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辞書の、文字から雨音がする。午後の、言葉たちは、濡れた欠片だった。牛の、破れ目から、植物の一節が、芽をだそうとするとき、影踏みで遊んだときのようにとても感覚的な少女が、自分の名前を、逆さまに唱え続ける。静脈の色を、幾筋もためこんで、漁のための歌の、嚥下を繰り返し、駆けている。

アトピーは、宙に浮くもの。午睡の、私はわたしと手を繋いだ。はじめに、手を繋ごうとした私はすでに、余白になっている。肌は静かに、動物であることを、拒否している。爪をたてることはわたしが、自分であることの責任を、一枚ずつ放棄すること。尖った指先で根菜の種子を、皮膚に蒔いてみたくなる。

嘘の、はじまりを忘れないために、つき続けなければならない新たな嘘が、胡桃の殻のなかで、割れることのない言葉として、落ち着いてほしい。その時の唾液は正直に、蒸発が早くなり、青空として、生まれ変わるだろう。秒針よりも正確に辻褄を、尾行する。瞼や口許に粘る、別の脈絡を、丁寧に拭う。

島民の、骨折から無数の、蜂鳥が飛び出し、夢は、離島から、生まれているとわかる。風邪は、午後の陽射しにも、含まれていて、明日の痰が、記憶を濃縮した色に、染まろうとする。夕方の微風は、祖母だろうか。肌を訪れる、田植えのための言葉には、幼い子どもに、ただしさを求めない口調があった。

農村の突き指で、畑の土ができ始める。動揺から、立ち戻った散文詩が痛みを撫でた。地面に血が滲んだが、春休みには落ち着いて、血から孵化した蝶が、時間を止める。責任。アキレス腱が、行方不明にならないように地球に、静脈を繋げてみる。大きな受動態は、軽くない痛みを、化石に生まれ変わらせた。

田畑を、少しずつ浴びて孵化した。窓ガラスの影が、日に日に濃さを増す。夢でみた農免道路では、喉の渇き方が同じだった。土手を境に、はみ出した脈絡が、亜種を繰り返しながら、水辺の論理として、追われている。溺死に耳を済ますこと。具体例が化石になるまで、性についての冗談で、ふざけてほしい。

耳鳴りを追って、ハクビシンが、化石の脈絡につながる。透明に、排泄することが、動物が存在することの、あらすじなのかもしれない。水の、理由を求めて、身体を澄ます。自分が、他者である豊かさで溢れているから、自分の手足でさえもそっと、自分から離れて、木々のあいだが、所有している。

風に、尊敬を隠して、噤む。何代も直系でない子どもが、色のついた摩擦で産まれている。図書館の奥で、饒舌な犯罪者が、故郷の恋愛のかたちを変えようと、真昼の頭痛で、会話する。伊達政宗に滅ぼされた家系のことを考えていい陽射し。親戚は知らずに、身体のなかに入りこみ、骨、の字にかわっている。

水彩画のにじみが、霊の裸とつながると、にわか雨の目的が、水族館で視られるようになる。子どもの魚だけ、あつい息を、吹きかけた窓に、指で不安をなぞっていい。酸素に含まれる存在の責任を、しずかに奪いあう。直喩が、最後まで水に溶けることがなくて、例えば曖昧から、金属の輪郭を描こうとする。


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