イケ!イケ!レッドイーグルス⑥6年生からの誘い

 ぼくたちも小学1年生になり、広場での野球が盛り上がっているころ、近所に住んでいる6年生から、声をかけられた。「お前ら野球上手いなー。今度一緒にキャッチボールしないか?」ぼくと徹くんは、嬉しくて、「やる、やる、やる。」と答えたものの、良く良く考えたら、相手は6年生だ。ぼくらは、6年生の投げるボールを捕れるのか?ぼくらはどおすれば良いか、考えた。二人は案外簡単に答えを出した。父親に思い切って投げてもらって、練習しよう。お互い、今日は家に帰ったら、父親にお願いしようということになった。

 次の日、学校の休み時間に、隣りのクラスから徹くんが、走ってぼくの教室に入ってきた。「どおだった?」「OK、OK。ただ、仕事の休みが日曜日だから、日曜日だけだよ。」「ウチもOK。ウチは休みの日が決まってないんだけど、明日できるって。」「OKーじゃあ明日と日曜日だねー。」「それ以外の日も練習しよう。」二人は楽しくなってきた。自分たちがまだ1年生であることを忘れて、6年生と同等の野球をやるつもりでいた。

 次の日、学校が終わってから広場に行くと、すでに徹くんがお父さんとキャッチボールを初めていた。ぼくは、「こんにちは。」と言ってしばらく二人のキャッチボールを見ていた。徹くんのお父さんはやっぱり野球がうまかった。「徹、しっかり捕れよ。」と言って、速いボールをビュンと投げた。徹くんはいとも簡単に捕ったように見えた。「誠司くんもやるかい?」と言われて、「はい。お願いします。」と答えた。ぼくは、(ボールから逃げない。ボールをしっかり見る。)と心に決めて、キャッチボールに入った。徹くんのお父さんが投げたボールは速かったが、ぼくの胸のあたりにきたのでパチーンと捕った。左手の手の平がものすごく痛かったのと、同じボールなのに、鉄のボールかと思うくらい重く感じた。でも、速いボールを捕ることは、心地良かった。痛みや重さ以上にビュンとくるボールをビシッと捕る気分は最高だった。「今日はありがとうございました。」とぼくが言うと、「誠司くん、上手に捕れるじゃない。怖くなかった?」と聞かれたので、「怖くはなかったけど、痛かったです。」と少し赤くなった手を見せて言った。「ちゃんとグラブの芯で捕っている証拠だよ。この調子でがんばってね。」と言われた。ぼくは、(グローブのことをグラブって言ってたな。グラブの方がカッコいいな)と思った。

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