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ジェニファー・ウォーンズ 『フェイマス・ブルー・レインコート』

人生に欠かせないオールタイムベストな音楽をいろいろと紹介していきたいと思います。ジャズ、クラシック、ロック、ポップス、歌謡曲、フォーク、J-Popなど、脈絡なくいろいろと。


ジェニファー・ウォーンズって御存知ですか?

あまり日本ではなじみがない歌手かもしれないですね。
82年に大ヒットした映画「愛と青春の旅立ち」の主題歌をジョー・コッカーと一緒に歌ってた女性、と言えばわかる人もいるかもしれません。

でも顔とかまで思い出せる人は少ないかも。
横のジョー・コッカーの個性が強烈すぎてw


・・・いや、ボクも実はよく知らなかったのです。

知ったのはあるきっかけ。
「STEREO SOUND」という分厚いオーディオ雑誌。


まぁオーディオ・ファンは誰でも知ってる老舗オーディオ雑誌です。
ボクはある時期(いまでも多少は)オーディオに懲りまくっていて、季刊のこの分厚い雑誌をかかさず読んでたんですね。

毎号出るのがもう楽しみでならなかったくらいは愛読してたなぁ。
で、買ったらもう毎日舐め回すように読みまくる。そしてどんどんマニアになっていく。そんな20代から30代前半w

スピーカーのセッティングしなおしに徹夜したり、重りを試行錯誤しながらいろいろ乗っけたり、アクセサリーの材質を変えて音質の変化に一喜一憂したり、スピーカーケーブルに十万円くらいかけてみたり・・・

「これは一生一番の趣味なのだ!」と盛り上がっていたんですね。

・・・阪神大震災で被災して、ゴゴゴゴドシャシャン!と愛機とともに熱意まで壊れてしまうまでは

壊れちゃったからねえ・・・いろいろと。


まぁそれはそれとして。

この「STEREO SOUND」誌、権威あるオーディオ評論家たちが新製品レポートしたり聴き比べの特集をしたりします。

菅野沖彦さん(マッキントッシュ推し)とか、上杉佳郎さん(タンノイ推し)とか、長岡鉄男さん(自作推し)とかが有名だった。

その中でまだ若手ながらもすごく共感できる論理でオーディオを語る人がいたのです。
お歳を召した評論家の方々とはちょっと違うアプローチ。だから雑誌の中でも少し浮いていたかと思うけど、個人的には大ファンでした。

その評論家の名前は傳信幸さん
「ふう」って読みます。

新製品レポートも傳さんがやっているものを一番に読み、ベストバイ(年間オーディオグランプリみたいなもの)の選考についても、まず傳さんがどの製品に点を入れているかを見てその製品を評価し、販売店に試聴に行っていた、という具合。

権威ある有名な評論家さんたちが点を多く入れてグランプリに選ばれた製品より、傳さんが高い点をつけた製品こそが、ボクの中ではグランプリでした。

で、彼の影響で、ボクは彼が自宅で使用していたのと同じスピーカー「アポジー」を買うに至るのですが(正確にいうとひとランク下の機種でしたが)、その過程で、このジェニファー・ウォーンズが関係してくるのですね(ようやくジェニファー・ウォーンズの話に!)。


「STEREO SOUND」でスピーカーの試聴などをするとき、各評論家が自分の持参したCDで試聴してレポートを書きます。
つまり、オーディオ・チェック用のCDを各自で持っているわけです。

このCDのこの曲のこの部分をちゃんと表現できているか。
このCDのこの曲のこの部分で豊かな音場を作れているか。
このCDのこの曲のこの部分でヴォーカルがぼわんと広がっちゃわないか。

ってな感じで、みんなリファレンス用のCDを持っているわけです。

で、それは普通、クラシックの名演奏や新しい録音のものだとか、ジャズの有名なアルバムだったりするんだけど、傳さんが選ぶのは女性ポップスが多かったんですね(これも周りの評論家たちから浮く要因だったんだけど)。

でも、20代のボクには逆にイメージがつかみやすい選択でした。

そのリファレンスCDに、傳さんは一時期この「フェイマス・ブルー・レインコート」ばかりを選んでいる時期があったのです。

彼のすすめる音場型平面スピーカーであるアポジーを聴いていたボクは、彼が選択したのと同じこのCDを聴きながら彼の文章を熟読したのは言うまでもありません。

「ジェニファー・ウォーンズのバックにコーラスがまぁるく気持ちよく広がって音場を形作っている」
「イントロのシンバルが中央少し上にしっかり定位し」
「ジェニファーの声がおばさんのように野太くならないように」

このような彼の文章を読みながら、いったい何度このCD、特に彼が指定した5曲目の『Ain't No Cure For Love』を何度くり返し聴いたことか。

初めはオーディオ・チェックのためだけに。
聴く回数が増えてきた後は、純粋にこのCDを聴きたいがために。

まぁ一度、その曲を聴いてみてください(↓)


そう、これがジェニファー・ウォーンズとの出会い

そしてレナード・コーエンとの出会いでもあります

このアルバム、副題が「レナード・コーエンを歌う」となっていて、すべての曲がレナード・コーエンの曲。
誰だか知らないけどいい曲が多いなぁ、ということで彼のCDまで聴くようになりました。

で、またこれが抜群なのですよ!
レナード・コーエンってすげー!

これも一度ぜひ聴いてみて!(↓)
一時期、レナード・コーエンもすっごいよく聴いたなぁ(30代前半)。
この曲「First We Take Manhattan」なんてくり返し脳内再生されて困るくらい。


さて、ジェニファー・ウォーンズに話を戻すと、この「フェイマス・ブルー・レインコート」というアルバム、ボクはいまでもすごくよく聴くし、いまでもオーディオ・チェックに使っています。

もちろん、もう音としては古い。
1986年の録音だからね。

でも、ボクの人生として、「このアルバムが気持ちよく再生されること」がとっても大切なのです。

そしてこの5曲目の「Ain't No Cure For Love」を聴くたびに、無意識に定位とかコーラスの広がりとかシンバルの音とかに耳が行き、同時に傳信幸さんのこととか、あのころ使っていたアポジーの音場とか、クレルやチェロの音質とかを遠く思い出すのです。

それは、なんか、ボクにとって、とっても「親密」な時間なわけです。


さて。
阪神淡路大震災でオーディオがぶっ壊れて、オーディオ熱はかなり薄れたんだけど、最近はまた少しだけ復活しています。

いま使っているスピーカーは、日本の小さなメーカーFALが作っている平面スピーカー「Supreme S C60F」。

いや、マイナーすぎて誰も知らないと思うけど、どうしても平面スピーカーを使いたくて、これを探し出しました。


え?
なんでこのスピーカーに決めたのかって?

そりゃ、決まってるじゃないですか。
「Ain't No Cure For Love」が最高にいい感じで再生されたからですよ!

いまでも深夜に独りこれを聴いて、悦に入っているボクなのです。


Famous Blue Raincoat
Jennifer Warnes
1986年録音/Cypress Records



古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。