はじめに

(旧サイトの「オンラインレッスン」記事のアーカイブです。2017-02-09の記事。)

はじめに

この「オンライレッスン」をご活用いただくにあたり、はじめにお読みになりご理解いただきたい、いくつかのこと。


■「オンラインレッスン」が目指すこと

この「オンラインレッスン」が目標とすることは、トランペットを演奏される方が、無理のない自然な音の出し方をスタートとしてそれを演奏技術へと発展させていくためのきっかけを提供することです。

良い基礎は、アマチュアとして演奏を楽しまれる方にとっては、演奏や音楽の楽しみや喜びを最大限に享受するために、永くトランペットを続けていくことができるために、技術的問題に行き詰った時に立ち返りその解決の糸口となるために、また専門的なレベルを志す人にとっては、芸術としての表現や技術的な到達範囲の可能性を制限することなく、高度なレベルへと至るために、非常に大きな意味を持つ領域であると私は考えています。

■文字情報の限界と弊害

ウェブサイトや書物のように、文字で伝えることのできる情報には、どうしても限界があります。
とりわけ、トランペットの演奏は、音や身体動作のような、文字では直に伝達することのできない要素が大きく占める行為であることを踏まえると、このようにウェブ上で文字によって演奏技術に関する解説をする事には一定の制限があることを、情報の発信者としての私も、受信者としての皆様も、前提として理解しておく必要があります。

このことはさらに、ウェブ上での演奏技術解説が、弊害を生む可能性をも示しています。そもそも情報の質が低い場合はもちろんのこと、高い質の確保された情報でさえ、文字で伝えることのできない部分はそぎ落とされた解説となるため、情報発信者の意図しない誤解が生じるおそれが常にあります。

ですから、書かれたことだけを鵜呑みにはしないこと、そしてご自身の頭と感覚によって、書かれたことの意味をいつも柔軟に検証・想像することが不可欠となります。

■私自身にまつわる限界

ここに書かれることは全て、私の頭の中にあることですから、その点での限界も抱えています。
私の知らない事、経験していない事、到達していない領域の事について書くことは残念ながらできず、したがって、至極当然ではありますが、ここに書かれたことがトランペットの基礎に関する全てではありません。

私自身も日々学び、日々新たな発見をし続けている人間ですから、年月が経てば、これを書いている今とはまた違った洞察へ進んでいくことと思います。

もちろん、私自身がこれまでに経験してきたり指導の現場で目の当たりにしてきた、指導上の弊害(特に「アンブシュア」や「呼吸法」、また、音を無理やりにでも作り込んでしまうやり方)を踏まえ、最善を尽くした情報提供に努めます。

■「答え」は記述されない

残念に思われるかもしれませんが、この「オンラインレッスン」には、「答え」のようなものはひとつも記述されません。

演奏技法を習得していくことは、「こうすれば良い」という「答え」の通りに何かをすればうまくいく、というものではないと私は考えます。
答えは自分自身の脳と感性と感覚で見つけていかなければなりません。自分自身をフルに使っていかなければ、どこからもいつまでたっても、答えはやってきません。手っ取り早く「答え」のようなものをもらいその通りにやればよい、という思考態度では、本当に身になるものは残念ながら見つかっていかないでしょう。

言い換えれば、「答え」のようなものを与え、それが正しいと押し付けることは、むしろ上達と可能性を制限することになると私は考えています。
自らの感性と感覚を使って見つけていく、という機会をむしろ無かったことにしてしまうおそれがあり、即効性はあるものの、ある程度のレベルのことまでしか到達できない、見かけ上の成果におわる結果となることを、私は懸念します。

ですから、「オンラインレッスン基礎編」に記述されていくことは、こちらから与える「答え」ではなく、皆さんが自分に合ったそれぞれの答えを見つけ適用させていくためのガイドとなる根幹です。

■最後に

トランペットの演奏は、楽しみとこの上ない喜びをもたらしてくれると同時に、その習得過程では、袋小路に迷い込むこと、思うように上達できないこと、を、誰もが経験していくことと思います。何かを追究するということは、そのようなことであろうと思います。

しかしながら、時に直面する苦悩が、光の見えない苦悩のままで終わるのではなく、小さな手がかりを見つけながら喜びへ向かうものへと変容していくように、そして苦悩を経た後の音と心が、さらに豊かな喜びを享受することができるように、それを願い、この「オンラインレッスン」は存在します。

皆様のトランペットの喜びに微力でも貢献することができましたら幸いです。

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