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言葉のことばかり【さすがです】

認めないけど、
否定もしない技

僕は代理店のクリエイティブだったので、
クライアントとのやり取りは苦手でした。
そんなとき頼りになるのはやっぱり営業職で
僕の周りにも上手な人がいっぱいいた。

営業ってすごいよね。って言うとその人は
いやいや、二つの言葉で全部できますよ。
『ですよね』『ですかね』で。と言う。

クライアントが正しいと思ったら「ですよね」
ちょっと違うと思ったら「ですかね」

「ですよね」は認めつつ、
自分もそう思ってたとマウントを取る。
「ですかね」は認めず、だけど否定もしないで、
違う可能性もあると暗に伝える。
よく言えば賢い。悪く言えばのらりくらり…。

思わず「さすがです」って言っちゃいました。

さすがという褒め言葉

「さすが!」って突発的に出る言葉ですよね。
驚きがあるし結構絶賛してます。

ところが辞書見るとちょっとニュアンスが違う。

流石/遉(さすが)
評判や期待のとおりの事実を確認し、改めて感心するさま。なるほど、たいしたもの。「この難問が解けるとは—だ」
[補説] 1は、感動詞的にも用いられる。「—、センスがいいね」

出典:デジタル大辞林

期待どおりの事実を確認し…って
もともとそう言うだろうと思ってたってこと?
絶賛と言うよりは、かなり上から目線だ。

まあ例文の「この難問が解けるとはさすがだ」
は上からですね。お前にしてはよくやった。

普段よく使う言い方は「補説」レベルらしい。

あることを認めはするが、特定の条件下では、それと相反する感情を抱くさま。そうは言うものの。それはそうだが、やはり。「味はよいが、これだけ多いと—に飽きる」
(「さすがの…も」の形で)そのものの価値を認めはするが、特定の条件下では、それを否定するさま。さしもの。「—の名探偵も今度ばかりはお手上げだろう」

それどころか、かなり否定的な意味もある。
「さすがに毎日じゃ飽きる」とか
「さすがの先輩も敵わない」とか

なんか小馬鹿にしてる気配すらあるね。

そう考えると「さすが!」は
「よ!日本一!!」みたいなものかも。
あんまり褒めてない。
気をつけて使ったほうがいいかも。

日本語っぽい
波風立てないテクニック

これって最初に言った
「認めないけど否定もしない」に近い。
波風立てずに相手を持ち上げる技か。

すごく日本人ぽいですね。

僕が「さすがです」と
「です」を付けてたのは、
無意識に丁寧にしようとしてたのかも。

「さすが」だけだと目上の人には使えない
ってわかってた気はします。
いや「です」付けても多分失礼なんだな。

ちゃんとしたビジネスマン(ってのも変だが)
じゃないクリエイターはそのへん弱いです。
しっかりとしたビジネス用語は使えない。
もしくは使いたくない。カッコ悪い。
誰にでも使える言葉はつまらない。
自分の言葉を使わないのは負けである。
形式的な言葉はうわべだけで心がこもってない。

勝手な思い込みですが。
これを変える気はさらさらないです。

まあだからこそ気をつけないと。
「なるほど」もよく使うけど
これも目上の人には失礼っぽい。
でも使うなあ。

「なるほど」は相手を認めつつ、
意見をインプットしてる状態なのですごく便利。
気がつくと「なるほどなるほどなるほど」と
繰り返したりしてる。

ビジネス会話のサイトとか見ると
「なるほど」の代わりに「勉強になります」
を使いましょうとか書いてあるけど、
こっちの方が相手を馬鹿にしてない?

次回の言葉は「へんな偏」です。


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