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闘アレ生活(9) 〜地方の旅には行きたくても行けないんだゴメン篇

57歳のある日、いままでアレルギーなどひとつもなかったボクが、突然アニサキス・アレルギーになった。そして、ほとんどすべての魚介類が食べられなくなった。いまは魚系のダシやエキスまで避けている。
そういう生活とはいったいどういう感じなのか、ちょっとだけリアルに知ってもらうために、ちょぼちょぼ書いてくシリーズです。
暗くなる話も多いけど、リアルに知ってもらうのが目的なので、申し訳ありませんがご理解ください。
「闘アレ生活」の過去ログや他記事はこちら


日本は本当にダシ文化だな、と思う。

特に地方都市。
もうほとんどの料理に、と言っていいくらいダシを使っている。

ダシをNGにしている今、マジで食べるものがないのである。

※アニサキス・アレルギーを治すという(負ける可能性の高い無謀な)闘いのために、魚介類をダシ・エキスに至るまで完全除去する生活をしているのだけど、それを数年続けることによって数値が最低値まで下がったら晴れてダシを口にしてもいい日がやってくるかもしれない。それまではとにかく我慢!



この前、某県某市に出張に4人で行った。

その市を貶めたいわけじゃないから名前を出すのは控えるが、まぁ地方の中規模の街である。

海沿いではない。どちらかというと山の中である。
とはいえ魚が美味しい県なので「肉よりも魚」な文化である。ま、たいていの日本の地方はそうだよね。

で、仕事の途中、当然「ランチ」になる。

仕事していた場所の近くにはほとんど店がなく、とりあえず一軒ポツンとある和食屋に入ることになった。

残り3人もボクに気を遣ってくれるが、まぁなにかしら食べる物はあるだろうと入った。

でも・・・これが甘かったw

メニューを見ると、蕎麦や定食や丼など、いろいろある。普通の和食屋だ。規模はわりと大きめできれいな店。従業員もわりといる。

まぁ蕎麦やうどんがダメなのはわかってる。
汁にダシを使っているし、そばつゆもダシを使っている。
そして、魚系の定食ももちろんダメ。それもわかってる。

でも、肉を使った定食は大丈夫だよね? そう思うじゃん?普通。

とはいえ危険なので、注文をとりにきた店員さんに一応確かめてみることにした。

「あのー、魚アレルギーでして、ダシもエキスもダメなんですけど、この肉の定食、大丈夫ですよね?」

「え!? 魚、全部ダメなんですか?」

・・・もう慣れてはいるが、地方ではアレルギーに対する理解がまだ進んでいないところも多く、たいていとても大仰に驚かれる。

魚中心で生活している人も多く、「魚が食べられない」という状況が一瞬アタマに入ってこず混乱するのはまぁわかる。超マイナーなアレルギーなのだ。

「あ、はい、すいません」

「ちょ、ちょっとお待ちくださいね・・・あ、えーと、ダシもダメなんですね? 食べたら危ないんですね? はい、ちょっとお待ちください」


厨房のほうが慌ただしい。
初めての例だったのかなぁ。申し訳ないなぁ・・・

わりと待った後、

「お待たせしました。申し訳ありません、うち、ダシをいろいろな料理に使っておりまして、定食類はできればご勘弁いただければと・・・」

に、肉もダメか・・・
まぁイヤな予感はしていた。だって地方のお店、本当にダシを使うんだもの。

「えーと、では定食じゃなくて、一品で何か食べられるのもありますか? あ、みんな(残りの3人)はボクに気を遣わず定食をたのんでね」

訊いたところ、唯一、厚揚げはダシを使っていない、ということである。

「では、厚揚げ一品と、ごはんください

味噌汁もダシを使っているのでNGなのだ。漬物もダシを使っているとのことだった)


厚揚げとごはん一杯w

多少、自虐的になるのは許してくれ。
一応、地方を食べまくって、地方14都市の『二泊三日の極楽ごはん』みたいなグルメガイドを書いたこともあるボクが、何も食べられるものがなく、厚揚げと白飯なのである

笑える(泣)


「お待たせしましたー」

持ってきてくれたお皿を見てひっくり返った。

ひえ〜〜厚揚げにカツオ節がたっぷりかかってる〜〜〜!




別の時、某県某市に3人で出張をした。

もうランチとか別々でもいいのだが、同行者もやはりボクに気を遣う(最年長者だからかな)。

「わたしたちは何でもいいですよ」と、食事が楽しみな地方都市に来たのにボクに合わそうとしてくれる。

ごめんね・・・
でも、それも悪いので、その街では有名な店にトライしてみることにした。

有名な店であれば、アレルギーの人もたくさん訪れる。つまり、あまり驚かれないと思うし、きっと何かしら食べる物はあるだろう。

でも・・・これまた甘かったw

席に案内され、早めにアレルギーを告げ(やっぱり驚かれた泣)、厨房に確認してもらった。

・・・なんと、全滅だった


「申し訳ありません、お出しできるものがひとつもありません」(ダシだけに!)



あ〜、やっぱり地方都市はダメなんだなぁ・・・

結局、みんなに謝って駅前に戻り、駅ビルに入っているチェーン店で唐揚げ食べた。

みんなごめんね、美味しい地方都市まで来て駅ビルのチェーン店の唐揚げで(泣)



もちろん、探せば食べられるものはあるんですよ。

焼肉屋があったり(キムチはオキアミ使ってるからダメだけど)、洋食も多少はある。安イタリアンとかもあるし、町中華とかもある。チェーン店も多い。

そういう店に行けば、(町中華はかなり危なそうだけど)何かしらは食べられるものはあるだろう。

でも、地方での食の楽しみは、ほとんどない。
ボクひとりならまだしも、同行者を付き合わせるのが精神的にもきつい。

なんつうか、やっぱ無理だなぁ・・・



ここからは言い訳だ。

この日曜日(2019年10月20日)、岩手県の住田町で「第一回住田つながりトレイルランニング大会」があったのである。

住田(すみた)?
ええと、陸前高田や大船渡や遠野のあたりというか。

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この住田町、ボクが運営している「コミュニティ4th」とわりと縁が深くなっていて。

まず、4thのメンバー(かつ昔の我が社の社員)に、東日本大震災の復興支援で住田町に通い、そこで結婚をした女子がいる(二拠点生活で東京で働いている)。

彼女の「住田町への献身的な支援」に共感した4thメンバーたちが、「なんとか住田町を盛り上げられないか」と、二年前から準備して、地元の人たちと協力して、このトレラン大会をゼロから立ち上げたのである。

もちろん地元の人たちが一番動いていて、4thメンバーたちはそのサポートではある。でも、かなり肩入れしてがんばっていたのだ。

ボクはもちろん住田を応援しているし、二年前の企画プレゼンの時も、去年のプレ大会も、現地に行き、運営側としてボランティア参加した。

だから、記念すべき第一回であるこの大会も当然参加したかった。

だって4thメンバーも30人くらい参加するのである。

ほんと、参加したかった。


「さとなおさん、なんで参加しないんですか?」

ある4thメンバーにそう訊かれたとき、うまく答えられなかった。

住田を応援するためにも、食べるものなくても行けばいいじゃん。
そういう気持ちもあった。

でも、行けなかった。
一瞬、なんとかなるかな、と思ったけど、冷静に考えるとやっぱり無理である。

まず、本当に食べるものがない
それは上で書いたような例を初めとして、数回の地方出張で身に沁みている。特に住田町はわりと田舎だ。ほぼダシを使っていると思った方がいい。しかもアレルギーへの理解はほぼないだろう。

保存食やコンビニ食を食べてなんとか済ませられないか、とも思った。

とはいえ、みんなで盛り上がるランチや夜宴会にひとりコンビニというのは精神的にかなり来るものなのだ(つか、コンビニあったっけ?)。
あの惨めな感じは心を痛めるので、できれば避けたい。

しかも、同行者が多い。
(あの美味しい住田で)唐揚げにつきあわせるわけにはいかないし、みんなボクにはとても気を遣ってくれるので申し訳ない。

ホテルやレストランの宴会料理も厳密な確認がとても難しい。ひとつひとつ「ダシつかってないか」とか訊かないといけないのだけど、田舎の場合、いろんな意味で本当にそれが難しい。
しかもみんなで盛り上がっているときにひとりでしこしことチェックしているのは本当につらいものなのだ。なんか神経質なオッサンみたいだ。


そのうえ「街をあげてのお祭り」である。
おもてなしに応えられないのもつらいし(おばちゃんとかが親切でどんどん出してくれる料理とかをいちいち確認したり断ったりしないといけない)、東北の美味しい海の幸がたくさん目の前に並ぶのが目に見えている。これがまたつらい

ただでさえも秋は怖いのだ。
地雷だらけで、いつウツになってもおかしくない精神状態で生きている。


ゴメン、やっぱ無理だ・・・

さみしく東京に残ることにした。

というか、地方への旅行を心のどこかで諦めてはいたんだけど、やっぱり無理なんだな。

こんなに地方が好きで、こんなに地方の食にもくわしく、こんなに地方の食をみんなに紹介してきたのにな・・・


この淋しさは意外と深くて、うまくヒトに説明できない。

あーみんな、アレルギーくらいで何で来ないんだ、とか思ってるだろうなぁ。すまんなぁ。


まぁそれはそれとして。
住田つながりトレイルランニング大会の第一回は大成功だったようだ。

みんな、おめでとう!(写真は4thメンバーたち)

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さとなお(佐藤尚之)
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。