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糖尿病はなぜ病名が変更されるのか

住友 生活習慣病は、かつては成人病と呼ばれていたんでしょ。
三井 そうだよ。
住友 どうして名前が変わったんだろう?
三井 もともと生活習慣病という病名が正式なんだ。世界的にも広く用いられている名称だ。
住友 そうなの?
三井 英語でもlifestyle related diseaseっていうよ。
住友 じゃあ、なぜ日本では成人病って呼んでいたの?
三井 年齢が高くなるにつれて発症しやすい疾患だと考えられていたんじゃないかな。とくにガンと脳卒中と心臓病は、三大成人病とされ、40歳代になると死亡率も高くなってくるんだ。
住友 いつ頃から成人病という言葉が使われているの?
三井 昭和30年頃から国が提唱して使い始めたらしい。成人病予防の集団検診を促す目的があったのだと思うよ。
住友 それじゃ、今も病名を変えずに成人病のままでもよかったんじゃないの?
三井 最近は、成人に達していない若年層でも発症する事例が増えてきたからなんだ。生活習慣が大きく変わり、欧米型の食生活が定着して、小中学生の間でも肥満や高血圧の症状が見られることが現代では珍しくなくなってきた。
住友 深刻だね。
三井 でも、毎日の食生活を改善したり、適度な運動を取り入れたりすることで、ある程度は予防できるんだ。
住友 だから生活習慣病という名称にして予防促進を啓発しようとしたんだね。
三井 そう。そのおかげで国民の意識は確実に高まっている。
住友 病名の変更が成功した例だね。
三井 ところで、最近では糖尿病の名称も変更しようとする動きがあるんだ。
住友 なぜ変えるの?
三井 糖尿病患者に対する差別や偏見をなくすためなんだ。
住友 差別や偏見があるの?
三井 これまで糖尿病という病名の印象から、糖分の摂り過ぎによって発症する病気だと誤解されてきた経緯があるんだ。
住友 まったくの誤解だね。
三井 だから、糖尿病の患者は、甘いものばかり食べているとか、食生活が乱れているとか、ときには生活そのものがだらしないという偏見の目で見られ、社会的に差別されることがあるんだ。
住友 それはひどいね。
三井 実際には、糖尿病は遺伝的な要因によることが多く、甘いものを食べて発症するものではない。
住友 それを正しく理解してもらうために病名を変更するんだね。
三井 その通り。
住友 これまでもこうした変更例はあるの?
三井 たとえば、癩病がハンセン病に変わったり、精神分裂症が統合失調症に変わったり、痴呆症が認知症に変わった例はあるよ。
住友 それも差別や偏見をなくすため?
三井 そう。たとえ差別的な意図を込めて使う言葉でなかったとしても、言葉そのものに差別的な意味合いが含まれているときや、言われた相手が不快に感じるときは使うべきではない。それは差別や偏見をなくすために必要なことだ。
住友 病気に苦しむ患者に対して細やかな配慮が求められるんだね。
三井 とくに将来医療に従事することを志している受験生には、そうした配慮ができる人間に成長してほしい。
住友 どうすれば差別や偏見がなくなるか考えてほしいね。
三井 受験生に皆さん、頑張ってください。
住友 頑張ってください。


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