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入試の不正行為と医療倫理の問題

住友 とても残念なことだけど、大学入試で受験生の不正行為が発覚したね。
三井 そうだね。外部の人に解いてもらうために、試験中にスマートフォンで試験問題を撮影して送信するという行為だ。
住友 試験監督者も厳重に監視していたはずなのに、どうしてこうした不正行為を防ぐことができなかったのだろう?
三井 一つはスマートフォンの性能が高度化し過ぎたことが原因だと思う。
住友 簡単な操作で何でもできてしまうということ?
三井 そう。たとえ不正行為であってもね。
住友 たしかにスマートフォンは日常生活に欠かせない便利な機器になってきている。
三井 だから罪悪感も薄いのではないかと思う。
住友 困った問題だね。
三井 今回の事件は、受験生だけの問題ではなく、一般社会の誰もが自戒すべき問題として考えなければならない。
住友 というと。
三井 科学技術が進歩して、これまでできなかったことができるようになると、「やった者勝ち」みたいになってしまうことがある。果たして道徳的にそれをしてよいかどうかの議論が追いつかなくなってしまうんだ。
住友 科学技術は、使い方を誤ると凶器にもなるからね。
三井 とくに医療分野においては、技術が進歩すると必ずといっていいほど倫理的な問題が置き去りにされてしまう傾向がある。
住友 たとえば?
三井 クローン技術がそうだ。
住友 全く同じ遺伝子を持つ生物をコピーする技術のことだね。
三井 クローン技術によって初めて羊が誕生したのは1996年のことだ。
住友 覚えているよ。羊のドリーでしょ。当時は世界中が驚嘆したよね。画期的な技術だと。
三井 そのとき世界中の人々は思ったんじゃないかな。羊でできるならば人間でもできるはずだと。
住友 でも、ヒトの胚を使ったクローニングは禁止されているんじゃないの?
三井 日本で禁止する法律が成立したのは2000年のことなんだ。国連で「クローン人間禁止宣言」が採択されたのは2005年のことだ。
住友 ずいぶん時間が経っているね。
三井 しかも「禁止宣言」であって、国際法として強制力があるわけではない。
住友 まだ世界的には完全に禁止されていないんだね。
三井 倫理的な議論が十分に尽くされることなく、医学研究者の良心に委ねられたままになっているのが現状なんだ。
住友 ヒトのクローニングも、やろうとすればできるということだね。
三井 ろちろん、できるからやってよいわけでは決してない。
住友 そりゃそうだ。
三井 その点は、合格を目指して頑張っている受験生にも考えてもらいたいことだ。
住友 倫理的に物事を考えるということ?
三井 大学生になれば専門的な知識を学んでいくことだろうと思う。でも、知識とともに良識も学んでほしい。
住友 そうだね。ぜひ良識を持って行動できる大学生になってほしいね。
三井 受験生の皆さん、頑張ってください。
住友 頑張ってください。


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