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ハラ王①

「私の愛情は私の舌より重たいのだもの」


腹が出た。


平成元年に生まれ、今年33歳になる俺は、抗えない事実に気が付く。
1人で潰れるほど酒を飲み、倒れるまで飯を食い、目がギンギンになるまで働いていた。変化がないと思っていた体は、時の流れとともにどんどんと形を変え、しっかりとした中年男性体系となっていた。



ーサトウミツルレッドが選ぶ、学園恋愛モノ漫画の王道シチュエーションー

①階段での唐突なパンチラ
②体育用具室に閉じ込められる
③立入禁止の屋上のカギをなぜか持っている
④屋上でお昼のお弁当を一緒に食べる(大判ハンカチで包まれている)
⑤その屋上のさらに上、階段室の屋上で女の子が寝ている(タラップから降りられず、その際にラッキースケベ発生)
⑥学園祭の後夜祭にはキャンプファイヤーが出現(主人公は3階の教室から見下ろす)
⑦体育の授業中、体操服越しに巨乳キャラのおっぱいが揺れる


仕事柄、足場等で階段の昇り降りが比較的多い俺は、ある日、小走りで階段を駆け下りる際、上半身に置いていかれるような違和感を感じた。
なんだこれ?この感じ…なんかで見たことあるぞ…?

そう、

おっぱいが揺れたのだ。

ブルンブルンと上下に運動する肉感、クセになりますな!
俺も⑦、体操服の巨乳キャラかと思うと感慨深い。

俺は遂に、腹も出て、乳も揺れた。

こんなはずじゃなかった。むしろ幼少期は身長も小さく、やせ型キャラだった。健康診断で計測されるBMI?FBI?的なやつはいつも「やせている」と「やせすぎ」の中間だったし、小3から高校卒業までスポーツを続けていた。どこでどう間違ってこのぽっちゃりポコッと腹出しずんぐりむっくり体系になったのか全く分からない。全然カワイくない。カワイくなりたかった高校時代の俺は、CUTiEとZipperを買い込んでは原宿古着系女子になるべく、ファッションの研究に余念がなかった。ストリートスナップやインタビュー等で異性が登場するコーナーには、ガリガリの黒スキニーもやしモード系顔小さ片目隠し男子がよく出てきていた。俺はそれになりたかった。そうしてCUTiE系女子とお付き合いして原宿でクレープをキメたかった。しかし、鏡の前に写るこの男は誰だ?俺だ!


ここで、32年間の人生を、自身の体系を着眼点として振り返ってみる。

①出生~幼稚園
普通体系。顔の調子が良かった。

このまま成長してほしかった


②小学校低学年
スーパーでよく迷子になるため、母親を探すために陳列棚というレーンをクラウチングスタートで駆け回り始める。この結果、足が速くなり、小2からリレーの選手に選ばれるようになる。やせ型体系になる。

この時から年下女子が好きだった


③中学校〜高校
何を間違ったか男子校に進学する。野球部のキャプテンだった俺は、気合を入れるために坊主を決意。バリカンのダイアルを「5」に合わせ、勢いよく剃る。5mmではなく、0.5mmだったため、フリーザというあだ名がつく。頭皮が白かった。

くびれている(高3)


④浪人
好きな女の子ができた。どんどんと風貌がチャラくなっていく。この時には身体が止まっており、体重は下限のピークに。(59キロ)
このまま大人になってほしかった。

コリラックマのストラップはどうかと思うぞ


⑤大学(東京)
思春期がピークを迎え、さらに東京の空気が合わず、肌が荒れる。変な服を着て、酒を恒常的に飲み始める。パスタを茹でては胃に流し込む。腹が出始める。

どうしてこの服を買った?


⑥大学(札幌)
「変態スーツ家庭教師おじさん」という最高のあだ名を同級生からいただく。赤ワインを家に常備するようになる。酒を飲まないと寝れなくなる。腹の出は一旦止まったかのように思われた。

変態スーツ家庭教師おじさん


⑦就職(26歳)
激務により3ヶ月で15キロ痩せる。
76キロから61キロになったところで夜中にカップ麺を2つ食べるようになる。

マッチングアプリでプロフィール画像にしているので、見つけてもそっとしておくように。


⑧転職
帰れるって素敵。生きてるって最高。
とにかく毎日、セルフ食べ飲み放題を始める。
札幌にいるため、すすきのに飲みに出るようになる。体の異変を感じる。もう戻れないのかもしれない。

これは2.5玉。
男は黙って長次郎飲め。
ナースキャップはもう戻らない。


⑨現在
そして、腹が出た。

ハラ王こと佐藤ミツルレッド



これは、長期出張により暇を持て余したハラ王がヤセ型体型になって好きな人と結婚し、幸せな家庭を築くまでの物語です。

同情するなら酒奢れ…同情するなら…