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さ、こっからだ|退職を味わう

なんだかちゃんと退職を味わっていないような気がする。
心の隅にそんな気持ちがずっとあって、どこかでちゃんと浸りたいなと思っていた。

5月19日、約7年半勤めた職場を退職した。
最終日は理事長への挨拶から始まり、お世話になった人たち60人ほどのもとを力の限り巡った。もともと多くの人と話すと疲れやすいうえ、普段入らない他部署を訪ねるのには勇気もエネルギーがいる。それでも会うのはこれが最後だと思うと、ちゃんと会って挨拶がしたい。
事前に作った挨拶リストをチェックしながら順番に回り、緊張と会話したテンションでかいた汗をジャケットで隠して、疲れてくると巣穴に逃げ帰るように自分のデスクに戻って慣れた人・慣れた部屋の安心空間で充電をさせてもらい、1日かけて歩き抜いた。普段はスニーカーだけど最終日だからと履いたパンプス。夕方には足がくたくただった。
回りきれなかった人や不在だった人には一斉メールを送り、返信をくれた人たちにありがとうの気持ちをありったけ込めて時間の許す限り返事を書いた。
夜は送別会で存分に送り出してもらい、前日の深夜1時までかけて書いた手紙をみんなに渡した。最後にみんなとハグをした瞬間、初めて別れを実感して涙が出そうになった。

7年半も勤めて愛着もある職場を辞めるのだから、あとで感傷に浸るんだろうなーと思っていた。
でも退職翌日は朝から講義が2日連続6時間みっちり入っていて、その学習にきちんと集中したい。浸りたい気持ちを脇によけて、気持ちを切り替えて目の前のことに全力で取り組んだ。その後も講義の復習や宿題、予定が毎日のように入っており、息をつく間もなく駆け抜けた。


そうしてあっという間に退職から1週間。keikoさんのコーチングを受けさせていただいたのはそんなタイミングだった。
当初はこの先のキャリアのことを話そうと思っていたけど、今現在の私が言葉にしてみたいのは退職についてかも。そう思い、まとまってないままに話をさせてもらったのだった。


話してみて気づいたのは、実は振り返りたいことはそんなになかったということだ。
自分でデザインした渾身の「卒業」を実現できて、それはもうさっぱりとした気持ちで。
私の中できれいに退職できていて、物語はもう美しく閉じていた。
これ以上手を加えなくて良いし、もうこれ以上何も浮かんでくるものはないのだと感じた。

セッションの中で私は現職をプリザーブドフラワーのようだと表現した。
もうそのままですでに完成されている。
きれいなままで棚に飾っておく。


「退職した自分にどんな言葉をかけますか?」
問われて浮かんだのは「さ、こっからだ」。

私の心はすでに前を向いていた。きれいに閉じた過去はそのままにしておけばいい。それよりも、この先待ち受けるわくわくやどきどきをどう乗りこなすか。新しく始まる物語をどんなものにしていくか。
もう今の私はそちらにフォーカスしていい状態だったのだと気がつくことができた。


そんなわけで、退職しました。
こっから人生第2章、開始していきます。

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