「ドロボー捕り物」顛末 @帯広
先週、ファンベースの講演で帯広に出張していた。
そこで思いもよらず「サウナー」になったのだが(↓)、今回はそれとは違うお話。
帯広は、旅行以外だと、講演で4回来ている。
広告系の講演は今回を含めて2回。
広告以外が2回。
広告以外は、YOSAKOIソーラン祭りの基調講演だ。
ボクは、2007年から2010年の4年間、なぜか「YOSAKOIソーラン祭り」の審査員をしていた時期がある。
ダンスや演舞については門外漢なのだが、なぜかセミ・ファイナルの審査員を毎夏やらせていただいた。
で、その本番に向けた「YOSAKOIソーラン全道参加者フォーラム」という、全チームから代表者が集まるカンファレンスがあり、そこで、これまたなぜか、基調講演とワークショップをしたのである。それも2年で4カ所。
自慢じゃないが、いやちょっと自慢だが、2010年に初優勝(大賞受賞)した、枝幸町のチーム『夢想漣えさし』(ゆめそうらんえさし)の大将は、何度もこう言ってくれた。
「佐藤先生から指摘されたポイントに忠実に演舞を構成したら、初優勝できたんです!」
お世辞だってわかってるけど、講演2時間、ワークショップ2時間、懇親会4時間の超長丁場を必死にやりきったので、その中のチームから優勝が出たのは本当にうれしかったな。
※ どういうことをやったかというと、演舞の制限時間は4分なのだが、テレビCMと同じようにイイタイコトをひとつに絞って、見ている人の自分ごとにして、印象的な山場を作って、と、「目立つ広告を作るためのお作法」をそのまま演舞に当てはめたワークショップをわりと丁寧にやったのだ。お役に立ったのなら本当によかった。
さて、ここからの話は、そのワークショップの第1回目で帯広を訪れたときのことである。
ドロボーを捕まえたのだ。
実際には同行者であるG氏が先に押さえつけて、ボクは追いついただけって感じなのだが(弱っ)、まぁ逃げてる男を捕まえて警察に引き渡したのは確かである。
この日は疲れ切っていた。
そりゃそうだ。
昼13時から始まって、まずは150名くらいの聴衆に向かって2時間の基調講演をする。次の2時間でワークショップ(各テーブルで話し合ってもらい、そこにボクが行っていろいろアドバイス)。そして、次の4時間で懇親会である(ビール飲みながら今日のテーマについていろいろ話す)。
で、その地獄のような8時間もなんとか終わり、心地よい疲れを抱えつつ、G氏とその部下の女性、そしてボクの3人でタクシーに乗り込み、ホテルへ向かっていた時のことなのである。
この講演ツアー自体がG氏(当時30代中盤)の依頼であった。
G氏は北海道では有名人。
YOSAKOIソーラン祭りをゼロから立ち上げたヒトでもある(わかる人にはわかりますねw)
その晩のことは、2007年1月に個人サイトで書いているので、以下、それを再録してみたいと思う。
そのほうが、ここで記憶を辿って書くよりずっとリアリティがあるし。
文章が12年分若いが(46歳のときに書いたものだ)、ここからはほぼコピペである。読みづらいところは多少直して再録する。
では、行ってみよう。
++++++++++ここからほぼコピペ++++++++++
時間は夜11時。
外はマイナス10℃以下の世界。
街灯も少ない暗い街に、積もった雪が白くふわっと浮かび上がっていてなかなかロマンチック。
北国で暮らすのもいいなぁ、とか思いつつ、ボクはタクシーの後部座席からぼんやり窓外を眺めていた。
ら!
そのロマンチックな風景の中を、必死に走っている3人組がいるではないか!
最初はふざけあっているのかと思った。
でも他に人っ子ひとりいない寂しい道だ。
しかも先頭の人間の走り方が尋常ではない。必死の走りって、普通なかなか見かけない。
そのうえ後ろの2人がコンビニの制服を着ている。
「え・・・? コンビニ? あれ? あ、逃げてる! ドロボー!?」
と、思わず声を出したのである。
そしたら前に座っていたG氏の反応が早かった。
「え? 何ですか?・・・あ! ドロボーだ!」
と叫んだかと思うと、間髪入れずタクシーの窓を開けた。
追っているコンビニ店員に「ドロボーですか? ドロボーですか?」と大声で確認したあと、近隣一体に聞こえるような大声で
「ドロボーだ~!
ドロボー!
ドロボー!」
と叫んだのである。
めっちゃ大声。
しかも叫び続け。
まずは近隣に知らしめ、ドロボーの気を萎えさせる作戦だ。
そして叫びつつ「運転手さん、追って!」と指示までした。
このG氏、北海道では超有名人である。
んでもって行動派としてよく知られている。
ボクもそれは認識していたのだが、ここまで瞬発力あるとは・・・。
脱帽だ。迷いがない。
読んでいる方は「当たり前の反応」と思うかもしれないけど、こういう突発事件の時に、一瞬の迷いもなく次々と策を打ち出し、それを行動に移すのって、実はなかなか出来ることではないのである。
タクシーはぶーんと速度を上げて追いかけにかかる。
ドロボーは駐車場みたいなところでもたついて、なにか捨てようとしている。
ん、証拠隠滅しようとしてるな。
とりあえず駐車場の場所を覚えておく。アソコになにかを捨てた、と。
コンビニ店員はというと、振り切られてもう後ろにいない。
転んだのかもしれない。
ドロボーが細道に駆け込んだ。
「よし! ここで止めて!」とG氏、ドアを開け飛び出す。
負けるか!
ボクもドアを開ける。
頭の中のイメージではジーパン刑事である(例えが古いw)。
チャーチャーチャーチャッチャーチャーチャーチャチャッ♪
頭の中の音楽も「太陽にほえろ!」である(テーマ音楽ではなく、スクランブルがかかった時に流れる挿入曲のほうね)。
そこまでの瞬発力では完敗していたボクも、ここぞとばかりに飛び出した。
飛び出したっ。
飛び出したっっ。
飛び出したっっっっっ・・・つるっ!
・・・うは~、道がとんでもなくつるつるだよ、ジーパン!
と、とてもじゃないがダッシュできん。
夜11時を過ぎた真冬の帯広である。
マイナス10℃以下に冷え込んだ空気は、道路をカチンカチンに凍らせている。
ボクが履いていたのはリーボックの赤黒スニーカー。
いきなりすっ転びそうになり、タクシーのドアに掴まる。
同行の女性が「ダ、ダイジョウブですか~?」と気遣ってくれる。
情けない…。
でも、G氏をひとりで行かすわけにはいかない。
もしドロボーが刃物でも持っていたらどうするのだ。
「キミはここで待ってろよ!」と、滑ったのを気づかれなかったふりをして、男らしく(?)女性に指示。
とりあえずヨチヨチと前に進む。
歩幅10センチの全力疾走。
オレはアヒルか!
ドロボーはボクたちを見て全速力で細道に入っていく。
(…ねぇ、このツルツルの道で、何でそんなに早く走れるん?)
道民のG氏も凍った道をものともせず、全速力でドロボーを追いかける。
(……ねぇねぇ、いったいその靴底はどうなってるん?)
ボクはといえば、とりあえずアヒル走りでは追いつかんと判断。
だいたい30代中盤のG氏と違ってボクはもう40代中盤なのだ、と2秒くらいで言い訳を考え、ジーパン刑事からヤマさんへ路線変更する。
そう、ヤマさんは足ではなく頭を使うのだ。
追っかけはG氏に任せて、先回りを考えた。
角を左へ入る。あの細道はこっちに通じていそうである。合流地点を目指そう!
とはいえ、ヤマさんほど肝は据わっていない。
ヨチヨチとアヒル走りしながら、脳内で忙しくシミュレーションする。
合流地点でドロボーがボクに向かってきた時はどうしよう。
殴りかかってきたらどうよけよう。
ラグビーで習い覚えたタックルかますか。
つか、刃物持っていたらヤバイやん。
足にタックルしたら背中刺されるやん。
えっとえっと・・・
合流地点前方で大声が聞こえる。
うわ、ヤバ。G氏、刺されてないだろな。
アヒル走りを早める。
合流地点に到着したら、暗闇の中、G氏がドロボーを地面に押さえて何か大声を出している。
大丈夫か?
不安になりながらよくよく聞いてみると…。
「ダメじゃないか~! なんでこんなバカなことをするんだ~!」
さすが瞬発力のG氏!
すでに説教している(笑)
あぁ、なんとか確保したみたいだな、と思いつつ、いつドロボーが凶器で反撃するかわからないのでヨチヨチの速度を上げて追いつき、ボクもドロボーの襟首を押さえる。多少反撃の気配があったドロボーも、男ふたりに囲まれて戦意喪失したようだ。
暗さに慣れてきて、ドロボーの様子が観察できるようになった。
見たらまだ大学生くらいな男の子(あとで高校生と判明)。
痩せてて気が弱そうなメガネ君である。
あぁぁ~。
「何盗った!」と聞いたら「携帯の充電器です…」と言う。
「す、すいません。反省してます」と、なんかリアリティを失った呆然さを見せる男子。
そんな、充電器なんてもので・・・なんで・・・
涙を浮かべている。
きっと出来心で万引きしちゃって、店員に見つかり、動転して逃げちゃったんだろうなぁ・・・
G氏はそういう同情的感慨など後回しにして、すばやく携帯で110番している(さすがだ)。
お、コンビニの店員が追いついてきた。殴りつけそうな勢いだったので、とりあえずそれを押さえる。
たまたま近くを通りかかった車が止まり、なにか手伝おうかと聞くのでとりあえず目撃者 & ドロボーが反撃してきた時のためにそこに残ってもらうことにする。
2分くらい経ってパトカー到着。あぁもうこれで大丈夫。
ドヤドヤとパトカーから降り立った警官にドロボーを引き渡す。
コンビニの店員が警官に説明をしだす。
G氏と目が合う。
お互い一瞬、目で会話する。
(警察ってさ~、捕まえた方も事情聴取のために長時間拘束するんだよね~)
(逃げましょう!)
(逃げよう!)
まさに「すたこらさっさ」という言葉が似合う逃げ方で逃げるボクたち。
警官のひとりが気づいて慌てて追ってくる。
「ちょっとちょっと! 前後の状況聞きたいんだけど~! お願いしますよ~!」
「いやいやボクたちはただ追っかけただけなので~。コンビニの人に聞いてくださ~い。彼が全部知ってま~す」
アヒル走りのボクは不利だが、なんとか警官を振り切り(途中であっちも諦めた)、タクシーに乗りこんだ。
こんな深夜から拘束されたら徹夜になっちゃうもんね。
まぁちゃんと協力する手もあったのだけど、実際G氏もボクも追っかけただけだから。コンビニの店員さんより先に走っただけだから。それに捕まえた時の状況はG氏が携帯で実況中継しているし。
・・・でも、結局逃げ切れなかったのでした。
え?
うん、ホテルにちゃんと帰ったし、警官も追ってこなかった。
でも、あるミスを犯したのだ。
そう、G氏が110番した携帯ナンバーで足がついちゃったのである(笑)。
後で聞いたのだが、午前2時ごろに警察からG氏に電話があって「あのドロボーは悪質なので逮捕することにしました」と。
G氏もそこからいろいろ事情聴取されたらしい(ボクは寝てたけど)。
んー、常習犯だったのかなぁ。
厳重注意で済むかもと期待したんだけど。
気の弱そうな青年だったのに……。
ま、とりあえず、誰も怪我しなくてよかったよかった。
以上、ドロボー捕り物顛末でござんした。
++++++++++コピペ終了++++++++++
なんかやっぱ文章若いw
でも、こうして書いておいたおかげで、まざまざとリアルにあの夜のことが思い出される。
書いて残しておくのってやっぱりいいな。
1995年から15年ほど毎日更新していて(なかなかの継続)、東日本大震災で支援活動したあたりからだんだん更新しなくなってしまったのだけど(あのころは精神的にきつかった…)、また書けることは書いていこう、と決意を新たにしたのでした。
ということで、ドロボー捕り物顛末(再録)でした。
ではまた。
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。