Dear…ep6

※本人と全く関係ありません。

※こういうドラマがあるといいなーってレベルです。

※素人の下書き程度の小説です



   ※     ※     ※




  俺は朝からワクワクしていた。勝くんの席がなかったら困ると思って早くに学校に来て教頭に直談判する。「本当に来るんですか?」と聞きながらも、俺の正体を知っているこの人はちゃんと机と椅子を倉庫から出してくれた。お礼を言うと「君は国の宝ですから」と謎のヨイショを忘れない。文哉の机の横には誰の机もなかったからちょうどいい。

「完璧、いい感じ」

 そうしているうちにクラスメートが登校してきた。

「浦野、おはよう。まさか、アイツ来んの?」

 増えた机に気付いたクラスメートが俺に聞いた来た。

「勝くん?そうそう今日から教室に戻ってみるって言うから準備してるんだ」

「お前ほんと変わってるね。」

 先週までの雰囲気と明らかに違う。俺と距離を取ろうとしてる気がする。おもしろいと言う感情じゃなくめんどうと言った意味の変になった気がした。

「そうかな?」

「普通はそんな落ちこぼれなんかほっとくの。うまく立ち回って、先生に嫌われないようにするんだよ。アイツらみたいに歯向かうだけ無駄だよ。」

 俺の思う普通ってなんだっけ? 友達と仲良くなって下らないことバカみたいに笑って、学校の校則破ったりして、先生にばれて怒られて、それでも懲りないみたいな…そんな世界はファンタジーだったのかな?

「おはよう、秀太」

 待ち望んでいた声、勝くんだ。振り返ると笑顔の勝くんといつものような無愛想な文哉がいた。

「おはよう」

 初めてだった。文哉から挨拶。なにこれ嬉しい。今怯んでる場合じゃない。動じるな、俺。2人はずっとこんな空気と戦ってたんじゃないか。

「おはよう、遅いよ2人とも。」

「お前が早すぎるだけ。」

 文哉はそのまま自分の席に向かう。

「隣、ここの机用意しといた。勝くんの席だよ」

 一瞬、教室の声が止まった。視線がこっちに集中してる気がする。でも、いつものようなざわつきはすぐ戻ってきた、気がした。そう、気だけだった。クラスメートたちはこちらを伺いながらこそこそ話している。文哉が席に両手をついたまま黙っていた。

「なぁ…」

 勝くんの低くて通る声で、そのざわめきを一刀した気がする。

「なぁ、俺らそんなにおかしかったんかな?苦しんでるダチ守るん、悪いことなんかなぁ」

 一瞬、シンとなったが、すぐにざわめきが戻る。勝くんの言葉なんて聞こえなかったみたいに。

 この空間に二人はずっと置かれていたんだ。俺が想像するよりずっときつい世界だったかもしれない。二人はこの世界で運命共同体と言って支えあってたんだね。

 勝くんがうつむいていると文哉が立ち上がり机を蹴った。小さく「ごめん」って言った気がする。

 女子たちから短い悲鳴みたいのが聞こえ、クラスの唖然とした雰囲気に俺は飲まれていた。

「文哉、待てって」

 勝くんのその言葉で我に返ると二人は教室から駆け出していた。

「文哉っ」

「待てよ浦野。ほっとけって」

 くそみたいな言葉だ。

「誰かを傷つけて平気な普通なんて普通じゃない。俺は感情のある人間でいたい!」

 誰に届けるわけでもない感情が勝手に言葉として出た。そして俺は教室を飛び出して小さくなってく後ろ姿を一生懸命追いかけた。

 無駄に速いよ、文哉。

 勝くん足長すぎるって。

 いつぶりかわからないくらい全力で走って二人を追いかけて屋上へ。二人の声が聞こえる。

「うまく行かへんな」

「…ごめん」

「文哉は悪くないやん。」

「ダメだった」

「ほんまやな、ダメやったわ」

 走って屋上に飛び込む。

「文哉っ、勝くん。二人はダメなんかじゃない!痛みも苦しみも全部わかってる。だから、だから…」

 息も切れ切れ、そして


ドクゥン ドクゥン


 全身で心臓が脈打つ感覚。スローモーションで世界が横向いていく。

「え、秀太?」

 勝くんの声と俺に向かってくる長い足。

「秀太!どうしたんだよ、秀太」

 え、名前呼んでくれてる?文哉に名前呼ばれるなんて嬉しいな。

ー運動は絶対ダメだからなー

 康祐くんの忠告が頭をよぎった。そうだった。康祐くんごめん。約束破った。だけど、だけどね。

 俺、多分間違ってなかった。

 もう世界が真っ白でなにも見えないけど感じるんだ。

 暖かい抱えられる感覚。

 俺の名前を必死に呼ぶ声。

 そして、

 遠くから聞こえるたくさんの足音。


「秀太、しっかりせぇって。秀太!」

「秀太!どうしたんだよ、秀太!」


 ごめん、もう意識が…


 2人と出逢えて良かったよ。


 ありがと…






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