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人でありたいならば、馬に内臓を蹴られる必要がある。
生き残った最後のネアンデルタール人は、自慰も忘れて、刃物を研いだ
絶滅危惧種が、水辺で、虚空にとけようとする。次の語源を、待っている。
最後に、役割を考え、罪悪感を、排泄することで、妥協した。
白亜紀からつづく山土に、いくつもの受精があった。遠くの人間の、静脈が、ほぐれているのか。
林床の、ネアンデルタール人は、消滅した。陽光にあたり遺伝子が、ひらがな、に落ち着く。

霊性を、たどる蝶は 骨を、吹く 岩陰に、排泄された跡がある。やがて蝶が、群がる 生きるうえでの、美しい誤読がある 季語に触れるまえに、蛍光灯へむかう このくらいの鼾なら 異性にも許されるだろう 捕食される恐怖の、喜びを 文字の、乳房に隠している

骨折という、光の行為によって 古生代の植物は、育った 誰の、無関心が、午後をつくりながら 薪が、丁寧に積まれたのか 新雪の感情が、やさしく木化する 雨宿りは、寓話の古着を、纏いだす あけびを、いくつ見つけたかを 競い合ったただしい東北のありかた 娼婦の、手つきは、古代から 変わっていない

他人に、文章の作法を、指南されても 血液には、溶けそうにないから 屠殺で、流れた血で、口を濯いで 失われた文脈を、探している 胃袋ごとに太陽を、飼いながら 湿った母音を、吐き出す牛の 発音よりも、温い唾液 来るな、と怒鳴られた鶏小屋の あの時の鼬の、仕業みたいに 無数の、脳を吸えればいい

他人の尻のほうに、ジレンマがあって 雨宿りとは、関係ないところから 一日遅れになる、新聞を広げ 誰かの懐妊と、即刻おとずれる忘却の 箇条書きを、愛していました 昆虫館で見た、まず突き刺した 先端からでる物質で、他の虫の 内臓を、溶かすという大型の虫から 注入された水底の、ジレンマが 捕

祈りとは、蝋燭で照された皮膚を、眺めることでした。春植えの、花壇の前で、網膜のままにしか、信仰できない子どもたちが、作文の結論を急ごうと必死でした。夕刊にあらわれた横領した者の、子どもの祈り方。酸素の色が、不意に見える気がして、唱える詩の、一文の行間には、勝手に文脈が育つ。

隣家は田植えを一日、早く終える、と恨み言を唱えながら、隣家の井戸を無断で使う。食い物を、前にして体液の、呼び名が変わる。誰かを、嘲るための一粒が、口から離れない滴りになっているが、やはり少し馬鹿にしている。夏風邪で、死んだ幼かった大叔母が、堤の縁で手を振っているから、こちらも手を振り上げ、力の限り、ばがごのそっちゃそっちゃ、と叫びながら尿を垂れ流した束の間、沈黙へたどり着いた後に今度は、一刻も早く、田に水を引く構えの祖母だ。

季節風の、体毛をくすぐる口約束が、植物の種子を、こびりつかせて、横書きのエッセイを、描きはじめる。自分の意志でもあるから、鍵括弧をつけるまでもない会話調。雨に、どれほどの死者が溶けているのかわからない。いくつもの尿が濾過されて、言葉がインクとして、落とされるのか。

夭折した詩人が、売られている。今頃、何に慰められたいのか。背表紙が、日に焼けて、魚のほうが、安定して直喩になってくれている。他人の病気を、美しい、とは思わない。赤い不安を、速記する筆の動かし方。野焼きの煙みたいだからといっても、噂話の域をでないから、白い砂をかけて誤魔化す。

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