イケ!イケ!レッドイーグルス⑨ストライク大会

 小学校2年生になったある日、広場でいつものようにキャッチボールをしていると、平沢くんがきた。「誠司、今度の日曜日、長崎屋でストライク大会っていうのがある。申し込みしたから、出場してみてよ。」と言われた。平沢くんの説明によると、ようはストライクの的を狙って投げる大会で、優勝者には、グローブ、バット、スパイクがプレゼントされるらしい。景品が豪華なだけに、子どもたちはこぞって出場するらしい。平沢くんも出るのかと思ったら、出場は小学生に限られているとのことで、中学生は出場できないとのこと。誠司は、(そんな大会に出たって優勝できるわけないじゃん)と思いながら、(でも、いつもの壁あてのつもりでやれば良いのか)とやる気を出していた。その日から、ストライク大会の当日が待ち遠しくなってきた。大会は10時からということで、平沢くんとは広場に9時集合ということになった。誠司は負けたときのことを考えて、親にも、友達にも、大会のことは黙っていた。

 日曜日がきた。平沢くんに連れられて、誠司は長崎屋に向かった。子どもたちが100人近く集まっていた。よく見ると、同じ学校の隣のクラスの子たちが何人かいた。大会は低学年クラスと高学年クラスに分けられた。2年生の誠司は低学年クラスだ。低学年は10m、高学年は15mの距離から的を狙って投げる。予選は早く3球ストライクが入れば勝ちというルールだった。誠司は予選はどの相手にも、4〜5球で3つのストライクを取り、勝ち上がっていった。どの相手も3つのストライクを取るのに苦労していた。誠司にとっては、3つストライクを入れなければ、いつもの実況付き壁あてで三振は取れないので、3つストライクを取ることは、そんなに難しいことではなかった。それに、いつもの壁あてのストライクゾーンよりも、的も大きかった。いよいよ決勝戦まできた。決勝の相手を見ると、なんと、隣のクラスの松田くんだった。松田くんは左投げのキレイなフォームからストライクを投げ込んでいた。決勝戦前に、係の人から、提案があった。「2人は15mからも投げられる?」誠司は投げられると思ったけれど、距離が長く成れば難しくなるので、投げられるとは答えずに、黙っていた。すると、同じ学校の子たちが「投げれる、投げれる。」と騒ぎ始めた。誠司と松田くんは目を合わせて、仕方ないなあという顔をした。係の人がじゃあ、後ろの線から投げてみよう。」と言って、決勝戦が始まった。先行は松田くんだった。松田くんのキレイなフォームから繰り出されるボールは、4球で3つのストライクを取った。誠司が優勝するには、3連続ストライクしかなかった。(1球のミスもできないのか。せめて、5球ならなあ)と思いながら、的に集中した。1球目、少し高目に上ずったボールはギリギリストライクゾーンに入った。(ちょっと力んだなあ。もう少し力を抜いても、15mは投げられるなあ)2球目はど真ん中のストライクだった。もう、誠司から緊張感は取れ、いつも通り投げれば、あと1球、ストライクは入るぞ)と思い、集中した。同じ学校の子たちは大盛り上がりで応援してくれている。隣では、松田くんが見ている。誠司は的だけを見て投げた。ボールはど真ん中のストライクに入っていった。(よっしゃー)と誠司は思ったら、隣で見ていた松田くんが「ナイスボール」と声をかけてくれた。誠司は「ありがとう」と言って、握手をした。松田くんが、「今日の午後、遊べる?一緒に野球やろうよ!」と誘ってくれた。隣のクラスでは、野球好きの友達同士で野球をやるのが流行っているらしい。

 優勝景品を家の玄関に置いて、誠司は多摩川の河川敷に向かった。そこには、松田くんを含む10人くらいの子どもたちが集まっていた。チーム分けを行い、5人対5人なり、下投げでの野球ゲームが始まった。柔らかいカラーボールなので、グローブはいらなかった。このゲームは、この後、何回も1組対2組のクラス対抗戦となって、学校の休み時間、放課後の時間に誠司たちの遊びの中心となっていくのであった。

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