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心をあたためる、ふるさとをあたためる

2017年8月掲載
文:奥田美和子(土の香農園・土の香市場ハラペコあおむし)
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 もう14年も前のことですが、末っ子が青山中学校の卒業式で何人かで答辞を読みました。みんなで考えたのか素晴らしい答辞で、聞いていた多くの保護者が涙を流していました。その中で私にとって今も忘れられないフレーズが、先生や親たちへの感謝の言葉のあとに続いた「僕らを育ててくれた青山の町ありがとう」という言葉でした。私はその時強く思いました。

 この子達の多くがやがてふるさとを離れて暮らすようになるけど、ふるさとにありがとうという言葉を残して出ていくこの子らの為に、最高のふるさとを残してあげたいと。その思いをずっと持ち続けて「誰もが住みたくなる 魅力いっぱいの伊賀・名張」ということばにのせて今も胸にあたため続けています。



 1人の人間のできることなど小さいと思いますが、思いを持ち続けたことで市民活動から生まれたエコ情報発信基地としての自然食品店「ハラペコあおむし」をたくさんの方々に助けられて今日まで続けることができました。そして3年前には小さなマルシェ「ハラペコ里の市」も生まれたのです。

 伊賀・名張にはまだまだ農家もたくさんあって、お米も野菜も畜産物も生産されています。そして様々な産業があってこの地域のなかで大方のことが賄える恵まれた地域だと思います。私たちが便利さを求めて、グローバル化をめざして、世界中からいろいろなものを買い集めるために、たくさんの石油を使っていることで、地球の温暖化を招き、異常気象が当たり前になってしまいました。それを少しでも解決するためにも地域でできたものを地域で使う、地域内循環の暮らしを取り戻すのも大事なことではないかと思います。


 地域のあの人が作ったお米やお野菜をいただく暮らしはちょっと面倒のようでも、とても心が豊かになる気がします。そんな作り手に出会える場所の1つになりたいと、ハラペコ里の市を立ち上げました。

 今はとても小さいマルシェですが、私の夢は衣食住と暮らしの道具の作り手さんに出会える場や、人にも環境にもやさしい暮らし方の情報がいっぱいの場を作ることです。そしてものだけではなく人やことに出会える里の市を目指しています。里はみんなの「命の根っこ」だから、里の元気はみんなの元気の源。伊賀・名張は本当にまだまだ原風景が残っているすばらしいふるさとだと思います。


 このふるさとが元気で温かいところであれば、住んでいる人はもちろん、ふるさとを離れて暮らすたくさんの人々の心も温めることができるでしょう。そんなふるさとをめざす小さなマルシェ「里の市」に足を運んでいただいて、青空カフェや青空レストランでくつろぎ、採れたての夏野菜どうぞ皆さんの食卓で楽しんでください。またお知恵やお力を貸してくださる方がありましたら気軽にお声をかけていただければとても嬉しいです。皆様のおこしを心から待ちしています。

 補足ですがふるさとを離れて暮らしていた末っ子が3年前にパートナーと一緒に青山に帰ってきてくれて、しかもこのマルシェの運営を担ってくれていることは私にとって本当に嬉しいことです。願いは届くを実感しながら、もっともっとたくさんの子どもたちが故郷に帰ってきてくれる町になれるといいなと心から願っているところです。     


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