有志チームは、フェイスシールドというものを作っています。フェイスシールドというのは一番上の写真を見てもらったら分かるのですが、コロナの飛沫感染を防ぐものです。

医療現場で足りない、マスク、防護服に次いで、フェイスシールドが足りていません。そもそも、フェイスシールドについては作っている人が少なかったので、製造能力が高い工場も無かったのだと思います。

4月15日(水)にインターンのまこちゃんの投稿がバズり、16日(木)に偶然見つけました。「お!これだ!」と直感的に思って、僕は行動に移しました。17日(金)にはチームメンバーを5名招集しました。チームけまこです。

なぜ、フェイスシールドだったかと言うと、世の中にマスクは既に流通し初めてきていると感じたからです。知り合いの経営者でも中国経由でとか、タイ経由での販売が激化してきました。あとは価格の勝負と納期の勝負でした。社会貢献と歌いながら単価が高い人もいます。防護服は僕らでは作る事ができないし。でも、このフェイスシールドは、3Dプリンタで作っているし、どうやら僕らでも作れるのではないかと感じました。

だけど、僕はエンジニアではないので、エンジニアの皆さんに協力してもらう事にしました。

自分たちで出来ることで、大手がやっていなくて、社会貢献しながら稼げたら素晴らしいんじゃないかって感じたのです。僕らは小さいチームなので小さく初められる。じゃー今週末から動こう!となりました。

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打算的

僕たちは、スピード命で取りあえず初めました。採算は後から合わせにいっても何とか出来るという自信がありました。1つ買うと、1個寄付されるクラウドファンディングやったらいいんじゃないかって最初思っていました。そしたら製造原価も確保できるし、なんなら少し利益が出ると考えていました。

テープタイプ(下記写真:楽天より参考出展)のフェイスシールドは販売されてるけど、3Dプリンタで作ったものや、レーザーカッター製のものは販売されていませんでした。1枚500円程度で販売されています。まだ流通あり。

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でも、すぐに誤算に気づきました。

誤算

1.大手企業が続々と声を上げるムーブメントが起きた。製造が始まった。

2.医療現場では、必要とされていない?ECサイトで販売もされているし充足してる?

この2点についてです。


1.大手企業が続々と声を上げるムーブメントが起きた

自分の中では、結構な衝撃だったのですが、4月17日(金)の夜に有志であつまってZoomミーティングをしているときに、続々と大企業のニュースが出てきたのです。日産、ホンダ、アディダス、バンダイ・・・フェイスシールドの製造開始!

日産は2,500個/月という製造個数が掲載されていました。まだ追いつけるんじゃないか、ってかすかに感じました。

そして、まだムーブメントが続きます。

・孫正義 80万個(利益なしで販売)

・DMM.make 亀山さん1万セット(無償提供)

・阪大のクラウドファンディング500万円のところ1600万円オーバー。高須クリニック院長も寄付

・ANAやJALも製造開始

大企業のムーブメントがこんなに続くのかと衝撃を受けました。土日は、どうやって辞めようか。言い出しっぺなのにと苦悩しました。週が開けてもムーブメントが続くので、自分たちの提供価値というか意味を見出すのが難しかったです。

週明けの月曜の夜にもZoomでミーティングしたのですが、その時に皆に「販売するのは難しいから、ボランティアとして頑張ろう」と伝えました。結果、誰も離脱せず協力してくれることになりました。微妙なラインですが、会社の設備を利用するけど、原材料は僕のポケットマネーから出す事にしていました。

誰のための、フェイスシールドなのか?と考えるようになりました。本当に必要とされているのか?こんなにムーブメントが起きているのに、医療現場の人の声を聞いていない。そこでTwitterで声をあげました。

2.医療現場では、必要とされていない?ECサイトで販売もされているし充足してる?

上記に記載したフェイスシールドは、2個1,000円。1個500円で販売されていました。僕らが作ろうとしている3Dプリンタのフェイスシールドは、クリアファイルを入れ替えて使えるのでランニングコストが安い。上記のテープ式のフェイスシールドは使い捨てだし、洗って再利用できるのか?色々な疑問が出てきました。

友人にニューヨーク在住の医師とつないでもらいました。

ECサイトで販売されているのに、本当に必要とされているんですか?と率直に質問させて頂きました。

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まとめると、

・病院側は出費よりも、備品を揃えておくことが重要

・機能面で劣らない差し入れはとても有り難い。(現在は、下記写真のようにシール式フェイスシールドを着用している)

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問題点が見えてきた。

・使い回しをする場合は、一週間使っていたが、水垢が表面に残って可視性が悪くなる。

・大事なのは、装着感、安定性、可視性。

・付けているのを忘れるようなものが理想。

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まだ問題が出てきます。

・クリアファイル案は、あまり良いアイディアではない。中心に線があるし、マスクと干渉する場合がある。

という事で、質問したおかげで、

緊急度や、何が現場で必要とされているのかが見えてきました。このやり取りは、4月17日(金)の夜に行われているものです。

この時期と同時期に、どんどん大企業の参入が決まっていきました。焦ります。大企業も必要性は分かっているのだろうか?

本当に僕らは医療の方に寄付するのが良いのだろうか?大企業も医療現場に寄付するし、もっと長期的な視点で見たほうがいいんじゃないか?

僕は18日(土)にマスクを2,000枚個人で購入する事を決めて、地元(小金井市)の飲食店やスーパーに寄付する事を決めました。小さいですが、自分が出来る事を考えた結果でした。フェイスシールドを作れないかもしれないという焦りもあったので、「金で買えるものは買ったらいい」と短絡的に思ってしまったのかもしれません。

19日(日)僕は有志メンバー5名に対して、商売するのは辞めようと提案しました。

会社では、取締役をやっておりますので、常に戦略を考えています。やはり差別化すべきですし、人と同じ事をやっても意味がありません。

大手(巨人)がマスを攻めるのであれば、僕ら小人は地元や自分たちのお客様に何が出来るのかを考える事にしました。

結論は、

・地元の小金井市に寄付する。

・取引先の飲食業やスーパーマーケットに寄付する。

としました。しかし、ずっとは寄付し続けられないので、取引先にはサンプルを送ってあげて必要があれば、仕入れコスト程度で購入してくださいと提案するかもしれません。

なぜ、このような結論に至ったのか?

まず「地元に貢献する」という観点から言うと、僕らが今もコロナウィルスに感染せずに元気に仕事が出来ているのは、政府のおかげであり、地元のライフラインを支えてくれている、飲食業やスーパー、薬局さんたちあっての事だと思うからです。小金井市に寄付する際には、もちろん市役所で使ってもらってもいいと思いますし、医療現場や、飲食、スーパーなどで利用してもらってもいいと思っています。必要な方に僕らのフェイスシールドを利用してもらいたいです。

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僕らのフェイスシールドは、悪戦苦闘して、3Dプリンタではなく、レーザーカッターで作る事にしました。この辺からは、会社っぽい話になってしまいますが、起案者のまこちゃんは、家に3Dプリンタがあり、1個出力するのに、大体1時間かかります。1日製造できる個数が6個程度です。

このタイプですね。僕らは仕事もあるので、昼間製造しているわけにもいかないので、何か良い方法が無いか考えました。調べていると、何層にも重ねて出力する。クロスして出力する。色々な方法が見えてきました。だけど、先程のニューヨークの医師の方が言っているように、「装着感、安定性、可視性」が重要です。1日12H付けっぱなしでも気にならない装着感が必要です。

他でも色々と作られているとは言え、自分たちでもキッチリと作って、装着してみないと、医療現場の人からしたら変なのを送られてきても困るだけです。製造に関する工夫は、約4日間かかりました。既に大阪大学からも3Dプリンタのデータは出ておりましたので、こちらを参考に各社製作しています。

これから、取り掛かろうとしている方は上記を参考にしてください。

僕らの会社にある3Dプリンタは4つ。一日かけて製造しても、沢山の人に貢献できないと4月17日(金)の時点ですぐに分かりました。例えば小金井市に寄付するにしても10個では足りないし、最低でも100個は必要だよなと考えたわけです。100個つくるのに100時間か。4台稼働させても25Hもかかるし、誰が製造するんだ。という問題になります。

この草の根運動で始まった、3Dプリンタを使った、フェイスシールド作りは、関わっている人は分かると思いますが、非常に費用がかかります。

金額の例を伝えると、

・3Dプリンタの原価20~80円(フィラメントによる)

・1時間で1個製造、1個で送るわけには行かないので5個単位で送っても下記の画像のようにかさばります。送料1,000円程度するでしょうか。

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5時間かけて作った5個の3Dプリンタ製のフェイスシールドは、材料費50円×5個+梱包材100円+送料1,000円=1,350円かかります。

もし時給1,000円だとすると、5時間で6,350円になります。1個あたり1,270円の製造原価になります。これを、いくらで販売するのが適正なのでしょうか?無料で続けるのでしょうか。

ボランティアの草の根運動は皆で出力して、タダで配布しています。

(FB上で「3D PRINT FACE SHIELD」というグループなどボランティアが多数存在します)

ボランティアでのお金の持ち出し(自腹)は、いつか力尽きると感じた瞬間でした。やはり1個300円とか500円とか1,000円で買ってもらえないとそもそも割に合わない。

そして、上記の病院から買ってもらえるだけのニーズがあるかは不明。

困ったなーーーーー!!!

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(ゴミとなってしまった、3Dプリンタで作られたフェイスシールドたち)


とにかく、生産性も上げる必要があったので、社内で保有しているレーザーカッターを使う事にしました。1枚のアクリルの板から15枚印刷できるではありませんか。

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50分弱で15個を製造できます。3Dプリンタでやるよりも15倍の生産力です。ただし、このアクリルの板は1枚5,000円します。時間は短くなったけど、原価が上がりました。

・材料アクリル板5,000円→15個→1個333円(350円とする)
・緩衝材1郵送100円
・10個セットで郵送すると1,000円くらいの送料
合計)5個で1,750円+100円+1,000円=2,850円の原価

時給1,000円だとすると1時間なので、3,850円で1個あたり770円。

先程の1,270円に比べて大分安くなりました。

送料があると分かりにくいので、送料を抜いた原価で計算しなおします。

時給は1,000円とさせてください。15個作った時で比較します。

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3Dプリンタ製とレーザーカッター製の原価比較

3Dプリンタ 1,050円/1個(材料費50円×15個+1,000円×15H=15,750円)

レーザーカッター 400円/1個(材料費333円×15個+1,000円×1H=6,000円)

時給いれないで部材だけで計算しろとも言われそうですが、かかった人件費も大事な費用だと思うんです。ここに送料とか、かかって利益を載せて販売するとなると、本当は1,000円/1個とかになるんでしょうね。

細かな計算をしてしまいましたが、僕らはレーザーカッターで作る事に成功し、小金井市に寄付ができそうです。受け取ってもらえるか分かりませんが、とりあえず連絡してみようと思います。

前編の最後に

まさか、自分で会社を経営しているのに、自分の会社経営以外でドキドキしたり、頭をフルで回転させる経験をするとは思ってもいませんでした。たいした金も使っていないですし、何にも負けたわけではないですが、せっかく自分たちも参入するのであれば、価値を出したいと思ったわけです。

医療現場向けには巨人(大企業たち)が対応(寄付や販売)してくれる事になる事でしょうし、小人は小人らしく、「鋭く細く」が基本だと僕は常に信じているので、自分の身の回りや取引先の方に喜んでもらえるように、このフェイスシールドを利用してもらいたいと思います。

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後編も既に書き終えましたので、明日の夜にリリースします。

・Afterコロナ、Withコロナ

・フェイスシールドは誰に必要とされるようになるのか?

・フェイスシールドの配布計画

・ボランティアなのか?ビジネスなのか?

・ボランティアとビジネスの間、社会との適切な距離感の考察

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