ビブラートのかけ方(導入)

(旧サイトの「オンラインレッスン」記事のアーカイブです。2017-12-07の記事です。)

トランペットでビブラートをかける方法について、簡単にご紹介します。

トランペットでビブラートかけるにはいくつかの方法があります。

代表的なものは、
A)右手を柔らかく前後に揺らす
B)下顎を上下に動かす
C)息自体を揺らす(お腹でかける)
の3つです。

この3つのうち、A(右手)・B(顎)と、C(息)との間には非常に大きな違いがあります。
A・Bでは、息はビブラートをかけない時と同様に、基本的にまっすぐです。一方、Cは、息自体を揺らすものです。
息自体を揺らす事は、音の発生の原動力自体・音そのものの根幹を揺らす事であるために、それに起因する不都合を生じることがあり(音そのものの安定性を失っていく・安定した音を出せなくなっていく、など)、個人的には避けた方が良いと考えています。従って、ここではこの方法の説明は割愛させていただきます。

では、以下にAとBの方法について、簡単にご紹介致します。


A) 右手を柔らかく前後に揺らす

音を伸ばしながら、右手を柔らかく前後に揺らします。これにより、マウスピースのプレス度合いが微妙に増減することになり、ビブラートがかかります。

揺らし方が固いとあまりうまくかからないでしょうから、柔らかく揺らしてみると良いでしょう。

まずは出しやすい高さの音を伸ばしながらやってみるのが良いと思います。

このような感じになります。

この方法は、音の出し方そのものが非効率で力任せであったり、そもそもマウスピースのプレスが強すぎると、できません。いくら右手を揺らしても、音はあまり揺れないでしょう。

音の出し方そのものが効率的であり、余裕がある状態であれば、右手の微妙な揺らし具合に合わせて音も揺れるでしょう。

これは余談ですが、インディアナ大学に留学中、エドモンド・コード先生のレッスンでは、ウォームアップの時に(例えばチコヴィッツのパターンなどの時に)このビブラートを使ってみる事をアドバイスされました。なぜなら、この方法のビブラートのかかり具合によって、良い状態で音を出しているか、必要以上のプレスや力みに頼っているか、よくわかるからです。

B) 下顎を上下に動かす

音を伸ばしながら、「アウアウアウ」と言うような感じで、顎を上下に動かします。動かすとは言え、実際は少しだけで、外見上はあまりわかりません。

こちらも、まずは出しやすい高さの音を伸ばしながらやってみるのが良いと思います。

「アウアウ」の顎の動きに合わせて、音も揺れます。

このような感じになります。

https://youtu.be/UmgUr1yavcQ




■どちらの方法を採用するか

右手と顎と、どちらの方法を採用するかは、基本的に個人の自由だと言えるでしょう。私の知る限りでは、一流の奏者たちの間には、ジャンルにあまり関係なく、どちらの方法をとっている人もいます。

例えばモーリス・アンドレやアレン・ヴィズッティは右手でかけていますし、ウィントン・マルサリスは顎でかけていると思われます。

私個人は、顎でかける方法のみを最初に教わったため、それに慣れており、右手でかける方法は個人的にはほとんど使っていないのですが、一応、曲の中で両方の方法を実演してみました。右手の方法、顎の方法、の順で同じフレーズを演奏しました。


■音のセンターを軸として揺らす

どちらの方法を採用するにせよ、音のセンターから外れたところを軸として揺らしてしまうのではなく、基本的には音のセンターを中心軸としてその上下に揺らすのが良いと私は思います。

次の動画は、
1)センターでビブラートを使っている状態
2)センターを外れて上でかかっている状態
3)センターを外れて下でかかっている状態
4)再びセンターでかかっている状態
を実演したものです。


■練習

練習方法としては、

1) 出しやすい音をのばしながら、ゆっくりかける

2) ゆっくりから、だんだん速くしていく

3) メトロノームをつけ、60〜80にセットし、4分音符、8分音符、3連符、16分音符のリズムでかける

のようなプロセスを経て、まずはとりあえずビブラートをかけるという事に慣れることができると思います。

その後、

4) フレーズの中の長い音にビブラートを使ってみる

5) 色々なプロ奏者の演奏をビブラートに注目(注耳?笑)しながらたくさん聴く(トランペットに限らず)

を何度も繰り返しながら、最初はわざとらしく不自然なビブラートから始まると思いますが、経験により次第に自然なものになっていくでしょう。

ビブラートの波の速さ(細かさ)、波の幅、波の速さや幅の変化、というものは、音楽的な文脈やジャンルやスタイル、あるいは国や地域的な背景からも、実に多様です。

■ビブラートはあくまでおまけ

最後に言及しておくべき事は、ビブラートは、いつでもオン・オフできるようにしておかなければならない、という事です。

よく陥りやすい事は、ビブラートに慣れていくと、ビブラートに頼り、いつの間にかまっすぐな音を出せなくなっていってしまう、という事です。そしていつしか、ビブラートが、ごまかしの手段になっていってしまうのです…。

これは良くないですから、いつでも、あくまで安定したまっすぐな音が基本であり、それにビブラートが加えられる、という状態から外れないようにする心がけが必要かと思います。いつでもビブラートなしの音にも切り替えられるように。

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