〜4月24日


辻褄を、原人は巻き貝へ仕舞い込んだ。貝の化石は、河川を含ませながら、誰かの空耳が、芽生えるのを待った。河口には、論理が堆積しつづけて、そこから過去が少量、産まれようとする。だから空耳は、

片隅で、誰もが聞いたことがある記憶と重なる。

異性のアトピーの皮膚から、夜気が群れはじめる。



記憶の河を、無声映画が、流れている。そんなふうに疾病したい。

影が放埒な長さでのびきるとき、甥の恋人が、速記者だったらいいと思えた。詩が、空耳から生まれつづける。水面に、指紋を、溶かす。

火がほんの少し、未来の指先を灯すという今なら、自冒を美しいと、考えていい。昨日の、濡れた風のせいで、まばたきを忘れていた。

蔓性の植物を、皮膚の下に、飼い慣らして、古い貨幣のように、微睡んでみる。手帳に、はさまれていた偏西風が、倒置法の予熱を、いくつも躱しながら、通り過ぎる。

歌のほうにこそ、自由があったと言う。父はつま先のほうに、河川を隠していた。息子の私は、夜にだけ使われる灯油だった。肉親の愛情を、季節が通り越す。父の過呼吸は、とても大きく、その戸惑いを立て掛けることで、本棚が満ちた。どこかで法律が改正される。地図から果物の、においが立ち込める夜、


葉脈に詰まる言葉を、加湿してやる。樹木の視線で、直線的に見上げる青空は、肉体に生臭く癒着し、身体ごと燃える石炭を未然形の血の中に放り込んでしまいそうになる。

異性と手をつないだ記憶を、たどる。自分ではない方の、手の人にかかる重力のかたちを想う。不必要に過度な、握力と腕力の、平均でないことのやさしさ。いつか磁石にこびりつく砂鉄のように、赦しを乞いたい。この手から、ひと続きにつながる異性にもある臓器のなかに、砂の粒にも内包する時間を隠す。

夜のほうが空気が多かった。夜気が結晶しはじめると骨は、井戸水のように少し眠り、肉体は植物の根に犯される。瞬きのたび、窓の指紋から落葉樹が、はみ出してくる。毒のように、やわらかく今、嘔吐したら自分は、述語そのものだ。自分を腐葉土の下に沈め、現れ出たに、帰ることができるか。

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