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運ばれた不在が、次の部屋へ移った音がした。秋野菜の種が、種苗屋から郵送された。厚さの無い便箋ふうに折りたたまれて、偶然がほんの少し重なっている。種が常に、自分から霊性を一筋、はみ出さずにはいれないことを配達員は、気づいていただろうか。封を開けて、含まれていた他人を、抜いていく。

馬に水をのませる、という他人の生活が突然、自分の日常に、潜んでいたことがあった。暮らしの行間に、馬の咽があふれた。昨日の、馬の嚥下を明日、小さく排泄できた。馬が完全に、自分からはみ出した後も、馬の吐息は残るだろう。そうしていつの間にか、馬の不在を所有する自分が、出来上がっている。

その遅れた時計のなかにも、川上の氾濫の予感が潜み、湖面のような虚空から、過去の蚕の、産卵を待っている。自分以外が、不在の部屋の、窓を開け、風を通すと性欲が、水気を失った落葉のように、捩れて入ってくる。輪廻の欠片が、自分から少し反れて通り過ぎる。不在の輪郭の方が、良い精神らしい。

部屋の、異性の不在を、通り過ぎた風は、広葉樹の精神をみせてくれた。繁茂の所属から、逃れようとする意思。未来の合鍵を、少年だったわたしは、いたるところの腐葉土に、埋めていた。やがて樹木は、鍵から私の精神を受けとり、風に吹かれると、わたしの生を追った。やさしい、後悔の温度だった。

その体臭では、空を飛べないはずだ。不在の空気が、薄くなって風が、菩提樹との同棲を、運び込もうとする。異性の、指紋がまだ身体に、残っているのだろうか。わたしの精神をその指先に張り付けて、蜜蜂がする他家受粉のように、全くの他人に、指紋を移していく。後悔で、自分の生を、薄めてみる。

森林に、性器を置き、自分に森林を採り入れて、微睡む。昨日から薬が効きすぎていた無感覚を、身体のなかから拾い集めてから、内側にも小さく、とび出していたわたしを、湿った土壌から、少ない力で毮る。虫刺されのところだけ、あかく痒い。過去との文脈が薄くて、認める、ことを柔らかく忘れている。

ひかり、の生まれ方、と、かげ、の生まれ方、を考えてみること

ネタができた。久しぶりに、ココア共和国に、投稿しよう。
memo「報告書」
黒幕におわれる。一通りにヤバい。例えばスムージーを、あえて紙ストローを選んで飲んだりする。

比喩が流動する。とどまらないことで呼吸が繋がる。幼い頃、芒の茂みに、放り込んでしまった軟球が、今もそのままだと思う。そこからまるい不安が、腐葉土の軟らかさで、生まれ続けている。葉に擦ってできた足の傷。不安がまだ傷痕に残り、置いてきた本当の足を探す架空の物語が、林道を歩ませる。

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