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コロッセオ-最後の闘い

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nanaでの台本で使った作品を加筆修正しました。私の一番思い入れの深い作品です。
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#古代ローマ

コロッセオ-最後の闘い(nana台本より修正)その4

息子との戦いは続く。 女性と見まごうほどの美しい顔立ち細くしなやかな手足。だが、手にしている剣は大きく武骨であった。 「息が切れてきてますね、父さん。限界ですか?」 「何を言うか、まだだ!」 相手に俺の攻撃はすべてかわされている。逆に相手からの攻撃は5回のうち1回ヒットするように。 「100戦の勇者と聞きましたが?こんなものでしたか?」 息子からの挑発の言葉が次々とかかる。俺は確かに息が上がってきて、立ち続けているのがやっと。もうどのくらい戦っているのか。 !!!

コロッセオ-最後の闘い(nana台本より修正)その3

会場内から大歓声が上がる。 俺から兜を脱ぎ、鎧を脱ぐ。 続いて相手は鎧を脱ぎ兜を脱ぐ。頭をふり髪を整える。そのまま顔を上げ真っ直ぐに俺を見る。俺は息が止まりそうになった。 「やぁ、父さん、やっぱりそうだったんだ!」 小さい時の面影が残る、笑顔、立派な若者に成長していた息子。なんてことだ! 「母さんの若い頃にそっくりだよ。」 あの日から10年以上がたっていたんだ。 小さかった息子が立派になっていても不思議ではない。 「さぁ、父さん、これで思い残すこともなくなりました。

コロッセオ-最後の闘い(nana台本より修正)その2

夜の帳がおりるころ。場内は昼間のようにあかるく観客席はビッシリと隙間なく人が入っていた。異様な熱気につつまれている。対戦が始まってから少し時間がたっていた。 勝負はなかなかつかない。相手はかなりのやり手だった。俺は相手に剣を打ちながら提案する。 「これが俺にとって最後の闘いとなるやしれぬ!そこでだ、互いに兜を外してはどうだ? ついでに鎧を脱いでもいいぞ、やってみないか?」 100戦勝ち続ければ自由にしてやる。願いを叶えてやる。その100戦目だった。 今目の前にいる相手

コロッセオ-最後の闘い(nana台本より修正)その1

無事交易を終え、村に帰る途中だった。まだ村は見えないが煙が上がっているのがわかった。嫌な臭いもたち込めていた。妙な胸騒ぎに馬を走らせた。 「…さん。おっさん。お~い」 ハッと我にかえる。あ?と返す。 「ったく。しっかりしてくれよな。最後のカードが決まったから知らせにきてみれば呑気に寝てやがる」 最後の、か。あれから十数年がたっていた。村の女、子供はなぶり殺しにされていた。男は全てが奴隷にされたと聞いた。まだ小さかった息子はどこにもいなかった。必至に探しているうちに俺も