非日常と日常のはざまで

東京で外出自粛が呼びかけられて2度目の週末、買い出しのため飲食店が並ぶ大通りを通って駅前に向かうと、営業中のチェーン居酒屋が目に入りました。目立つ場所にあるガラス張りの店舗なので、店内の様子も外からよく見えます。

既に営業自粛したことが報じられていた記憶があったので、あれ、ここは対象店舗ではないのか、それにしてもお客ひとりもいない・・と思っていると、一番奥の席に7、80代とおぼしき老夫婦一組だけが座って食事をしています。

お客が一組しかいないため、5、6人の従業員が総出で老夫婦の接客をしているのです。

このご時世に、ウイルス耐性的にリスクが高いとされる高齢者が、環境的にリスクが高いとされる居酒屋という場にいる、そして客より多い人数の店員が接客している、という、時世を一切無視したかのようななんとも不思議な光景が目に焼き付きました。

老夫婦にどんな事情があったのかはわからないけれど、もしかしたらテレビやネットとは無縁で親族とも交流がなく、全く今の社会的事情を知らないなんてことはあり得るんだろうか・・

居酒屋の従業員はどういう気持ちで接客しているのか、「あまりこういうところに来ないほうがいいですよ」とも言えないだろうけれど、心情的には何か言ってあげたい気持ちになるんではないだろうか・・・

と、いろいろ想像してしまいました。

リアルな出来事と思えないような惨事が世界中で起きていて、実は悪い長い夢なのではないか、とすら思うけれど、こういう不思議な場面をみると、やっぱり悪い夢だったんじゃないか、というような時空がゆがんだような感覚にもなります。

週末の外出自粛が求められるようになり、少なくとも飲み会やショッピングに大手をふって出かける人は少なくなりました。

外出自粛となっても、会社にも出勤せねばならず、自分の生活はたいして変わらない私は(唯一の変化はSalmonsとface to faceで会えなくなったことだけ笑)、こんな時世になる前、週末は「自分は時間を無駄にしている気がする・・・世の中に置いて行かれている気がする・・・」という謎の強迫観念にかられ、休みの日までストレスがたまる、という精神的悪循環にさいなまされていました。笑

それが、家にいること、どこにも行かないことが肯定される状況になるとなんだか不思議な気持ちになり、近所を散歩していてすれ違うマスク姿の夫婦、ランニング中のおじさんも、(多分)外出できないから運動不足解消してるんだな、と、見知らぬ人の休日事情を割と確度高めに察せるという状況に、やはり現実ではないような感覚を覚えてしまう日々です。

それと同時に、今世の中が危機への対処という同じ方向に向かっている中で、人々の行動や事情をひとくくりに捉えるだけではなく、居酒屋にいた老夫婦の事情のような、表面からはわからない、個別の繊細な事情が(あったとしたら)少しでも掬いあげられるような世の中であってほしいとも、思ったのでした・・・