虚空との対話

「擬人化は人の都合ではありませんか」「言葉で捉えるしか方法がありませんし、言葉は人の都合で生まれています」「それであなたの女にまでなる、というのは些か図々しいと思います」「同時に何か所にもおいでになるので困り果てておりましたし、それに一ヶ所に、どの時間にもいらっしゃるからです」「理由になっていませんし、もともと捉えどころがないという意味です」「とりあえずわたしの脇の下の空洞を『タキコ』と名付けてもよろしいでしょうか」「なぜタキコなのですか」「初恋の人の名です」「スーパーキモいです」「自分のタキコとどこまでを言っていいのか、です」「掴みきれないから虚空だと先ほど申しました。ただ在る、という状態の理由になるのがわたしの務めなのです」「でもさすがに多喜子さんの脇の下は多喜子さんのタキコで、わたしのタキコとは言いがたい。わたしのタキコはどこまでなのか」「あなたはわたしを脇の下に飼おうとしているのですか」「タキコは、多喜子さんの脇の下もくぐり抜けて、その続きと考えられなくもない。わたしの、と所有格を薄く湿らせていいのはどこまでなのか気になります」「この上なくキショイです」「タキコは時々、いるかいないかわからなくなりますね」「雨がふっているとき、わたしはついでにいるような気がしています」「雨は新たなタキコを一瞬で生み出す連続ではありませんか」「そうして新しいわたしに付着して、引き連れながら滴り落ちる」「しかし雨はわたしの知りえるタキコを網羅してはおらず、刹那的にすれ違うだけのような気がします」「葉が揺らめくとき、わたしは内緒でそこにいます」「過去のタキコを打ち消しながら一瞬で、未来のタキコにうまれかわっているのにですか」「そうして通りかかる小鳥には積極的に未来を提示し続けています。すると小鳥は、先だけをみつめて羽ばたくようになりついには将来の、空間の滅亡まで見定めて飛んでいます」「何も無いように、今に生きていないのですね」「あなたの、異常な主観的視点と、表現する時はその奇特な文体と、それらの絶妙なブレンドによって、存在の有無、あるいは大きくなったり小さくなっりするのが、わたしなのです」

以上、ココア共和国へ投稿した作品です。
これは、改良の余地が、少ないので、このまま、掲載いたします。


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