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自由詩、散文詩

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現代の日本語による自由詩または散文詩
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[詩]息子の太い腕

[詩]息子の太い腕

まだ日も落ち切らない夕方。
いつものパブの薄暗い店内にはもう一人二人の客がいた。機嫌などと言うものはとうに忘れてしまった店主が、パイント・グラスに視線をむけて〈いつものですね〉と一言も発せず訊いてきた。
大した仕事のある身の上でもないが、その日のことなどを思いだしながら、晩飯前にここへ寄って一人エールをぐずぐずやるのが習いなのだ。
娘は去年遠くへ嫁いだのよ、と女房だったのがこの前言って寄越した。そ

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