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帰れる場所の話

新木場スタジオコーストが閉館した。

ここは一番行ったライブハウス。人生の一部であるDIR EN GREYのホームともいえる箱で、なんと74回もの公演回数を誇る。そのラストライブ2DAYSの1日目、プラチナチケットが幸運にも手に入り、ライブに行くことができた。

初めて行ったのは04年。大学を中退して演出の見習いを始め、昼はバイトをして夜は稽古、その後自分の作品を書くという生活をしていた。夕飯は稽古場に行く途中で食べるコンビニのおにぎり。ずっと怒られていて、もう最低最悪な使えない奴だとずっと落ち込んでいた。タイムスリップしてご飯を作ってやりたい。

そんな時、ずっと好きだった彼らのライブに行きたくなった。発売されたばかりの『朔-saku-』があまりに心に刺さり、京くんをこの目で観たくて。日比谷野音と武道館を経て、新木場スタジオコーストに足を踏み入れた。

初のDir en greyライブハウス公演。尖った見た目のゴスなファン。男性も多い。そして信じられないほど鮨詰めのグチャグチャなフロア。熱狂。崇拝。ステージ上で自傷行為をして何曲も歌わない京くん。アーティストとオーディエンスの関係とは思えないほどの激しい煽りに、なぜか愛情みたいなものを感じた。スタジオコーストのフロアでは、絶叫しても泣いても自分の髪の毛むしってても自然だった。手首を引っかいたり自分の腕に噛みついたりした。そういう人は自分だけではなかった。あそこは死にたいと言っていい場所だった。あまりの人波とあまりの熱狂に、激情なんて普通のことだった。泣きわめいて生きるのが普通の場所だった。

ゴスパンク+ガーリーな格好をしていったが、そんな普通の格好でも何もかも邪魔になるくらいギチギチでグチャグチャだった。でも不快感と同じくらい、何故か安心感も感じた。

生まれ育った家も、卒業した小学校も中学校も高校も、あまり良い思い出がなく、全く愛着を持っていなかった。学校は中退した大学を除くと、卒業式以来一度も行っていない。

新木場スタジオコースト閉館と聞いて、本当に寂しかった。母校の体育館が取り壊されて悲しいという人の気持ちがわかったような気がした。自分にもそういう場所ができていたことに気付き、本当に嬉しくて寂しかった。

ありがとう、新木場スタジオコースト。
私はいつか、スタジオコーストⅡを建てるために、一歩一歩頑張っていきたい。

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