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本家しぶそば Last 2 Days 初日に参戦してきた

先月末突如としてTwitterに悲報が流れてきた。

渋谷という地名の語源でもあるといって過言ではない「本家しぶそば」が閉店してしまうという衝撃が界隈に走った。しぶそばといえば東急グループのそば屋として東急電鉄の駅構内にあり、数多くの電車利用者を支えてきた老舗である。「渋谷に行く用事があれば、しぶそばで済ますか」といったことが自然と頭に出るくらいだったので、今後はその穴をどう埋めるべきか非常に悩ましい。開業から40年と年齢的にも自分より1つ上の先輩のような存在でもあり、渋谷駅を降りる度にすこし寂しさがよぎるのではないだろうか。きっと同じ思いの人が他にも沢山いるのだろう。

そして、最終営業日を明日に迎えた本日、本家しぶそばへ行ってきた。10時から2日間限定のグッズ販売があるということで向かった。10時より少し早く到着し、本家しぶそばへ向かうと、そこにはソーシャルディスタンスを保ちながらも沢山の人がいた。飲食の営業は始まっているのだから食べに行けばいいものを、整理券を握りしめ物販を待つ人達がいるのである。これが他の飲食店、特に立ち食いそばというジャンルでこのような現象が起こっていることに驚いた。それと同時に、これだけの人に愛された店舗が無くなることの悲しみも再びこみ上げてきた。到着した時点で整理券の配布は既に終了していたので、最後尾に並んだ。その後もぽつりぽつりと人が来て、列は伸びていき、店舗前の階段を超えて、1階のコインロッカー前にまで伸びていった。ゆっくりと列が動く中、購入を終えた人とすれ違う。中にはすれ違う人と会話をする人がいた。しぶそばで繋がっている人たちなのだろう。

お目当てのサイズではなかったがTシャツを購入できた。いつ着るものなのかはわからない。背中にはしぶそばのメニューと価格がプリントされている。はたしてどういった時にこれを来たらTPOを満たしていると言えるのだろうか。おそらく、しぶそばのイベントの時だろう。

最後の一食は、大盛りにした。

期間限定の明日葉などと悩みはしたが、一番シンプルでいて、一番食べたであろう大盛りにした。最後にしぶそばに訪れたのはいつだろうか。転職してから東急電鉄を利用する機会が大幅に減ってしまったので立ち寄ることが殆どなかった。蒲田駅には寄ることがあるので、しぶそばだけを食べに改札をくぐることは何回かあった。ちなみに、東急蒲田駅はしぶそばだけの利用なら駅員にその旨を伝えると無料で入場させてくれる。どこで食べても一緒のものではあるかもしれない。しかし、店舗ごとに店内のレイアウトが違い、それに合わせたオペレーションがある。入口で注文をすると「おーおーもーり」と独特のトーンで奥の厨房へ注文が伝えられる。注文をし、支払いを終え、レシートを受け取り、空いている席へ向かう。途中、給水器で水を取る。目当ての席に着いて、レシートを置くと、暫くして店員が注文した品を持ってきてくれる。この間隔がとても短い。初めて利用したときにこのスムーズな流れにとても気持ちよさを感じた。わさびはテーブルに置いてある瓶からバターナイフで好きな量をよそる。自分は未だにあった分量で取ることができず、この日も多めに入れてしまった。そのつゆをくぐったそばをすすると、少し鼻の奥にわさびのツンとする香りがする。これを良いと思ってしまうから、きっと分量をちゃんと取れるようになろうと思わなかったのかもしれない。後に急ぎの用事がなくても、せかせかとそばを手繰ってしまった。これもまたいつもどおり。食後に、残ったつゆをそば湯で割る。熱いので自然とゆっくりと飲むことを強要される。その時間に少しずつ気持ちが落ち着く。さっきまで何かに追われているようにせかせかとしていたのが、そば湯のあたたかさによって落ち着きを取り戻す。この流れが好きなのかもしれない。

最終営業日までの二日間、Twitterではしぶそばへの感謝の投稿がたくさん流れていた。いろんな飲食店があり、それぞれにファンがいるというのは知っていた。まさか自分がその一人になるとは、上京するまで思いもしなかった。しぶそばにはお店だけでなく、その周辺に思い出がある。大切な急ぎの用があったときに、時間が無いので立ち寄ったとか、そういった何かの思い出の中にしぶそばがいる。これまで渋谷に立ち寄る時に、そういった思い出がいくつかあった。今後、それが増えていくことが無いのだと思うと、まだ寂しさが残っている。

渋谷の再開発のための閉店であって、もしかしたらまたいつか戻ってくるのかもしれない。少しだけ、そこに淡い期待を持っている。また「おーおーもーり」という声が聞ける日を楽しみにしている。

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