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30. 「ダヴモービル」の物語 / The "Dovemobil" Story

⭐️バーバラ⭐️

ハープを買い求めるように、というガイダンスは、私たちの旅のためにヴァンを購入するというアイディアに対する、承認のように思われた。
いかにロバートに見事な荷造りの才能があろうとも、私たちのプリムス(車種名)には大きなハープを運搬することは絶対にむりだということがわかりきっていたし、それにいまでは、私たちがこれからも旅を続けていくらしいということは、明らかだったからだ。

このことについて私たちは祈り、良質な、中古のヴァンを見つけられるように導いてほしいと聖霊に頼んだ。
(この祈りには、「中古のヴァン」という小さな制限がかけられていたことに、気づいてほしい。)このとき私たちは、自分たちに新車のヴァンが買える財力があるとは、ゆめゆめ思わなかった。その結果、私たちは売買広告をチェックして、いくつか気になる情報を見つけたのだった。

それぞれのヴァンを見に行くとき、私たちは「私は真に助けとなるためだけにここに居る……」の祈りを唱えた。
聖霊がこのような状況において、さまざまな方法で私たちを使うのを体験するのは、ほんとうに驚くべきことだった。車を見に行くたびに私たちは、その時間の約半分をヴァンをチェックすることに費やし、そして残りの半分の時間は、そのヴァンを売ろうとしている人たちに奉仕することに費やすことになるのだった。

私たちが興味を持った、とあるヴァンの持ち主とのあいだにも、そのような出来事がやはり起きた。
ヴァンの査定をするために、私たちは全員で自動車修理工のところへと赴くことになった。その際、私たちがしている活動や、どのように暮らしているかという話題になった。ヴァンの持ち主はとても驚き、数ヶ月前に亡くなった彼の父親の話を持ち出して、悲しみから抜けられずにいるという悩みを打ち明けてくてくれた。私たちは素晴らしい、目の覚めるような1時間をともに過ごし、彼はそこで、悲しみの大部分を手放して、父親の死をあたらしい光のもとで見ることができるようになった。

またあるときは友人のひとりが、私たちがヴァンを探しているらしいと聞いて、お金が必要なためにヴァンを売ろうとしている人がいるよ、と教えてくれた。
そこでその男性に電話をかけ、彼のヴァンを見に行くことになった。私たちはそこで、彼と彼の妻の、素敵な若いカップルに出会ったが、奥さんは臨月で、出産を間近に控えたいた。

私は即座に、ヴァンについての一件がどうなろうとも、それとはまた別の理由で自分たちがそこに居合わせていることを悟った。というのも、彼らは自宅で出産するつもりでいたのだ。
どうやら彼らには病院に行くだけのお金の余裕がないようで、しかも出産に際してどのように準備するべきかも、ほとんどわかってはいなかった。

私たちは、自分たちが持っている出産についての知識や、リラックスするためのテクニック、呼吸やエネルギーの適切な使い方を彼らに伝えた後、奇跡講座を1セットとセミナーのテープを何本か置いて帰った。
これは、わかちあいと奉仕のための素晴らしい時間となった。私たちは彼らのヴァンが気に入ったが、すぐに旅に出なければならない予定がいくつか入っていた。

ところが旅から戻ってみると、ヴァンにも赤ちゃんが産まれた彼らの暮らしにも、やっかいな問題が持ち上がっていた。彼らの小さな息子に対し、どのように接するかということをめぐって衝突が起きていたのだ。父親は、あまり世話を焼きすぎると、息子は女々しい意気地なしになるかもしれないと心配していた。母親の本能は彼女に、できるかぎり頻繁に赤ちゃんを撫でたり抱っこしてあげるようにと告げていたが、同時に彼女は夫に対して深い敬意を抱いており、彼の願いも大事にしたいと思っていた。

何とも素敵なやり方で、聖霊は私たちに、わかちあいの機会を与えてくれた。
落ち着きを取り戻した父親は、赤ちゃんのときに抱っこしたり愛情を示したりすることが息子を意気地なしすることはないと感じ、安心し始めた。

そうこうするうちに、ヴァンの所有権譲渡に予想以上に時間がかかり、彼らのヴァンは私たちのものとなる運命にはないらしいことが明らかとなった。
けれども私たちは、自分たちが意志するなら、何をしているかに関わらず、祝福し奉仕するために使ってもらえることになるのだと示すパワフルな体験を、またひとつ得ることができたのだ。

もっと他のヴァンを見ていくあいだにも、私たちは「これが私たちのヴァンでないのなら、取引を中止する何かを起こして示してください」とガイダンスを求め続けた。
すると果たせるかな、毎回、私たちが購入を断念することになるような何かが起きるのだった。ついに私たちは言った。「聖霊、これでは埒があきません。きっと、私たちはヴァンを買うことにはなっていないのですね。きっと、何かもっと他のことをするべきなのでしょう。それがどんなことであれ、私たちはあなたの手に委ねます」

私たちは新聞広告をチェックするのをやめた。
尋ねて回るのも、やめた。ハープはまだ届いていなかったので、大きな車を買うことはそれほど差し迫ったことでもなかったのだ。私たちは、何か状況が変化しようとしているのかもしれないとさえ考え始めた。旅をしなくなり、ヴァンなど必要ともしなくなるのかもしれない。

数日後、私は朝の瞑想中に、「新車のシボレーのヴァンを買いなさい」というガイダンスを受け取った。
私は、これが完全に正確なガイダンスだと感じて、すっかり恐ろしくなってしまった。それが正確なガイダンスだとわかっている、という事実に関わらず、私は即座に「いったいどうしたら新車のヴァンなんか買えるというの?」と思ってしまったのだ。しかし私は、聖霊のガイダンスに従うということについてはとても頑固なので、こう考え直した。「まあ、ぶざまに転ぶことになるなら、それはそれで仕方ないわよ。聖霊、どこへ行けばいいの? そのシボレーの新車のヴァンは、どこで見つかるの?」

突如として私は、新車を安く買うには、自動車の仲買人から買うのが良いと聞いたことがあるのを思い出した。
私たちはイエローページを開いて、ふさわしい仲買人を選ぶために導きを求めて祈った。選んだ番号に電話すると、電話口の紳士は「あなた方の探している、まさしくその通りの車がありますよ」と言ったのだった。

私たちは、その日のうちに彼に会いに行かなくては、と駆り立てられるように感じた。行ってみるとそこには、一台のみならず、私たちが欲しかった仕様どおりの、クリーム色をした3/4tヴァンが2台もあった。私たちには、金銭的なことがどのように工面されるのかわからなかったし、すぐに出発するべき5日間の旅がスケジュールされていたので、購入のための手続きをするのは延期しなければならなかった。これもまた、このヴァンが真実、神が私たちのために意図している車なのかを確かめるための、良い機会だと思われた。

セールスマンのニックは、こんなふうに提案した。
「50ドル前金として払って、どちらかのヴァンをあなた方が戻るまでキープしておいてはどうですかね。もし気が変わってヴァンを買わないことになったら、50ドルは返金するとお約束しますよ」

そこで私たちは聖霊にお伺いを立ててみたが、もしこのヴァンが私たちのものとなることになっているのなら、誰か他のひとに買われてしまうことなどあり得ない、と気づいた。
私たちがニックに、もし神がこのヴァンを私たちに買わせたいとお望みなら、彼には他の誰かにこの車を売ることなどできないだろう、と告げると、彼は私たちを、ほんとうに奇妙なものを見るような目で見たのだった。

旅のあいだ私たちは、ふたたび、いつものように祈った。
「聖霊、これが私たちのためのヴァンでないのなら、物事がうまく運ばないようにしてください」ヒューストンに戻る頃までには、私たちはふたりとも、このヴァンこそが確かに私たちのものとなるヴァンだと感じていた。私たちは、はやる思いでニックに電話をかけた。ニックはとても驚いている様子で答えた。「まだ2台とも残ってますよ」「すばらしい。そのうち1台は我々のものになるでしょう」と私たちは言った。

私たちは、ヒューストン銀行でローンを申し込んだ。
ローン係の銀行員は、ありきたりの質問を尋ねるところから始めた。「ご職業は?」「神の教師です」と私たちは答えた。彼は「教師」と書き記した。お次は、「月収はいかほどですか?」だった。私たちの答えは、「毎月、寄付や十分の一税(※訳注:収入の1割を神のために献金する)として寄せられる額です」。彼は、私たちに何か資産はあるかと尋ね、私たちは、自分たちが持っている唯一のものは、68年製のプリムス・ヴァリアントだけだと答えた。

私たちのローン申込み書類に書けるだけのものを書き込み終わると、彼は、椅子の背もたれに寄りかかり、私たちを見て言ったのだった。
「いいですか、はっきり申し上げましょう。あなた方にローンを組んで差し上げることはできません。目に見える資産(※訳注:visible means of support , 有形資産のこと)を何も持っていらっしゃらないのですから」(後になってロバートと私はお互いに言い合った。「そりゃあね。でも、目に見えない資産(※訳注:invisible means of support , ここでは神からの援助)ならふんだんにあるわ!」)

奇跡的なことに、それから数日のあいだに3人の人たちから別々に、ローンの連帯保証人になろうという申し出を受けた。私たちはお金を探す代わりに、誰を保証人に選ぶべきなのかの導きを、聖霊に求めなくてはならなかった!私たちは、何がなんでも10,000ドルのローンを返済しようと心に決めていたが(10,000ドルですって!)、それにどれほどの時間がかかるものやら、さっぱりわからなかった。聖霊は、ヴァンのローンを返済できないということを通して、私たちに赦しと信頼を学ぶレッスンを与えることもあり得る、という点を、私たちはしかと確認し合った。聖霊がこのことに関して、ヴァンや、連帯保証人のお金や、また私たちの関係をどのように使うのかを、私たちには予見することなどできなかった。主導権を握っているのは聖霊なのだから。

私たちは三人で、書類に署名するために銀行へと赴いた。
ロバートも私も、自分たちが俗世間の金銭的な問題に精通しているなどとは思っていなかった。私たちの連帯保証人と、彼の友人でもあった銀行員が、とても心配そうにしていることに、私たちは気がついた。この手のローンを組むのは、時宜に適ってはいないのではないかと思われた。金利は20%で、彼らは、我々が多大な利子を支払うことになると懸念していた。私たちは彼らに、自分たちにわかっているのはただ、これは聖霊のお金、聖霊の契約だということであり、聖霊が彼自身のお金をどのように使うにせよ、私たちはそれで満足なのだ、と伝えた。

銀行員が、あごを掻きながら天井を見上げるあいだ、私たちは、椅子に座ったまま状況を見守った。
突如として彼は、「ちょっとお待ちくださいよ」と言って、急ぎ足で立ち去った。戻ってきたとき彼は、ほとんど笑い声を上げるようにして言った。「このローンを組んで、それについての別のローンを組む、というやり方を見つけましたよ。元旦を過ぎたら、その作業をもう一度やり直します。するといったいどうなるのかというと、ローンの金利が11%になるのです」私たちは笑顔になって、聖霊に、こんなにもきちんと面倒を見てくれたことを感謝した。

私たちは、お金を受け取ってヴァンを買いに行く気満々だったが、私たちが席を立つより先に、連帯保証人となった友人が言った。
「このビルにある別のオフィスに、届けなきゃいけない書類があるんだ。一緒に来て、その後ランチでも食べないかい?」私たちは賛成し、彼は用事を済ませて、私たちがエレベーターを降りようとしていたそのときだった。私たちのローンを組んでくれた銀行員が走ってきて、連帯保証人の男性に言ったのだ。「先週、きみと話し合った例のビジネス・ローンのことだけどね。バーバラとロバートにしてあげたのと同じ方法を、きみのビジネス・ローンにもしてあげれば、きみはかなりの金額を節約できるってことに気づいたんだ」連帯保証人となった友人の、私たちに奉仕したいという意欲は、早くも彼に見返りを与えてくれたのだった!

ランチの後、私たちはヴァンを買い取りに向かった。
車を走らせるあいだ、私たちは聖霊に語りかけ続けた。「我々はまだ支払いを済ませていません。だからもしこれが適切な行為でないのなら、どうか教えてください」

突然私は、「彼の言い値を支払いなさい」という声を「聞いた」。
私は仰天した。私はこれまでいつだって、値引き交渉するのを楽しんできたし、新しく知り合ったカー・ディーラーが最初に提示する金額をそのまま支払うなんて、考えられないことだった。私は「一度も値切ってはいけないの?」と訊き返した。「それは誰のお金かな?」との答えを聞いた。「あなたのお金です」と私は返した。すると返ってきた答えは、「では、何を心配するのだね?」

ニックのオフィスに到着し、私たちは彼に、ヴァンを買い取りに来たことを伝えた。彼が希望価格を述べたとき、私たちは同意して必要書類に記入し始めた。

契約書類の署名とお金の支払いが終わると、ニックは椅子の背もたれに寄り掛かった。私は、彼の目が濡れていることに気づいた。
ニックが言った。「ああ、あなた方が私にしてくださったお心遣いに感謝します。もう長いこと何ひとつ売れなかったので、私はほんとうに恐ろしくなってきていたところでした。何と言ってもほら、クリスマスが近いですからね。あなた方は、私が公正な価格を提示したと信頼しようとしてくださった。私にとっても、あなた方にとっても、公正な値段だったんです。ほんとうに感動しました。感謝します」私たちは全員、しばらくのあいだ、お互いを見つめ合った。私たちのハートが開き、湧き上がるふしぎな愛のうねりによって繋がるのを感じた。

私たちは、完璧な喜びとともにオフィスを出た。
それは、「ああ、見てよ、ヴァンを手に入れたわ」という類いの喜びではなく、「聖霊が、どんな関係をも用いて何を可能にするか、見てごらんなさいよ」というものだった。ニックから値切って何百ドルかを節約したところで、愛によって繋がる体験ほど価値のあるものは決して得られなかっただろう。

後になって私たちは、オマーンとシャンティにヴァンを見せ、どのようにして資金を得たか、聖霊がいかにしてヴァンの代金を支払うかを目撃するのが、どれほど素敵だったか、事の顛末をすべて話して聞かせた。
私たちは、ヴァンのほんとうの持ち主は誰なのか、ほんとうは誰がヴァンの代金を支払ったのかを忘れたくなかったので、このヴァンを聖霊のヴァンと呼んだ。

私にとっては、お金のことで心配したり、制限を感じたりしないようにすることは、とても重要だった。ヴァンの債務のせいで、けちけちした気分にはなりたくなかったのだ。私たちは、はっきりと、その車を聖霊のヴァンと呼んでいた。するとオマーンが、「なるほど、じゃあそれはダヴモービルだね」と、聖霊を表す象徴としての鳩(ダヴ)を使って言ったのだ。「ダヴモービル」とはほんとうに言い得て妙で、ヴァンはそのように呼ばれることになった。「ダヴィー」として親しまれている。

ロバートは、私たちが単にシンプルな金属の外観を持つものとして購入したダヴモービルの内装を整えるのに、すばらしい時間を過ごした。彼は、カーペットの張り替えも、配線工事もパネル張りも、そうした類いのことは何ひとつやったことはなく、大工技術もほとんどなかった。これはロバートにとって、わくわくするようなプロジェクトだった。彼はたびたび家に走り込んできては、私たち(※訳注:バーバラたちは居候生活だった)に、聖霊が彼に、作業のやり方を教えるために何を見せたかを語ったものだ。すばらしいことだ。彼は、作業するあいだ中、ずっと祈り続けていたのだ。

およそ6週間後、私たちは北西部を回る3ヶ月のツアーへと出発した。
その旅の初期において私たちは、受け取る金銭のすべてをヴァンのローン返済に当てるように、との指示を受けた。私たちにとって喜ばしいことに、お金は降り注ぐようにやってきた。収入は私たちの集会を通してのみならず、「身内の誰某が遺産を残してくれたので、あなた方に500ドル送ります」とか、「株を売却しましたので、200ドル差し上げます」などと書かれた手紙とともにもたらされた。または「今朝の瞑想中、あなた方に50ドル送るようにとのガイダンスを受け取りました」という人びともいた。そのようにして、お金はどんどん入ってきた。そしてわずか5ヶ月のうちに、ローンは完済された。10,000ドルを、全額、返済したのだ!

そしてその直後、私たちの収入は、ふだんの生活に必要な額にまで落ち着いた。これこそ、いまにいたるまで続く、私たちの収入のあり方だ。つまり、聖霊の采配において何かが入り用なときはいつでも、私たちの収入はその支払いに必要なだけ増える。その支払いが済むと、収入は私たちのふだんの必要を満たす程度にまで下がるようなのだ。ありがとう、聖霊。ありがとう、すばらしい友人たち。

ありがとう!

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