~2/21

虚空に、あやまりたい。給食袋の忘れ物が、光のように呼吸している教室があって、類推を求めすぎる先生の、眼鏡がまるい。話し方は、述語の数が少ないから理解が遅れた。傷つけあう言葉しか知らなかったのに、少年は同い年の、黙読の呼吸に囲まれて、名前用の小筆を使い、小刻みに女の子を呼んでいた。

魚卵から自分が、産まれることを想うと人工の、夜が訪れる。辞書に、触れる。一人称の項が、ない。本の装丁について言い争った人が、肉体労働を尊敬するようになった。自分も母の胎盤を剥がして、出血させている。脊椎を、そっと森に置き去りにして、少しづつ自分の臓器を、砂で隠さなければならない。

冬の言葉が、方角を見つめている。去年の雨季は、遅筆で、掌編が仕上がらなかった。アトピーの皮膚は、季節からの手紙だ。幼いころはこの肌で他人と、静脈を繋げていけると想っていたのに、輸入された知性で、それを拒まれた。精霊が、散り散りに出稼ぎにいくので、覚えたての送り仮名が、少し遠い。

呼吸も、風景の一部といえるだろうか。夕方の天気雨が、少女っぽい決心のように見えて、不思議だった。綴じるほうの鉤括弧をいつも、容易に使える軽さ。時計は、正確によまれるとじきに、生活の点描のいくつかを、他人のように指し示すだけだが、本当は自分の死後の、腐乱した物語まで知っている。

色盲を、食う鳥。
あるとき湖は鳥の看守で、一羽が死に続けながら、なにかの語源になりそうな脚を、水中に差し入れている。湖岸を引き入れるために、波うち際の砂利を、少しずつ部屋に持ちこむ。その軽やかなタブーを見た鳥の鼓動は、心からかけ離れたところで、地球へ近づいたり遠ざかったりする。

によって、記憶を失わせようとするが、
わたしたちは忘れているだけだ。

墓は、わたしの静脈のにおいを、嗅いでくれた後は、
そこから生まれた新たな、

さえ、墓は赦してくれない。

噂は耳から、二度と取れずに冬の、風鈴の音を求める。
誰かを尊敬しているという小さな嘘を隠す。隠されるとは地球のにおいに似てくる。

草原は感情論を実験する。ことばの墓をつくり、耳打ちしたときの、異性の肌の血色。性的な隠語を指の間に見つける。小鳥の気配を多く含んだ風が、少しずつ砂鉄に変わる。陽のあたる喉から、こぼれる嘘が、
この置き忘れた輪郭を拾いにもどると、まだ骨が柔らかく曲がる

擬人化が、田んぼのヘドロを浚っていた。誰も知らない夜の、革命がおこる。自分のなかにいる他所を、ようやく自分にしてみる。言葉になる寸前、咽頭に水流のまったく停滞した沼がひろがる。だからその奥はまだ、水中みたいで骨がやわらかく曲がりながら、他人に発情したりする。

肉体を溶かした先に 、

だから風を、疑う。

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