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日記を開いてうつ伏せにする 夏が猛暑だったからといって 暖冬とは限らない 過去を含んだままの肺が 未来の空気を吐き出す 大きい息の塊をもった 誤差のような人が 早めの時間を連れていると 言葉に引き止められるが どこまでも書きかけの手記で 先送りがまだ到着しないから 寓話をあてにして続ける

空耳は、別の空耳を探す。空耳の快活さで、神経は身体の外にはみ出すことがある。空耳は、齧歯目のみる夢に繋がる。齧歯目は夢のなかで、新しい招待状の挿絵が、多年草に変わっていたことを尋ねた。休暇を、あの手紙の中の時間で過ごしたことを忘れない。空耳から生まれる後悔を、空耳に重ねる。

押入れに、閉じ込められて、不安をつくらなければならなくなった。誰かと手を繋ぐとき自分が、木陰でできていると思っていたから、押入れの暗さ、は自分でもあったが、木陰は誰か、と陽射しを分け合った後、生まれた闇であるので、その分、ほろほろと、湿った感情を、戸の隙間の、薄い光にこぼした。

畦でする呼吸は、水田が、吐き出されたあと、遠くの他人に、薄い空耳として、たどり着く。その吐息に、皮膚病の、記憶が自然と、混じり合い、爽やかな悪意が、湿度のように、存在している。人と、向こうの人々。小さな眼球で、パレットを、濡らし、錆びたネジを、まわす音の、色を生み出せるだろうか。

他人の、排便を見たことがある。部分は、全て、より大きい。大体の約束は、具体的でなくてよかった。架空の彗星に、名前をつけてしまってから、骨折の痕から、発光するだろう。空咳。閏年。軽やかに咽を整えて、羊を飼いたい。犯罪者の、前屈みを、取り入れたのはいつか。本日の体育、見学いたします。

本屋には便意が、転がっていて、それは物語の幕間に、こみ上がる。消費税の、手前にある緊張と、レジ袋のなかの異性の乳房までの、あらすじが、優しい嘘の表情を、孕んでいる。夏のはじめの、人間関係。空耳を、身体に入れて、文脈からこぼれた一文を、立体にするために、豊かな隠語が、覆っていく。

写生会で、描かれた一艘の漁船は、成長した。黒煙。過呼吸から、すべて脱走する。無風を、引き連れた、悪戯だった。隠喩が、スクリューによって、かき分けられて、波をうみだす。堤防沿いの、子どもらが8ヶ月後にも、それに上手くのる。磯と沖合の地図の色の、塗り分けた所に、踵からまた飛び込む。

納屋の軒で、根菜を吊るして干す。昔の仮名遣いよりも、古い紐の括りかた。河口のように、まどろみながら、路地裏の、婦人科から、漏れる常夜灯が、屋号を、霞ませる。喘息の発作に、神経がはみ出ていくが、一心に理性でもどす。近親者に、許嫁がいて、正確な、土葬の仕方を、背負っている。


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