小さな差

ゴールキーパーがゴール隅に放たれたシュートに対して

さわれるかさわれないか。

自分の正面に来たシュートが正確にキャッチできるかそれともファンブルして失点になるか。

もっというとその試合のヒーローになれるか戦犯か。


この差は0.01秒、0.001㎝もしくはもっと小さい差。

その“小さい何か”にキャリアが左右される、、、

ポジショニング、経験、身長、パワー、手の大きさ、柔軟性、アジリティ、、、

色んな要素が複雑に絡み合い、失点になるのか、はたまたセーブできるかが分かれてきます。




昨年、卒業論文を書く時期になり、何を書こうか考えていました。

スポーツ科学系の研究室にいたせいか、どうせだったらその“小さい何か”を動作に着目し、科学的に探ってみようと思い、

ダイビング動作のバイオメカニクス的研究

という題目で研究しました。

大学サッカー部GKの仲間たちに手伝ってもらい、ダイビング動作中、GKはどのように力を発揮しているのか、遠くに、かつ早くボールに到達できるダイビングにはどのような特徴があるのか、パフォーマンス評価を行って、良いダイビングとその他を比較しながら明らかにするというものでした。

パフォーマンス評価(ダイビングの良し悪しを評価)には重心の飛び出し速度(踏み切り後、脚が地面から離れた瞬間の速度)を用いました。

左の図が低いパフォーマンスを発揮したダイビングの例
右の図が高いパフォーマンスを発揮したダイビングの例

この図はダイビング動作開始から踏み切るまで、つまり踏み切る方向とは逆の脚(右に飛ぶ場合は左足)が着地してから踏切る方向の脚(右に飛ぶ場合、右足)が離れるまでの時間の床反力(オレンジ点線、床に与えた力)と速度の変化(水色の線)を表しています。


横軸は時間で、踏み切った瞬間を0秒としており、

右縦軸は速度(m/s)、左縦軸は床反力N/bw(kg)を示しています。

床反力から見る(オレンジ)よいダイビングの特徴:ダイビング前半の踏み切る方向と反対の脚が、高い値を示しており、その後の踏切脚においては、さほど大きな力を発揮していませんでした。


線の形を見ると、上の図は大きい山が2つあるのに対し、下の図は大きい山1こと小さい山1こみたいな、富士山と宝永山みたいな。。。


つまり踏み切る方向と反対の足のほうが、踏み切る脚よりも高い力の値を示していることがわかります‼


速度の変化(水色)から見る良いダイビングの特徴:踏み切る方向と反対側の脚で力を伝えている時間に急激な上昇(左の図もそこは同じだが,,,)を示しており、その後踏み切る方向の脚が着地してからもその速度が維持され、何なら少し加速して踏み切っていることがわかりました


では、ダイビングにおいて、各脚はどのような役割を持っているのでしょうか

この図は、ダイビング動作中の速度を鉛直方向(上方向)の速度を水色点線で、水平方向(横方向、飛ぶ方向)の速度を水色実線で分けて示したものです。
見てみると、反対の足で発揮した力は水平方向(踏み切る方向)に対して大きな加速を発揮していることがわかり、

踏み切る脚で発揮した力は主に鉛直方向(上方向)に対して速度を発揮していることがわかりました。右の図がよい例。踏切脚をついた瞬間、鉛直方向の加速が起きている。

この結果から、、、
1、飛ぶ方向と反対の脚は、、、飛ぶ方向に対して力を伝える役割がある。ボールに対して飛ぶ力を伝えるとき、発揮するパワーの大部分を占めている。

2、飛ぶ方向の脚は、、、上方向に対して力を伝える役割がある。ボールの高さに応じて、逆脚から受け取った力を調整する役目。

3、良いダイビングには、床反力においてダイビング前半の踏み切る方向と反対の脚が、高い値を示しており、その後の踏切脚においては、さほど大きな力を発揮していなかったという特徴がある。

4、良いダイビングには、速度の変化において反対側の脚で力を伝えている時間に急激な上昇を示しており、その後踏み切る方向の脚が着地してからもその速度が維持され、何なら少し加速して踏み切っているという特徴がある


反対側の脚で得た大きな力を踏切方向の脚が受け取り、ボールに向かわせるために“つっかえ棒”のような役割をしているというのが僕の推測です、(そこまで調べられなかった…)



実際、走り幅跳びの研究でも、飛び出す方向の加速を助走で獲得し、踏切脚は上方向にしか力を伝えていない、なんていう論文があり、ダイビングもそれに似た理屈があるんじゃねってのが推測の理由です‼

ここでは議論しようとは思いませんが、僕がやった研究には方法等で落ち度がたくさんあり、完ぺきなものではないけど、

その過程で読んだ論文や、そこで獲得した知識は間違いなく選手としての自分に生きていると思います。

いい経験させてもらった大学生活☻


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