~2/10 サイレンススズカ について

サイレンススズカの、骨折した姿を観ていた。光に反射した身体から、すべての丁寧語が抜け落ちた。古代の季節は、浅い土のなかにも埋もれている。重力と、恋人になろうと話したあとだった。肉筆だけで、封じ込められないもどかしさ。詠嘆を、できるだけ連れていくから、遺骨は風に、混ぜてほしい。

遺骨から尊敬が、生まれ続ける。誰もが、泳ぎきっていないのに、サイレンススズカをあきらめなければならない。夕方を、化石にしてしまった。地上からも離れて、複数の星座と手を繋ぐ。駆けることで孤独を、勝ち取ろうとした颯爽の輪郭。いずれあのときの風を装いながら、無関心が通りすぎるだろう。

光景は未来を含んだ過去だ。嘘でもいいから謝り、背中で感じた人の動悸をゆるしてほしい。サイレンススズカは、地球からの続きだがその名前は、宇宙に近い響きだ。昨日の暴力の衝動を潜ませながら、偶数を捨てて、歩きだすことができない。虚空を縫う摩擦の音はもう、この惑星のどこからも聞こえない。

一斉に鍬をうちふるう為の歌声が、別の惑星から聴こえてくる。サイレンススズカは、元気にしているだろうか。土壌の水捌けを、たしかめる老夫の背中を思い出している。口のなかに、細やか悪戯をため込んで駆けてくる。吐息をやわらかくしながら、この世の風をのみこむ惑星の土にかえっているだろうか。
風に、尊敬を、含ませるかエーラ


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