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ティーンのvape使用が問題に。どんなことが問題なの?

Vape(ベイプ)ってご存知ですか?
電子タバコと言った方がわかりやすいかもしれませんね。ベイプは、専用のリキッドをベイプ本体にセットして電源を入れ、発生した蒸気を吸うことをいいます。

イギリス政府は、このほどイングランドにおけるベイプの無料配布の禁止に乗り出しました。合法化されると、ベイプ小売業者は、18歳以下に対してベイプを無料で配布することができなくなります。


ベイプは、禁煙の一手段として普及したはず。18歳以下には無料で渡してはいけないという禁止令を出すほど広まっているの? 広まってほしくないということは、何か健康上の問題でも引き起こすのだろうか? という疑問がわいてきました。

18歳以下にはベイプを販売できない

イギリスでは、未成年(18歳以下)に対してベイプを販売することは法律で禁止されています。法律で禁止されているのに、利用者が多いという時点ですでに問題ですよね。

ベイプを使用する若者たちは増加傾向にあります。ベイプ利用者の中で11~15歳が占める割合は、9%(2021年)。3年前の統計と比べると、3%増加したそうです。

・参考記事:


増加の背景には、無料でベイプを手にする機会があるとされています。法律は18歳以下に販売を禁止していますが、無料で配布するのを禁止しておらず、これまで野放しになっていたようです。10代の利用者が増えすぎて社会問題となり、今回の規制に至ったようですね。

法律違反になるという時点で問題なのですが、タバコよりも害が少なく、また禁煙の手段の一つとして用いられているベイプは、大人が神経質になるほど危険なものなのでしょうか。


ベイプと健康被害への懸念


「ベイプは、タバコよりも害は少ないのでは?」「フレーバーを味わうだけなのに、規制するものなのか」と思うかもしれませんが、専門家からは、ベイプについて健康問題を懸念する声があがっています。

その理由として挙げられるのは、以下の4つ。
・子供の時にベイプを使用すると、大人になった時に、タバコにシフトする可能性が高まる
・ベイプは、ニコチンを含む化学物質を吸引する。つまり、健康を害するリスクはゼロというわけではない
・ニコチンを含むベイプを使用すると、心臓や肺の機能に影響を与える可能性がある
・ベイプを吸引することによる人体への影響は未知数

・参考記事:

ベイプのリキッドの中には、ニコチンを含むものがあるのですね。
しかも、種類によって配合されている成分やニコチンの濃度は異なるということです。仮にニコチンフリーとするリキッドでも、ニコチンが検出される製品もあるということで、安易に手を出すのは危険だという印象を受けます。

ベイプを長期間使用することによる健康被害は、現在のところ予想しにくいといわれていますが、ニコチンが若者に及ぼす影響は懸念の対象です。ただ、ベイプにはニコチン以外の成分でも健康を害するリスクがあると指摘されています。それは、何でしょうか。


ベイプとEVALIの関係

EVALIとは、「電子タバコあるいは vaping 製品使用関連肺傷害
(e-cigarette, or vaping, product use associated lung
injury)」のことです。症状は呼吸困難やせきの他に、
・発熱
・倦怠感
・嘔吐
・下痢
などの症状があるということです。

ベイプがEVALI発症の原因とされているのは、テトラヒドロカンナビノール(THC)と、それを溶かすために、ビタミンEアセテート(vitamin E acetate)という物質が配合されているため。THCは、大麻にも含まれている成分で、学習機能の低下や幻覚症状などを引き起こすおそれがあるといわれています。なので、それを吸引すること自体EVAILを発症するリスクが高まると容易に想像できますが、ビタミンEアセテートですか。“ビタミンE”という名前がついているので、ヘルシーなものをイメージしますよね。

ビタミンEアセテートとEVALIの関係を指摘しているのが、EVALIがアウトブレイクしたアメリカの専門家たち。調査例として2つご紹介します。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)らによるEVALIの調査

アメリカでは、50の州全てにおいてEVAILが発生した。2019年12月時点で、2,400名以上の患者が入院し、うち52名が死亡した。CDCや各州の保健局らは、16州51名のEVALI患者から気管支肺胞洗浄液(BAL)を採取。
①実際にサンプルを得られた48症例のBAL液
②健康な参加者(非喫煙者やタバコ販売者などを含む)99名から得たBAL液
の成分を調べた。

すると、①のサンプル全てからビタミンEアセテートが検出されたが、②からは検出されなかったという結果が出た。

・参考記事:


ミネソタ州によるEVALIの調査

EVALIがアウトブレイクしたミネソタ州は、2018年から2019年にかけて調査を実施。その結果、96症例がEVALIであることを確認した(入院した87症例のうち3症例が死亡)。EVALIと診断された58名の患者に聞き取り調査を行ったところ、53名がTHCが含まれている製品を利用していたということが分かった。患者から提出された267個の製品の中から選んで調査した67個の製品のうち46個がTHC含有製品で、うち24個からはビタミンEアセテートが検出された。アウトブレイクする前に押収した製品からはビタミンEアセテートが検出されなかったことから、ビタミンEアセテートがEVALIに関連していると考えられると調査は結論づけている。

・参照記事:

THCが一因であることは分かりました。ビタミンEアセテートとアウトブレイクとの関連性は興味深いですね。

イギリスでは、2019年から2020年の間に、EVALIとみられる症例は、わずか2症例に過ぎません。

THCを含有する製品の販売を禁止するなど、厳しく取り締まっているからかもしれませんが、アメリカのように違法な製品がまん延する可能性も考えられます。定期的に抜き打ち検査を実施して、品質管理を徹底していくことが予防策になりそうです。

何らかのかたちで規制することは大切

ベイプ自体がダメというよりも、怪しい成分を配合した製品を販売している業者がいるということが問題だと思います。未成年への販売が禁止されているのに、あの手この手で消費者にしようとする業者がいるのも問題です。

未成年に対しては、規制を強めて安易に手に入れられない環境を作るとともに、ベイプに興味を抱かせないような工夫が必要ではないでしょうか。口で言うのは簡単ですが、特に後者が難しいですよね。ベイプに興味を持つ理由を聞いて、そこから対策を考えることがポイントかもしれません。

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