牡馬クラシック 冠の軽重を問う その1


2024/6/23 二冠馬について記述を修正

概要

JRA牡馬クラシック三冠
それぞれのレースが

皐月賞…速い馬が勝つ
ダービー…運のいい馬が勝つ
菊花賞…強い馬が勝つ

みたいなことが言われていますが、本当か?
あるいは、昔は事実だったが現在は通じるのか?
ということで調べてみました、というアレです

対象競争

対象にしたのは1983年クラシック以降、約40年分
グレード制導入以前はだいぶ趣が違うので、とりあえずここで線を引きました

ということで当該クラシック競争勝馬リストです

JRA牡馬クラシック勝馬(1983~2023)

ザっと見ると気付くことがありますね、ダービー・菊花の二冠馬が存在しません。距離適性やらコース適性やらで全然あり得そうな気はするんですが、実は前身競争含めて日本競馬史にこの二冠馬※は1973年のタケホープしか存在しません。
※1943年にダービー、オークス、菊花それぞれの前身レースを勝ったクリフジという牝馬がいるんですが、一般に変則三冠馬とされるので数に入れず
この期間だと皐月ダービー二冠6頭、皐月菊花二冠5頭とそんなに偏りがないんですが、日本競馬史全体で見ると16:8になって結構極端で興味深い傾向ですね。

一冠馬のその後の成績を比較する

とりあえず一冠馬
皐月賞24頭、ダービー29頭、菊花賞31頭いますので
その後の成績、つまり古馬混合GIでの勝ち星を見てみましょう

とりあえず簡単に古馬GIでの勝ち星に対応する頭数です。

一冠馬 古馬GI勝ち星(統計

・古馬0勝馬がかなり多く、全体の6割強を占めるし、GI勝てても半数は1勝
・ダービー馬がその後パッとしない傾向がありそう
・次点は皐月賞で一番いいのは菊花賞
(皐月賞一冠馬が他より2割少ないことを考慮すると、頭数比較だと少な目に出るけど平均値だと重み付かないですからね)

とにかく古馬GIの成績(期待値)で言うと ダービー<皐月<菊花
になりそうなことはわかりました。

もう少し突っ込んで見るために横軸を年、縦軸をその後の古馬GI勝ち星にしたグラフで見てみましょう

一冠馬 古馬GI勝ち星(年次

・6勝している2頭が超目立ちますね(オペラオーとキタサンブラック)
・ダービー馬では5勝が最多勝ですが、2007年なのでウオッカ(牝馬)ですね、牡馬の最多勝は1998年のスペシャルウィークの3勝
(古馬で)強いダービー馬ってそこまで遡るんかい…
・菊花賞が期待値高いとはいっても2勝以上がポコポコ出ていたのは2002年(ヒシミラクル)まででその後20年ではキタサンブラックとフィエールマン(春天2勝)とタイトルホルダーしかいない
・というか全体に2勝以上しているのがかなりレアで2010年以降で言うと菊花賞の3頭以外にエフフォーリアしかいない(この2勝は3歳時なんだが)

一冠馬の引退時期を比較する

さて、どうもダービー馬いまいち、菊花賞馬強い
という傾向の結果はありそうとわかりましたが、
世代戦後の出走数を比較して母数も考える必要があるかもしれません
ちょっと見てみましょう

一冠馬の引退馬齢(年別

はい。「引退」と書きましたが、厳密には最後に出走したレース時の馬齢です(取消になった場合は除外)
表記変更前の馬も現在の馬齢にしています。
パッとなんとも言えない感じですが
・菊花賞馬が上の方にいることが多い
・ダービー馬が下の方にいることが多い
気はしますね
と言うことで古馬GI勝ち星と同じ要領で表にすると…

こうなります

一冠馬の引退馬齢(統計

・皐月、菊花は5歳引退が一番多い
まあ一般にステイヤーの方が晩成傾向はあるし、菊花が引退遅いのは普通のことなんだけど…
皐月賞馬が意外(?)と粘りますね
・ダービーは3歳引退が多い
種牡馬入りのための早期引退をするのか?
→種牡馬入りを急いで無事なのに3歳引退と言うのは日本ではほぼない
というわけで100%故障ですね…
ついでに言うと余力を残して4歳引退もかなりレアです、スペシャルウィーク、ディープインパクト、コントレイルぐらい?
・古馬現役期間と古馬GI勝ち星を比較すると
現役期間1.4:1.1:2.0
古馬GI勝ち星0.8:0.5:1.0
割と相関がありそうですね
(古馬期間と古馬混合競争出走期間はイコールではないけど…)
・全体的にほんのり引退が遅くなる傾向がある
線形近似してみましたが全体に右上がりですね
どうもダービー馬が顕著。9歳途中まで現役だったマカヒキが多少引っ張ってはいるんだろうけど…

まとめ

・クラシック馬にとっても古馬GIを勝つのは結構大変で
一冠馬内で1勝以上37% 2勝以上17% しかいない
・古馬GI期待値としてはダービー<皐月<菊花
運、速、強という論もあながち間違ってはいないのかな
・期待値と現役期間は連動する傾向がある
ダービーは「無理をしないと勝てない競争」ということなのかもしれない
・現役期間は延びている傾向がある、ダービー馬が特に顕著
種牡馬入りのアドバンテージにならなくなってきているのかもしれない
・今後この辺(現役期間と古馬GI勝ち星)の傾向は多少変化があるかもしれない

次回以降

・二冠馬、三冠馬含めてどうかって記事は書きます
・できれば種牡馬価値(最初とトータル評価)で書きたいが情報集めきれるか?


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