「喉が締まる」のはなぜ?

(旧サイトの「オンラインレッスン」のコラム記事のアーカイブです。2017-08-29の記事です。)

トランペットを吹く人が抱える問題のひとつであり、よくご質問をいただくのが、「喉が締まってしまう」問題。

ここでは、それがなぜ起きてしまうのか、そしてどのように対処したらよいのか、私の考えを書いてまいります。

「喉が締まる」のは、原因か、それとも結果・症状か

まず考えてみたいことは、「喉が締まる」ということが、それ自体「原因」なのか、それとも、他に原因があるために表れる「結果」や「症状」なのか、という点です。

結論から申し上げると、私の考えは、それは結果・症状だ、です。

仮に、「喉が締まる」のが原因でありそれ自体で解決される問題だとすれば、「喉を開く」とか「喉が締まらないように喉を維持する」などの対処によってこの問題の解決が期待されます。

しかしながら、おそらくこの問題を抱える多くの人が経験上よく理解していることは、結局それはできない・それでは解決できない、という事であろうと思います。「喉を開こうとしているのだけど音を出すと締まってしまう…」「喉を開こうとするとかえって喉に力が入ってしまう…」などと。

このように、喉の締まりそれ自体が原因だと考えてそれに対する対処をする、のではうまくいかない場合、私たちは考え方を変えてみる必要があります。
そして実際のところ、私は、喉の締まりは原因ではなくて、他のところに原因があってそれによって生じている症状である、という理解をしています。

考えられる原因

私の考えでは、「喉が締まってしまう」問題は、次のような事が主な原因となり、それによる結果・症状として生じています。

1)使っている息の流れが乏しい。
息の流れが乏しいと、その乏しい息を使って音にするためには、息の通り道を狭めて息の流れを作り出すことになります。これは無意識的に身体が行う反応です。この狭められる大きな地点のひとつが、喉となります。乏しい息の流れを、喉を狭めることによって(無意識的に)補っているわけです。

逆に、息の流れが音を出すのに十分な状態であれば、息の通り道を狭めることなく、自然に開いたままでいる(開く、のではなく、開いたままでいる)ことができます。

2)使っている息の質が硬い。
出している息の質として、硬くストレスのある息、押し込んだような息の時、喉は締まる傾向にあります。

一方で、息の質が、ストレスなく自然な息である時、喉は自然に開いたままです。

よく見受けられるパターンは、「息を出す」という意識のあまり、「息を出す=ギューっとストレスのある息を出す」という思い込みに陥っているパターンです。

しかしながら実際は、ギューっという感じがなく、その反対であればあるほど、息は自由にものすごくよく流れていくものです。そしてその時、喉は締まることなく、自然に開いたままです。

3)音のセンター(ツボ)で吹いていない。
息のこと、唇のこと、などが良い状態であっても、楽器のツボで音を吹いていない限り、「ウッ」と喉が詰まる感じになってしまいます。

音のセンター(ツボ)とは、楽器が物理的に最もよく共鳴するポイント、です。例えば真ん中のソならソの、ダブルハイBならダブルハイBの、それぞれの音で最もストレスなく楽器が共鳴するポイントがあります。そのポイントで音を出している時には、息もストレスなく流れ、変な抵抗を感じたり喉が詰まる感じはありません。

一方で、ツボからズレたところで音を出している状態と言うのは、楽器が共鳴しにくい高さで無理矢理音を発生させている状態ですが、それによって、息が流れづらかったり抵抗を感じたり、喉の締まりを感じることになります。

ツボかそうでないか、というのは、白黒はっきりしたことと言うよりは、グラデーションのようなものです。ツボからのズレが大きいほど、不都合を生じ、ツボに近ければ近いほど、ストレスなく音となります。

主な解決策

私が提案する解決策は、主に次の2つです。

1)柔軟な呼吸とストレスのない息の流れを知る
一旦楽器から離れ、呼吸と息を自然な状態に戻してみましょう。
本来、私たちの呼吸はストレスなく大きな深いもので、それが自然なものであったと思います。それが、大人になるにつれストレスにさらされたり、あるいは「呼吸法」を学ぶことによってむしろ、不自然で不自由なものになっていくことがよくあるかと思います。

ここでは簡単な説明にとどめますが、ごく自然なリラックスした呼吸を取り戻してみましょう。
疲れ切って帰宅しソファーに「ふぅ~~」と腰かけたり、または極寒の屋外から帰宅し暖かいお風呂につかったときの「ぷは~~~」というような、完全にリラックスした状態を思い出してみましょう。
そのまま、まずは小さな呼吸であっても、身体が柔軟でリラックスしたまま、息をゆっくり吸い、ただ吐き出しましょう。吐き出し方をコントロールしようとする必要はありません。ただストレスなく息を吐きましょう。
そこから慣れてきたら、少しずつ、そのままの自然呼吸を大きくしていきます。結果的に大きなあくびと大きなため息のような感じに近い呼吸です。
かなり大雑把ではありますが、これで基本的にリラックスした大きな呼吸に近づき、トランペットの演奏も基本的にはこの延長で行うことが充分に可能であろうと思います。

基本的な呼吸に自然さを取り戻したら、息の「流れ」につなげてみましょう。
自然に大きく息を吸ったら、ストレスのないまま、息を遠くまで流すようにしましょう。言い方を変えると、息の動きが自由であるようにしましょう。息が近くで停滞する感じや、息に動きがない状態の、反対です。ただし、もちろん無理矢理に息を押し出す感じではありません。ストレスの無いまま、スムーズにフリーに、遠くまで息を流すようにしましょう。
このことは、口を軽く閉じて息を流す、という単純な練習で行うことができます。

ストレスなく息を遠くまで流すことに慣れたら、楽器で、同じことをして慣れましょう。音はまだ出さずに、息だけ流します。

それに慣れたら、実際位に音を出してみましょう。まずは出しやすい音域から、ここまでの息の流れを保ちながら音にしていきましょう。

より詳しくは、「息の流れと質」「呼吸の出発点」「息の練習」のページをお読みください。

2)音のセンター(ツボ)を知る
上述の通り、息や唇の状態が良くても、ツボで音を鳴らしていないと喉は「ウッ」という感じに締まってしまいます。
それを避けるために、楽器がストレスなく共鳴し、喉も締まることのないポイントである「音のツボ/センター」を知り、そこで吹くことを基本にするようにしましょう。

詳しくは、「音のセンター・ツボ」と「音のセンタリング」のページをお読みください。

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