ブルックナー『交響曲第4番ロマンティック(ノバーク版)』
人生に欠かせないオールタイムベスト音楽をいろいろと紹介していきたいと思います。ジャズ、クラシック、ロック、ポップス、歌謡曲、フォーク、J-Popなど、脈絡なくいろいろと。
カール・ベームはやっぱりいいなぁ。
なんか、正面切ってベームを褒めるってちょっと照れるというか、なんか勇気がいるんだけど、でも、やっぱりベームはいい。
田舎臭いしマジメすぎるし性善説っぽいけど、なんか好き。
というか、時代もそうだったのだと思う。
時代自体が「田舎臭いしマジメっぽすぎるし性善説っぽい」時代だった。60年代70年代って。
カール・ベーム指揮のモーツァルトを何枚か持っているのだけど、モーツァルトのあの小粋さがまったくない指揮なんですよね。
重厚でのんびりしたモーツァルト。
内省的で厳格で、ちょっとお説教が入ったモーツァルト。
・・・ありえない(笑)
偏見かもしれないけど、モーツァルトは楽しく美しければいい、とボクは思ってる。その点、ベームのモーツァルトは真逆というか、とってもつまらない(巨匠なのでもちろん上手にまとめているんだけど、それでもやっぱりつまらない)。
そういう意味において、ベームとブルックナーはかなりいいカップルだ。
敬虔なるカトリック信者である「禁欲の人」ブルックナーが泥臭くノタウチマワル様に、ベームはとてもよく合っている。
華麗に歌い上げるカラヤンや潔癖症のアバドではやっぱりなんか違う。
ブルックナーは、馬小屋の臭いがするような(失礼!)カール・ベームの手で、無骨に厳格に削り出してやりたい。ブルックナーはそうじゃなくっちゃ、と、ボクは思う。
いや、なんかこう書くと、ブルックナーの音楽がとってもつまらなく読めちゃうかもだけど、曲は実に美しいし、生の喜びの歌い上げも実に感動的だ。
特徴的なトレモロの立ち上がりはゲルマンの深い森の夜明けを感じさせるし、持続低音によって支えられる主題・展開部は大地の風や大海原のうねりを感じさせる。
本当に美しい。
たまに「実際の大自然を越えている」と感じるくらい美しい。
特にこの交響曲第4番「ロマンティック」。
そういう部分がすごくわかりやすいのでブルックナー初心者にはオススメだ。
わかりやすく美しい。
ブルックナーの中では短めだけど、彼のエッセンスがくまなく入っている気がする。
後期(例えば7番8番)にあるような暗さもなく、題名(ブルックナー本人の命名)にあるようなロマンティックなモチーフが実にわかりやすいし聴きやすい。
で、この「ロマンティック」を、カール・ベームとウィーンフィルで聴くのが実にいいんだな。
なんだか本当に深い森の中をそぞろ歩いている気になる。
それも、ちょっと軽やかに歩いている。
これはウィーンフィルならでは。ベルリンフィルだとちょっと重い(←印象の話です)。
ブルックナーを多く指揮しているハイティンクなんかもうまいんだけど、なんか彼は洒脱すぎる。
「カール・ベーム」という真面目で無骨な「記号」が、ブルックナーをより大自然に近づけている気がする。
カラヤンが「ベームの85歳誕生祝賀会」に出席した際、 こうスピーチしたそうだ。
禅の高僧が矢を射る時、『私が矢を飛ばす』とは言わず『矢が飛ぶ』と言う。
すなわち『無為の為』である。
これと同じく、ベームの指揮は『音楽が湧く』と言える。
つまりベームによって、音楽が自ら奏ではじめるのである。
なんか、言うことがカラヤン臭いというか、不自然に美しい感じなのだけどw、ベームを老子で例えたのは実にボクの感覚に近いものがあって共感した。
そう、ベームって老荘思想っぽいとこある。
そんなところも、きっとボクは好きなんだろうな、と思う。
そして。
そういう「イメージ」や「記号」や「印象」みたいなものすべてがボクに影響を与えて、ベーム×ブルックナーを「好き」にさせている。
もう、ベームが指揮している、というだけで、聴く前からブルックナーが田舎くさく無骨になり、ブルックナーの表現が深まる気がするくらいだ。
これはこれで、無為の為である。
ボクはベームのそんなところを愛していたりするのである。
Anton Bruckner
Symphony No. 4 "Romantic" (ed. Nowak)
Karl Bohm
Vienna Philharmonic Orchestra
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1973年録音/LONDON
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ベームとウィーンフィルの録音はいくつかあるようだけど、是非1973年録音のを聴いてみてください。
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このアルバム、ジャケットも秀逸。
聴きたくなるジャケット。
そういうのって、クラシックには珍しい。
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